Chestnut Bakery チェストナット・ベーカリー
最近のロンドンのリテール動向として私が注目している点が2つあります。一つはクラフト食材店の新規オープンが相次いでいること。ロックダウンによって自宅で調理する人が増えたことから、スーパーとは一味違うクラフト食品を扱う高級食材店が、雨後の筍のように増えました。皆さんがお住まいの町にもグローサリー・ショップが一つや二つ立ち上がっているのではないでしょうか。
私が住む町にも、ロックダウン中に英国国内で生産された自然食材にこだわった素敵なクラフト食材店ができて嬉しい限りなのです^^ 食品を購入する際、私はいつも生産地や生産者について調べます。うんと遠い国から来ていないこと、できればオーガニック食品であることなどが、購入のポイントになります。わが町にできたお店は国産のオーガニックやナチュラルな商品しか扱っていないので、ラベルを見ずにヒョイとカゴに入れることができてとっても便利。お店が責任を持ってキュレートしてくれているおかげです。先日はついに量り売りショップも町に加わり、じわじわとエコ改革が浸透中。
そしてもう一つ、クラフト食品店とある意味コンセプトは似ているのですが、市内あちこちで素敵なパン屋さんのオープンが相次いでいること! パンはロックダウン期間もエッセンシャル食品として持ち帰りができたことから、手に覚えのある皆さんがチャンスとばかりに自宅でパンを焼き始め、デリバリーから始め、ついには実店舗を持つまでに成長したパン屋さんも数しれず。ロンドンは今、まさにアルチザン・ベーカリー黄金期なのです!
中でも今年5月、すごいチームが集まって鳴り物入りでオープンしたのが、ベルグレイヴィアのチェストナット・ベーカリー。ヴィクトリア駅からすぐ。チェルシーからも徒歩圏内のおしゃれなパン屋さんです♡
つい昨年までニューヨークのアルチザン・ベーカリー、ドミニク・アンセルがあった場所ですが、コロナで辛くも撤退。内装を完全にリニューアルしての新オープンです。ドミニク・アンセルのパンは本当に美味しかった・・・でも商品とお店の雰囲気がそぐわないなと常々思っておりました。それがチェストナットの内装は、今のロンドン・フィーリングにピッタリ^^ 木の温もりと明るくリラックスした雰囲気、粋でシンプルなデザインが現代に即しているのです。
私はお友達がオープニング・セレブレーション期間を教えてくれて、一緒に行くことになってラッキー! 色々とメニューを試すことができました♡
チェストナットはただパンやケーキを売るだけのお店ではありません。「次世代のパン職人たちを立派に育てる」という使命を帯びた、コミュニティ・ベーカリーなのです! ベーキングに興味を持つ若い人たちのために見習い制度を採用し、お給料を払いながら毎日ベーキングを伝授。技術やコツを学んでパン職人として一人立ちすることができれば、一生の仕事になりますものね。
酵母と話をしながら生地を作って丹念に整形し、窯オーブンの温度をあやつり美味しいパンになるよう願いを込めて焼きあげていく。幸せな匂いにつつまれながらパンを取り出す瞬間はきっときっと・・・! それは本当に大きな満足を得られるお仕事に違いないのです。
そのために、このパン屋さんにはロンドン市内はもちろん、イギリス国内やイタリア、フランスやオーストラリアなど世界各地で豊かな経験を積んだ粒ぞろいの職人たちが指導を担っています。そのチームをまとめ上げているのが、ヨークシャー生まれのマスターベーカー、ケヴィン・ロバーツさん。ここに来る前は、あのBread Aheadで4年間に渡って先生をしていたそうですよ^^
というわけで、チェストナットのパンは国際色豊か。特にロンドンで人気の中近東系のパンを得意としているようですが、まぁとにかくバラエティ豊か!
目移りしちゃうでしょ? ケーキ類はまだいただいていないので、お味の方はまた別の機会に報告しますね。オープニングでいただいたメニューのうち、一押しは断然フラットブレッドや軽食類ですね〜。キッチンがいい仕事をするみたい^^
チェストナットでは余った商品はフード・バンクに寄付しますし、地元の学校にパンを届け、チェルシー地区の年金生活者の皆さんのためにお金を集めるためのチャリティ販売もします。つまり地元コミュニティとの連携の中で、「共に育つ」パン屋として機能しているのです。ここは真のコミュニティ・ベーカリーなのですね。
物事は体験して習得していくのがいちばん。アプレンティス制度はそのための素晴らしい伝統です。こんなお店があれば、地域全体で応援していきたいですよね^^