たまにはエクスクルーシブに…

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今回はちょっと身内の話からスタートです、ごめんなさい!

私の夫は、東京とロンドンで構造設計の会社をやっている引越し好きな人
先日、またもやロンドンのオフィスが、引っ越しをした

東京の事務所も、ロンドンの事務所も、スタッフが可哀想になる
そのぐらい、引越しの数が多い

特にロンドンは同じビル内で
もうちょっと広い部屋が空いたから引っ越す
明るくて気持ちの良い角部屋が空いたから引っ越す
宣伝になるからコートヤードに面した部屋に引っ越す
と今まで同じビルの中で

この5年で3、4回引越しを繰り返した
あの荷物で…
考えただけでも、ゾッとします

そして今回の引越しでは、ついにそのビルから抜け出してもっと街の中心へ
自宅からも近くなるLondon Bridgeへ移動した

この辺りには、グルメなバラマーケットが近くにある
通りを越えるとテムズ川、そして美術館のテイトモダンがある
食べるところ、飲むところ、散歩するところが
いくらでもある楽しい町なのだ
だから、スタッフも今度の引越しには、とても喜んでいる
と聞いて私もほっとした

さて、夫の会社の引越し話が、今日のテーマではありません
テーマは、その事務所ビルの事でございます

イギリスには、元工場、元倉庫などを
買い取りをして改装して、ファッション、建築、などのデザイン系
個人/中小企業の会社に、割安で 貸し出をして管理する団体がある

こういうビルの一階には、ソーシャルスペースがあり
自由に使える幾つものミーティングデスクやソファーが置いてある
そしてレストランやカフェやバーがあるので、入居者同士交流する機会も
持てるようになっている

ビル自体が、ビクトリア時代や、エドワード時代の工場や倉庫なので
大きな窓と、煉瓦の壁で、外観がかっこイイ
そして借りているのはデザイン系の人達
だから、オシャレな楽しい雰囲気がビルの中に漂っている

そういえばこの建物からビジネスを育てて行って、大きくした
今ではセレブシェフになった人のレストランが、隣のビルの一階にあった
彼のように、まずこういう場所でスタートする、若手実業家も
多いのかもしれない

ロンドンのあちこちに、このような
元倉庫/工場 改装オフィスビルが少しずつ増えていて
とても人気が高いようだ

同じように、アーティスト対象の物件を扱う組織もある
電気水道の設備が必要最低限付いているスタジオを
安い金額で、貸してくれるのだ
こういうビルも、元は倉庫や工場が多い

夫の会社が入居したような、街の中心にあって外見もかっこいいビルではなく
こっちは大体、不便な場所にあって、エレベーターも付いていないような
ビルだったりする

th_CafeVisit_ArtistStudioこういうスペースを、割安で貸し出すというのは
イギリスの素晴らしさ、力の一つだと思う
優秀な選ばれたアーティストやデザイナーだけにしか
門戸が開いているわけでなく
登録して審査に通れば、だれでも借りることが出来る
人気の場所は、長いウェイティングリストが付いているけれど
場所を選ばなければ、意外と簡単に借りることができる

 

私も、エジンバラにいた時には、こうしたスタジオを借りていた

ロンドンと違って、それは街の中心のとても便利な場所にあり
自宅から、歩いて10分もかからなかった所に位置していた
贅沢を言えば、仕事場には、歩いて20分ぐらいの所が、私にはちょうどイイ
歩いている間に気分を転換出来るし、運動にもなる

さて、エジンバラのそのスタジオは
ビクトリア時代、パン工場だった建物を改装したもので
大きな窓があり、床は、コンクリートで壁は一部が剥き出しの煉瓦
トイレと水場は共同だった。

一階にカフェなどはなかった代わりに、展覧会スペースがあり
予約すれば、そこを安く借りて、作品を発表することが出来た。
また、週に1、2度モデルを使った
ライフドローイングの練習もその部屋でしていた
このレッスンはとても安くて本当に良かった
練習後は大抵近くのパブに流れて行き一杯飲む、というお楽しみ付き
こうやって、他のアーティスト達と知り合いになることが出来るのは嬉しい

そして、一年に2回ぐらいオープンスタジオウィークエンド、というのがあって
金曜日の夜から日曜日の夕方まで、そのビル全体を一般公開するのだ

普通は、みんなドアを閉めて作業に没頭しているから
周りのアーティストが、どういう作品を作っているのかわからない
だから、みんなの部屋を覗くことが出来るこの日は、楽しかった

美術館のキューレーターや、画廊主がチェックに来ることもあるので
皆、力を入れてその時の準備をしていた

またその時はアーティストから直接の値段で安く作品を購入できるので
毎回、数点の作品を買っているコレクターもいた

とにかく、このオープンデーは大人気で
まるで懐かしい、学園祭のようだった

元パン工場には
小さな部屋を借りていたジュエリーデザイナー
一階の大きな部屋で、大きな機械を使いながら作業していた
彫刻家や、工業デザイナー、それに上の階の絵描きや、テキスタイルアーティスト
版画家、帽子デザイナー、などいろいろなアーティストが入っていた

同じような仕事をしている人達と、大きな建物の中で
それぞれの部屋に篭りながらも、ある程度の交流が持てる
こうしたスタジオを、借りることができたのは、本当にラッキーだった
仕事がはかどるし、面白い情報交換が出来る
あそこにいる時に創った私の作品は、面白いものが沢山あると自負している

こういうスタジオで仕事をする時は
一つのプロジェクトに取り掛かると、それが終わるまで私は掃除をしない

ゴミは、床の上にひろがる
毎日何杯も飲む出がらしのティーバッグも捨てないで
床に積み上げていたので、プロジェクトが終わる時には
ちょっとしたティーバッグの山ができてしまう!
テーブルの上はグチャグチャ
きれいだった白い壁にも紙を貼った後のテープが残っていたり
はみ出した絵の具がついていたり、インク飛び散ったりするので、相当汚れる

でも、制作を開始すると終わるまでは
その世界の中に浸っていたかったので
その空気間を保持したかったので
私はそのままの、とんでもない状態の中で、仕事を進めることにしていた

一ヶ月ぐらいして、そのプロジェクトがやっと終わると
床の掃除をして、テーブルも片付け、壁にはペンキを塗って
真っ白な綺麗な状態に戻す

そして、その壁に出来た作品を並べて、紅茶を飲みながら
ジーと眺めて色々思う本当に楽しい時間を過ごしたら
頭を切り替えて、次のものに取り掛かる準備に入る……

こんな風に、贅沢な時空で制作活動していた
なのに今、私の仕事場は自宅のリビングルーム
夫が居ない月半分はいいけれど……
テーブルの上もソファーの上もあっという間に
色々な物置になり、散らかる散らかる!
でも、壁は汚せない、とかダイニングテーブルまでが
物置台になってしまうと、食事もできなくなるから
ちょっと片付けなければ、と考えてしまう…

これが、いけないのだ!
汚しちゃいけない、散らかしたらいけない…なんて考えながらじゃ
やっぱり、面白い作品は出来ない、アッと驚くような方向へ
展開していくことも、なかなかない
自由な気持ちではいられなくなってしまう
制作する時、こういうつまらないことが気になってしまうのは
勿体無い、脳が壁を作ってしまって
思い切った勢いにブレーキをかけてしまう……

やはり、どんなに汚しても散らかしても良い空間が
私は、喉から手が出るほど、何が何でも欲しい
私がこのぐらい欲しいと思う物は、それほどない
でも、スタジオだけは、どうしても欲しい…!

そういえば、自分のスタジオという言葉で思い出したことがある

それは、スタジオを使って面白いビジネスをしている
ドイツ在住のアメリカ人アーティストのこと

彼女は自分のスタジオで、ワークショップをしている
ま、これは皆んなすることだけれど
彼女の面白い点は、ベルリン在住だけど
顧客をアメリカ在住のアメリカ人対象にしていること

初日は、ウェルカムドリンクから始まって
〈ベルリンワークショップ3日間コース〉の第一回目が始まる

ワークショップのほかに
彼女が案内する面白ベルリンツアー、夜のレストランでの食事会
ベルリン在住のアーティストスタジオ訪問、などがプランに入っている

結構高い料金のツアーだけど
意外と人気があるようで、生徒たちはアメリカから飛んで来る

ちゃんとしたアーティストスタジオがあれば、
こんな風に意外と受けそうな、高額なビジネスプランも出来るのか
と、そのアイディアに脱帽したことがあった

とにかく、どんな使い方であるにせよ…
いくらでも散らかすことが出来て
いくらでも汚すことが出来て
混沌とした世界の中で没頭できる空間が欲しい

元工場、元倉庫のアーティストスタジオ

早く探さないと…

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【きょうのヒント】
ヒントを出しても、実はこのカフェに一般の方は行くことができません
このカフェは、このビルの事務所で働いている人と
その関係者のみにオープンなので…
という、カフェで申し訳ございませんでした!

caféに入る事は出来ないけれど、このビルのヒントは、
通りに面したレンガの壁に工場だった時の名前が大きく書いてある

【前回のこたえ】
RA Summer Courtyard Café&Bar
Royal Academy Of Arts
Burlington House, Piccadilly W1J 0BD

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About Author

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東京生まれ、ロンドン在住の絵本作家。高校卒業してすぐに渡米。その後、パリ、南仏に暮らし、ロンドンへ。ロンドンでセシルコリン氏に師事、絵や陶芸などを学ぶ。1984年からイギリス人の夫と2人の子供と暮らしながら東京で20年以上イラストレーターとして活躍、その間、「レイジーメイドの不思議な世界」(中経出版)の他、「ある日」「ダダ」「パパのたんじょうび」(架空社)といった絵本を出版。再渡英後はエジンバラに在住後、ロンドンへ。本の表紙、ジャムのラベル、広告、お店の看板絵なども手がけている。現在はロンドンのアトリエに籠って静かに絵を描いたりお話を創る毎日。生み出した代表的なキャラに、レイジーメード、ダイルクロコダイル氏などがいる。あぶそる〜とロンドンにはロンドンのカフェ・イラスト・シリーズを連載。好きなものはお茶、散歩、空想、友達とのお喋り、読書、ワイン、料理、インテリア、自転車、スコーン、海・樹を見ること、旅行、石(特にハート型)、飛行場etc etc...

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