イギリスでは6月21日が夏至でした。一年で最も日が長い一日です。秋冬が長いヨーロッパでは、太陽の恵みを感じられる夏は、まさに生命の季節。北ヨーロッパでは夏至のお祝いが各地で行われ、美しい季節を心から楽しみます。
夏至の当日、私は今年もイングランド南部にある聖地グラストンベリーに行ってきました。トールの丘は太陽を浴び、天空の広がりを近く感じることができる最高の場所。おそらく午前中は賑やかだったであろう丘の上は、ちょうど夏至の瞬間を迎えた午後には、とても穏やかな様子に戻っていました。丘からの眺めを動画に撮ってみたので、夏至のグラストンベリーを感じたい方はぜひ、こちらでご覧くださいね。
翌22日は、ロンドンであった夏至イベントに参加しました。たまたま友人が誘ってくれたのですが、衝撃的に素晴らしかったので、ここでシェアさせてくださいね。
イベント名は「Seasons of the Sacred: Summer solstice – Environmental Peacebuilding」(「季節の神秘:夏至に考える環境問題」みたいな感じでしょうか)。
地球と人が、以前のように深いつながりを取り戻すためには、どうすればいいのか。すでに深刻な段階に来ている環境問題に思いを馳せ、共にできることを考え、大地の恵みを祝福し、五感を使って存分に自然とのつながり楽しむ。それが夏至という特別なときに関連させたイベントの主旨でした。
大地とのつながりの大切さを共に考えていくためのゲスト・スピーカーとして、アメリカのネイティブ・インディアンであるラコタ族、ティオカシン・ゴストーズ/ Tiokasin Ghosthorseさんが招かれていました! 彼はノーベル平和賞にもノミネートされたことのある平和活動家で、世界中を駆け回って私たちにとても大切なことを教えてくださっています。
ティオカシンさんのお話については後で綴るとして・・・会場にやってきて、本当にびっくりしたことがあったので、それを先に書かせてくださいね。それは、このイベントの趣旨通り、自然美あふれる受け皿としての会場の美しさでした。
北ロンドンのHighgateの住宅地の裏側に、ひっそりと、素晴らしいグリーン・スペースができていました。そこは大地と食、アートという人間を形づくる基本要素を融合するため、美しい志を持つ人たちが廃墟を再生して生み出した場所。OmVed Gardensというプロジェクト名で始動しています。おそらく2017年くらいに完成したのではないでしょうか。私はこのロケーションから徒歩でほんの5分くらいの場所に2014年夏まで住んでいたので、驚きもひとしおだったのです。
OmVed Gardensは「秘密のガーデン」というにふさわしい、嬉しい驚きに満ちたスペースでした。ここは自然のままの良さをなるべく取り入れるようにデザインされたワイルドなガーデンです。そこに、グラスハウスと名付けられた温室風の建物が建てられ、インドアでも各種イベントを開催できるようになっています。陽光をいっぱいに採りこめるよう設計されたガラス張りの建物と、屈託のないガーデン。ここは大地の実りが健康な人を育むという大きなサイクルを大切にしているコンセプト・スペースなのです。これ以上に人に喜びを与えてくれる空間があるでしょうか。
そして、グラスハウスでひときわ目を引いたのが、とても立派なキッチンです! 働いていた多くのシェフはOmVed専属のレジデント・シェフたちで、あらゆるイベントに対応しています。その素晴らしいキッチンで、本日の目玉でもあった大地の恵み=新鮮な野菜を使った4コース料理が準備されていました。テーブルには野趣あふれる花々が色とりどりに飾られ、ライクマインドな人々が集い同じテーブルを囲む・・・そこに流れていた幸福な時間は、言葉では言い表せません。
一つのコースが供されるたびに、シェフがお料理の説明をしてくれます。OmVed Gardensではもちろん野菜も作っていて、そこで採れた野菜や、他から取り寄せたものを組み合わせて夏のパワーを感じさせる料理がデザインされていました。
イベントをバックアップしていたのは、St Ethelburga’sという世界平和をあらゆる側面から考えることを趣旨としたキリスト教が母体の団体です。本拠地はシティにあり、私も一度コンサートを観にいったことがあるのを思い出しました。高層ビルが立ち並ぶ金融街のど真ん中に教会を利用したサンクチュアリがあるのですが、ロケーションがロケーションだけに、初めて訪れた時はこちらも本当に驚きました。OmVed Gardensも国連の食糧支援機関であるWFOとパートナーシップを組んでの活動のようです。そんな両者がこのような平和イベントで協働することは、大変理にかなっていると思いました。
食後はふたたび芝生に戻り、今度は焚き火を囲んで親密なひとときを過ごしました。
私たちはすでに食事の前に緑したたる芝生に円陣を組んで座り、環境問題への意識を喚起する朗読を聞いたり、少人数に分かれてディスカッションをしたり、瞑想をしたりと、緑に触れ、穏やかで実り多い時を共に過ごしたのです。そして、ネイティブ・インディアンとして1970年代に迫害を受けた経験を持つティオカシン・ゴストーズさんの話に、耳を傾けました。
ティオカシンさんによると、ラコタ族の言語には、名詞がないのだそうです。つまり・・・所有の概念がない。宗教、支配、排除などに相当する言葉もないそうです。人々が自然を共有し、分かち合う世界では、確かに所有の概念など必要ないですよね。言葉は文化を定義しますから、ラコタ族の精神性の高さを表していると言えそうです。
「母なる大地とのつながりを取り戻せ」
それが、ティオカシンさんのメッセージ。「大地に聞け。」ティオカシンさんはそう言います。ずっと手で芝生を触っていたのが印象的でした。
最後は、自身が杉の木から作った美しい伝統のフルートで、ラコタ族に伝わる郷愁の音色を奏でてくださいました。ティオカシンさんが発するラコタ語の響きは・・・日本の言霊にも通じるのではと、ふと思いました。
一年で太陽とのつながりが最も強くなる日、生命の力強さを実感するその日、大地とのつながりを取り戻せた気がしました。こういったイベントは今後、都市部でますます需要が増していくのではないでしょうか。