先月の本コラム「イギリスで築400年の家に住むとは」には、読者さんからSNSなどを通じてご感想やご質問をいただきました。
家のことも「まるごとセルフケア」に関わるテーマとして取り上げたところ、通常の植物の話よりも、反響が大きく皆さんの暮らしに関する感度をかいま見た思いです。
というのも、住空間を含めた身の周りの環境にはある種のパワーというか、エネルギーや氣というのもがあります。ですから、なりたい自分にふさわしい空間を創り、そこで毎日を過ごすことが理想の自分へ変わる近道なのです。
どんなところに住みたいのか?
「なりたい自分」にあわせて住環境を整えることにも「まるごとセルフケア」として意味があるのです。
たとえば、将来の自分にあわせてお部屋を整える、という観点からみると、昨今の「お片付けブーム」の裏には、ただの整理整頓ではない哲学があると言えます。
とはいえ、わたし自身は「もったいない精神」が旺盛すぎて、モノを捨てるのが苦手で溜め込むタイプ。そこは、真逆のタイプで、モノを捨てるのが得意な夫に結婚生活26年で鍛えられました。
そんなわたしも、古い家に住むという選択をしてから、この家に似合うかどうか?という観点で家具やインテリアを選ぶようにもなりました。
2020年3月から世界を襲ったコロナ禍により、イギリスではこれまで3回非常事態にあたるロックダウンになっています。
美術館・劇場・レストランや生活必需品の店以外は、現在も閉まっています。個人的にちょっと驚いたのが、そんな非常事態でもガーデンセンターやDIYの店が大手を振って開店中なこと!
An Englishman’s home is his castle
「英国紳士の家は城塞である」
ということわざのように、さすがDIYやガーデニングを愛するお国柄ですね。
というわけで今月は古い家のメンテナンスや増改築についてお伝えすることにしましょう。
実は去年、我が家は7ヶ月にわたる増改築をしました。
5年前、庭に増築したヨガスタジオ兼オフィスのある離れと、築400年以上の母屋を渡り廊下でつなごうと、荒唐無稽を夫が言いだしたのがコロナ禍の始めの頃。
ちなみに、イギリスでは建物を増改築する際、プランニングの許可を地元の役所に申請します。そして環境や町並みへの配慮など、いろいろな角度からそのプロジェクトが検討され、次のステップとして、建築計画を発表し近所の人から異議申し立てが出なければ申請が許可されます。
我が家のプロジェクトは幅3mくらいの「渡り廊下」をオーク材と全面ガラスでつくり、サンルームのようにするデザインです。歴史的建造物グレード2に指定されている母屋の景観を損なわないというのは、外せない条件でした。
幸い、思いのほか早く5月には申請通過し、地元の大工さんとの増築プロジェクトを始めることができました。日本の工務店にあたるビルダーさん・職人さん達はコロナでDIYや増改築ラッシュのため、去年から大忙しです。
幸いビルダーさんは同じ村でふだんから家の修復をお願いしている馴染みある業者さんなので、待ち時間もなく夏前に着工できました。完成は(イギリスあるあるですが)やっとクリスマス前のことでした。
ちなみに、3ヶ月も遅れた理由は、ロックダウン需要で職人さんたちが忙しすぎたことと、建材が品薄になっていたこと。この2つの理由で完成は遅れに遅れました。
新旧に分断されていた2つの家の各部分が、このサンルーム風渡り廊下で繋がれたことで、家族の時間の使い方も変わりました。寝食をする母屋と、仕事部屋や家族が一緒に映画を見る部屋、ジムやヨガスタジオなど身体を動かすエリアが繋がって、自分のことをしながらも家族の気配が感じられるのが良いなと感じています。
さいごに、読者の方々から寄せられた質問にお答えして今月のまとめとしましょう。
Q1:Yさんより
趣きがあって、とっても素敵ですね 築400年の家に住むとは、どんな感じなんでしょう。素敵なことも大変なことも、日本の家とは想像以上に違う事がありそう。こういう部分が素敵だよ、逆にこんな所は大変…など聞かせてください。
A1:
人間よりも長い年月を経た建築なので、人の手がかっていることの重みを毎日のように感じます。法律上はこの家を所有していますが、気持ちとしては「預かっている」感じで、責任持って後世に遺していかねばと思います。そのための手間と費用がかかるのが、大変な点でしょうか。
Q1:Nさんより
素敵な家具やお花などのインテリアで、古い家の良さが引き立っていて凄く素敵です!
イギリスでは築100年以上の家は全然普通で、19世紀の家でも新しいぐらいだと読んだ記憶があります。古い家に楽しく住むまりこさんの工夫、とくに保存規制の中でのリノベーションや、メンテについても興味あります。
A2:
ありがとうございます。おっしゃるとおり100年は古い家ではなく、人気があるのはそれ以上、昔の建築かと思います。天井や壁、床などのディテールに趣のあるデザインが、時代ごとに特徴があるのです。
グレード2の家ですと、外部は歴史的景観を残すような修復や修理をするという法律です。たとえば我が家の窓枠が腐り修理する時も、昔ながらのデザインで、ペンキの色もふさわしい色合いを求められました。
室内の間取りは変えられませんが、お風呂・シャワー・キッチンなどの設備は自由に決められます。やはり、水回りは現代的にするのが快適かと考えます。お風呂好きなので、お湯がたっぷり出ることは、わたしにとって必須条件でした!
Q3: Mさんより
築400年の住居はどんな点をリノベーションして現代の住まいにしていくのでしょう? セントラルヒーティング設置、断熱材入れ、屋根の材質や手入れなどなど。
ちなみにCO2削減が強く叫ばれているこの頃ですが、家庭用キッチンオーブンや暖炉での石炭、木炭、薪などのエネルギー源の使用は今後も永続的に可能なのでしょうか?
A3:
水回りやセントラルヒーティングの整備と同様に、断熱材を屋根裏に入れたりしています。この村はガスが通っていないのでAGAという田舎によく見られる鋳物のオーブンしか、当初なかったのですが、IHのコンロと電気オーブンも導入しました。
暖炉は、薪を使用します。地元の木を寝かしたものを業者さんに注文していて地産地消です。石炭/木炭は使用しませんが、確かに持続可能なエネルギーを考えると太陽や風力となるかと思いますが、この村ではまだまだかと思います。
Q4: Kさんより
今年、日本の古い木造家屋を直しながら住んでいく予定です。日本と状況は違うとは思いますが、どこが劣化しやすいか、どこをどのように、どれくらいの頻度でメンテナンスをされているか、具体的に知りたいです。
A4:
いちばん古い部分は500年以上たつテューダー朝の建築である我が家は、家が土の上に乗っているだけで地中に基礎がありません。家全体が地盤ともに季節によっても、移動しますので、塗装にヒビが入ったり、屋根瓦がずれたりもします。約5年にいちどは、ペンキを塗り直したり、屋根を葺き替えたりしますので、そういった維持費がかかります。
まとめますと、古いものに手を入れてアップデートすることで息を吹き返す。その温故知新を日々感じ、生活できることが、古い家にす醍醐味だといえます。
これからの季節はサンルーム風渡り廊下のガラスドアを開け放し、庭との一体感も感じられたらと、春が待ち遠しいです。
インスタライブを、新築したサンルーム渡り廊下から配信しています。
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