クリスマス八景

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usagi


先日、長いこと図書館から借りている本がまだ読み終わらず、三度目の返却日延長手続きに参りました。クリスマスや年末年始は図書館も閉まるので、返却日は来年の1月15日。今度こそ読み終わらねば…。

近所の図書館は、本、DVD、CDなどの他にコンピューター(ものすごく古いウィンドウズ)、もう日本ではあまり見ないようなタイプの長細い机が無造作に並べてある自習のコーナー、そして別室には子供の遊戯室があります。図書館で働いている人たちは、定年を迎えたボランティアの方々だと思います。そんなとても地味な図書館ですが、最近出入り口のドアの外に機械が設置されたのです。ここに自分のライブラリーIDカードを挿入して暗証番号を入力しないとドアが開かなくなりました。盗難などの防犯のためにこういうシステムを設置するとはとても思えません。テロへの警戒なのでしょうか?誰でも気軽に立ち寄れる場所だっただけに、ちょっと寂しさを感じます。

図書館のある通りは、幾つものスーパーマーケットや銀行レストランが並ぶバス通りです。図書館を出て左手に進むとCamden Town、右手のHighgate Road を歩み続けるとHampstead Heathにたどり着きます。図書館からさほど離れていないHighgate Roadには、’O2 Forum’というコンサートホールがあります。日比谷公会堂3,119席に比べると2,350席なのでちょっと小さいのですが、ここは1930年代に映画館として始まり、ホールになってからは、再編成をした頃のVelvet Underground、2012年のKISSのコンサート、最近ではRihanna, Justin Timberlakeなどのミュージシャンのコンサートがあったのだそうです。コンサートの当日は、駅の周辺にはダフ屋さんが必ずおりまして、’O2 Forum’の並びにあるパブはなかなか食事が美味しかったりします。来年の3月はすでに公演予定が19回も入っているのに、今年の12月はあと2回、年明けの1月は4回しか公演予定が入っておりません。イギリスのミュージシャンも年末年始はお休みを取ることが多いのかしら?

さて、図書館での用事を終えて近所のスーパーで必要なものを買い、信号の変わるのを待っておりましたら、バス通りを二頭立ての黒い馬に引かれた馬車がやってきます。わたくしが待っていた信号は青に変わりましたが、馬車を先導していた黒い車に乗った人が、馬車を優先させて信号を渡らないでほしいと呼びかけています。この馬車は日本で言うところの霊柩車で、Horse drawn hearseといいます。私が外国人だということもあると思いますが、静かな趣を感じてついいつまでも見送ってしまう美しい光景でした。

家の近くの教会の前には二階建てのリボンをつけたバスと、グレイの揃いのスーツを着た人たちがが待機しておりました。スーツを着た人たちは新郎のUsherで、クリスマスを間近に控えての結婚式です。そういえばこちらの友人が結婚式をあげた時、花嫁の姉妹がお揃いのドレスを着てFemale Usherをつとめておりましたが、このドレスは花嫁のお母さんが手作りで仕立て上げたものでした。いかにも手作りらしく後ろのスリットの縫い合わせがちょっと上下にずれていました。美しい既製のドレスももちろん素敵ですけれど、一目で手作りとわかるそのドレスから、お母さんが一枚一枚縫い上げている姿を思い浮かべ、お嫁に行くことを家族皆で祝福している温かな想いがじんわりと伝わってきたことを思い出しました。

クリスマスを間近に控えて、どこも気ぜわしげに人があふれております。スーパーが閉まるのはクリスマス当日だけなのですが、なんだか欲張ってつい色々なものを買ってしまいます。クリスマス当日は交通機関はすべて止まり、黒キャブタクシーは4ポンド増しになるそうです。パブは日中は結構開いていて、クリスマスローストを食べられるところが結構あるそうです。クリスマスは食べ続け飲み続けるので1日の摂取カロリーが6000Kcalになることも珍しくないんだとか?  帰省する人々は、ワンサイズ大きな洋服を着て帰ってくる方も少なくないそうです。食べるのも飲むのもほどほどに、みなさん笑顔のクリスマスが迎えられますように。

robin 2017

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洋画とグラフィックデザインを専攻したのち、イラストの道へ。縁あって英高級紙「The Times」の挿絵イラストを担当。同紙から数多くの依頼を受け、新聞のタイトル欄にエリザベス女王と並んでイラストが印刷される。児童福祉に関わる団体をはじめ、クライアント・ベースの仕事をするフリーランスのイラストレーター。4年に渡ってロンドン動物園で週に一度ボランティア活動にいそしんだ経験があり、動物イラストは本物からのインスピレーション。

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