
今回は、去年春にレポートした乳製品の安全性に関するお話のアップデート情報をお届けします。日頃から乳製品(ミルク、ヨーグルト、サワークリーム、チーズ、バター、またこれらを原材料に含む食品)を摂取していて、健康と安全を優先したい方や、モラル/エシカル面を重視したい方は、ご参考までに。
牛のメタンガス削減目的で使われる飼料に混ぜる薬品「Bovaer(ボヴァー)」
この問題は、056号でお伝えしたように、2024年の11月後半イギリス最大の乳製品取扱業者Arla(アーラ)と関連企業の乳製品や乳製品を使った商品には、メタンガス削減目的で薬品「Bovaer」が投与された牛のミルクが使用されているとわかったことに始まります。さらにArlaは、大手スーパーのいくつかとタイアップして、一般消費者を対象に薬品投与の乳製品摂取データ収集し、人体への影響をリアルタイムで調査中ということも明るみとなって、一昨年末あたりから安全重視の消費者層によるボイコット運動が広がりました(1)。ソーシャルメディアへの投稿を中心としたボイコット運動が広がると同時に、Lurpak(Arla傘下)が半額以下の叩き売り状態でセールになったり、名目上オーガニックということでBovaerの不使用を訴えていたYeo Valley(こちらもArla傘下)の商品も、その後頻繁にセール対象品になっているのは気のせいでしょうか…。
この薬品に関する詳細は調べていませんが、消化過程で代謝物の一部にメタンガスを作る腸内細菌が存在するということも考慮すると、偉大な自然の摂理に反して薬品で一方的に自然現象をブロックするという発想が通ってしまうこと自体、個人的にはかなりショッキングなことだと受け止めています。さらには、このトピックの問題点が薬品投与以前の部分にあるため、親元のナンセンスからさらなるナンセンス派生という、たちの悪い状況になっています。なぜならば、メタンガス削減の理由は、偽りの状況に基づくためです(2,3,4)。
ちなみに、牛のメタンガス削減計画に限らず、「地球温暖化」や「気候変動」という本体から枝分かれしていることは、その対象が何であっても根本的な問題は全て同じです。サステイナブル計画関連の技術開発に携わる学生たちや企業への莫大な投資も含め、ビジネスとそれを取り巻くポリティックスがエンジンとなって世の中を動かしているため、明らかに問題だとわかっていても、しばらくこのまま進行することは避けられない見込みです。その理由には、多くのことがあらゆる面で準備完了済であることと、これらが一方的な予定や目標に向かってすでに勢いをつけて進行中であることなどが挙げられます。
056号で取り上げた内容ともオーバーラップしますが、少し前に、IPCC(Intergovamental Panel on Climate Change、気候変動の研究などに携わる科学者たちで構成される国連の組織)に在籍していた科学者46名が、組織内でサイエンスがサイエンスではなくなっていることを理由に脱退したことを伝える記事を目にしました。各個人のコメントに目を通したところ、そのほとんどは、二酸化炭素による温暖化説が実際のデータとマッチしない(=存在しない)こと、海面レベルが上がっていない(=温暖化はない)ことに加え、一般に向けて事実とは異なる情報を提供していることなどを指摘。その中には、Dr Kiminori Itohという日本人科学者も名を連ね、「気候変動を促す要因は一つではないため、温室効果で派生するガスのみに焦点を合わせるのは、ナンセンスかつ有害」とコメントしていました。
以前にも情報の操作が指摘されているIPCCは(5)、現在でも「地球温暖化」や「気候変動」の情報源として機能し続けています。その主な理由は、毎年の政府予算に組まれる巨額の研究費が、「地球温暖化」や「気候変動」説を支持する研究者のみに支払われていることにありそうです。そして、これが科学者たちの約97%は「地球温暖化」や「気候変動」説を支持している、という誤解の原因にもなっているはず。彼らの多くは、事実を知っていても、生活の維持や学術的ステイタスなどを天秤にかけなければならないという、難しい選択を迫られているともいえるでしょう。ただし、事実のカバーアップに加担することは、問題解決どころか状況を悪化させるばかりなので、今後も専門家たちの動きや声がさらに大きくなることを期待したいところです。
その後の状況
Arlaと関連または提携企業の乳製品を巡るスキャンダルから約一年後、見知らぬ人のSubstack記事にその後のアップデートとなる情報を発見しました(6)。それによると、昨年11月上旬にデンマークから発信された情報が、イギリスにも影響を与えるきっかけとなったようです。賄賂で酪農家にBovaerを押し付けようとしたイギリスの状況とは異なり、デンマークでは昨年10月1日からBovaer投与が義務化され、違反には高額の罰金が課せられることになっていました。義務化のスタートに伴って牛の体調不良や病気を届け出るケースが急増したため、乳牛専門の健康相談機関に勤務している獣医が、11月3日に農産業系の新聞に「酪農家たちの間では、Bovaerによる問題が派生している」と投稿し、それを受けてデンマークの政府機関が11月5日に新たなガイドラインを発表するという経緯に至っています。義務化は緩和され、重度の体調不良が疑われる場合には、牛の健康を優先して即座にBovaerの使用を中止するように呼びかけていますが、(餌となる牧草や穀類中の繊維質が、腸内細菌を活性化し代謝物の一部であるメタンガスを増やすため(7))餌の脂肪分を増やすなど、どうにかして「メタンガス削減目標レベルを達成」しなければならないようです。義務化の緩和はポジティブな動きでも、メタンガス削減を目指すことには変わりがないので、デンマークでは今後も何らかの形で無理のある状況が継続しそうな感じです。
イギリスでは、11月8日にBBCがデンマークの状況とともに新たに浮上しているBovaer問題を取り上げていました(8)。それによると、Bovaer製造元のDSM-Firmunich側では「安全で効果的(聞き覚えのあるフレーズ…)」なのは保証済みだとしているにも関わらず、Arlaはデンマークの動きを懸念し「さらなる調査が必要」ということで方向転換に至ったようです。イギリス国内30の提携牧場で進行中だったトライアルは、予定を繰り上げて昨年11月8日に中止されました。Bovaerのトライアルでタイアップしていたテスコやアルディが主な卸取引先であるArlaでは、さらに大規模なトライアルに移行するかという点でデータを見直し中だとか…。Bovaer投与でメタンガス30%削減を目標にしていたようですが、牛への影響に関する情報が不明瞭だったため、さらなる批判の的となりました。
デンマークでは、短期間のうちに牛の死亡や重度の健康障害なども報告される事態となったので、既にBovaer投与の乳製品各種がイギリスの食品市場に出回っているという点も気がかりです。無意識や無関心な消費者層、または、チェックが困難となる間接的なルートによって、Bovaer投与の乳製品を摂取した人、または、まだ摂取している人たちがどこにどのくらいいるかは謎ですが、人体への影響も気掛かりな状況となっています。

人工的に作ったメタンガス削減対応種?
さらなる試みとして、遺伝子の操作によって人工的にメタンガス削減仕様にデザインされた牛も登場しています。個人的には、人間の勝手な都合で生き物(動植物、これには人間も含まれます)の遺伝子を人工的に変えてしまうことなど、自然の生態系にないものを存在させることは、本来あってはならないことだと感じているのですが、みなさんの目にはどう映っているのでしょうか。
難しい状況下でも、意識的な選択を
特に、便利・簡単・無料/安い!というものや事柄には必ず理由があり、多くの場合、そこに何らかのトラップが仕掛けられています。通常ではあり得ないと思うことが当たり前のように取り扱われているこのご時世、多少なりともこれらの実態を調べてみることは、決して無駄にはならないと思っています。事実関係がわかれば、状況を見極める判断力も得られるため、自分たちの身を守ることにも役立つはず。もし調べたことに危険性がないとわかれば、安心してそれを選ぶことができるという利点も付随します。
世の中の動きには、意図的に物価高騰を継続させることも含まれています。コロナ以降、特に食品の物価上昇率は著しく、イギリスの2020年−2025年対比では37.2%増となっています(9)。それに比例して40%近い昇給を受けている人は、どれくらい存在するのか謎です。サステイナブル計画関連で、各種の難しい選択を迫られている中小企業はもとより、自営業者やフリーランサーたちも、スローモーションで徐々に現在押されている方向に進行中です。個人的には、例え破格値の叩き売り状態でも、安全性が問われるだけでなく嘘が土台にあるなら、可能な限り他のオプションを選びたいと思っています。決して、特定企業の製品をボイコットするように勧めているわけではないことをご理解いただきたいのですが、一般消費者には知られたくない理由が付随する安い買い物と自分たちの安全を引き換えにするなら、その値打ちはマイナスだと思いませんか?
(参照)
- Daily Mail Online. (2024). ‘New Bovaer fears: UK Government “commis’ to giving ALL cows in England controversial feed by 2030 – amid ongoing dairy boycott over ‘toxic’ additive. Available at: https://www.dailymail.co.uk/health/article-14165711/Bovaer-fears-Government-giving-cows-controversial-feed-2030.html (Accessed: 08/12/2024)
- Beaulieu, C., Gallagher, C., Killick, R., Lund, R., and Shi, X. (2024). A recent surge in global warming is not detectable yet. Communications Earth & Environment, 5:576. https://doi.org/10.1038/s43247-024-01711-1
- Skrable, K., Chabot, G., & French, C. (2022). World Atmospheric CO2, Its 14C Specific Activity, Non-fossil Component, Anthropogenic Fossil Component, and Emissions (1750-2018). Health physics, 122(2), 291–305. https://doi.org/10.1097/HP.0000000000001485
- Lindzen, RS.(2019). ON CLIMATE SENSITIVITY. CO2 Coalison: Climate Issues in Depth Series. Available at: https://co2coalition.org/publications/on-climate-sensitivity/
- Cohen, T. (2013). World’s top climate scientists told to ‘cover up’ the fact that the Earth’s temperature hasn’t risen for the last 15 years. Available at: https://www.dailymail.co.uk/news/article-2425775/Climate-scientists- (Accessed: 31/10/2023)
- Elijah, S. (2025). ‘Bovaer Backlash Update: Danish Farmers Get Green Light to Opt Out as UK Arla Trial Abruptly Ends!’ Substack blog. Available at: https://www.soniaelijah.com/p/bovaer-backlash-update-danish-farmers (Accessed: 10/11/2025)
- Peng, C., May, A., & Abeel, T. (2023). Unveiling microbial biomarkers of ruminant methane emission through machine learning. Frontiers in microbiology, 14, 1308363. https://doi.org/10.3389/fmicb.2023.1308363
- Prior, M. (2025). ‘Methane-cutting cow feed trials brought to an end’. BBC News. Available at: https://www.bbc.co.uk/news/articles/cvgvkppx4kko (Accessed: 17/12/2025)
- UK Parliament. (2025). ‘Economic update: Why has inflation gone up in 2025?’. Available at: https://commonslibrary.parliament.uk/economic-update-why-has-inflation-gone-up-in-2025/ (Accessed: 16/12/2025)