ボヘミアの息吹をメイフェアに

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LALÏ  ラリ

ロンドン中心部を構成する個性あふれるエリアの中でも、メイフェアはとびきり裕福なお金持ちが集まることで知られています。通りを歩いていると新しいお店もどんどん立ち上がっていることが分かり、とってもバブリーな雰囲気^^

ニュー・ボンド・ストリートやサビル・ロウなど由緒あるショッピング通りが交差するところどころに、バークレー・スクエアやグロブナー・スクエアなどの緑地が点在し、あちこちで5つ星ブティック・ホテルや星付きのレストランが輝きを添える一等地がメイフェア。

近隣で働く人たちがランチタイムなどで憩う麗しのバークレー・スクエアの、大きな樹々がざわめくその緑地に向かって、いくつかの通りが流れ込んでいます。その一つがBruton Place。小さな通りですがここ数年、再開発が進んで新たな飲食店が連なる魅力的なストリートへと生まれ変わりつつあるのです♡

中でもいちばんキュートでお洒落なのが、2019年に誕生したカフェ「LALÏ」。今やお客さんが途切れない人気カフェとして不動の地位を築いています。

店内のインテリアも涼しげ〜^^  ベージュや白を基調とし、グリーンが涼を添える様子は近年のインテリア・トレンドでもある「ボヘミアン」のお手本のよう。食べ物もカラフルで花びらが添えられることが多く、インスタ映えもバッチリ。自由人のヘルシーなライフスタイルをコンセプトとし、ヴィーガンや不耐性対応のものも多く扱っています。

可愛らしいベイクしたドーナッツ! なかなか美味。ビートルート・ラテと一緒にピンクの世界へ♡

こちらは抹茶ラテ。花びらが浮いているだけでポエティックに^^

最近のロンドンで幅をきかせている、アラブ諸国にルーツを持つオーナーさんのキラキラ・カフェの一つかなと思ったのですが、違いました! どうやらオーナーさんはリトアニアやルーマニアにルーツを持つ方のようで、だからこそ「ボヘミアン」なライフスタイルの提案がしっくりくるわけですね。

今週、チェコの首都プラハに小旅行に行ってきたのですが、チェコは「ボヘミア」の本拠地なのだなぁと考えると、このカフェとどこかでビビっとつながりましたw

「ボヘミア」は、古くはチェコを流れるヴルタヴァ川(モルダウ川)流域の地名で、その辺りに住むスラブ系の人々がボヘミアンと呼ばれていました。それにしても中欧で「ボヘミアン」と呼ばれる地域の広いこと。今回の旅行で多くのボヘミア的なものに接し、ボヘミアンがなんとも身近になってしまいました^^

中世に存在した中欧の統一国家、神聖ローマ帝国は広義ではボヘミアンなんですよね。チェコのボヘミア公は、オーストリアのハプスブルク家と肩を並べるとてもパワフルな存在でしたし、神聖ローマ帝国の首都も長年に渡ってプラハにありました。

ただし中欧とはいえ、チェコ人は本来ケルトやスラブのルーツを持つ人たちなので、北欧や東欧的なものと親和性が強い。神聖ローマ帝国時代の半ばからドイツ的なゲルマン支配が始まり、チェコ人たちは少数派になってしまうのです。ゲルマンへの反発や民族意識の高まりが、チェコの国民的な音楽家スメタナの「我が祖国」で、叙情豊かに表現されています。日本人にもなじみのある、あの旋律です。ヴルタヴァ川(モルダウ)は、チェコの人たちにとって心の故郷なのですね・・・

夕方のヴルタヴァの流れ。

スメタナは「我が祖国」と題された連作交響詩を書くにあたり、川を描くことによってボヘミアの歴史を表現しようとしたそうです。源の清流から大河になるまでを描くことで民族を表現したのが、第2曲である「ヴルタヴァ」なのですって。キャッチーなメロディラインと壮麗な音の重なりが魂に響く、名曲です。

ヴルタヴァ川に架かる中世のカレル橋。カフカ・ミュージアムから望む。フランツ・カフカもチェコ人です!

橋のミュージアムと呼ばれるだけあり、カレル橋は優れた彫刻のオンパレードでした。

というわけで「ボヘミアン」というとヒッピー的な印象を持つ今日の私たちですが、その由来は中東欧にある。ロンドンで元祖ボヘミアンたち=フラワーチルドレンが多くいたのはチェルシーのあたりですが、パリならそれは、モンマルトル。中東欧(主にルーマニア)からパリに定住しない貧しい人々が多く流れてきたとき、フランス人たちは彼らを大雑把に「ボヘミアン」と呼ぶようになった。ということは現在における「ボヘミアン」はロマの人々が原型なわけですが、バックグランドには、チェコ的なボヘミアがある。そう思っています。

ボヘミア国はなくなっても、ボヘミアという言葉は今も生き残り、自由に生きる人々を指す単語に変わっていったということですよね。歴史とは面白いものです。

さて、カフェに話を戻しましょう。

ボヘミア的なライフスタイルを推奨するLALÏ では、身体に優しいヘルシーなブランチ・メニューを数多く用意しています。そば粉で作るパンケーキがあったので頼んでみたのですが、ココナッツ・ヨーグルトでいただく優しい味わいのパンケーキ、なかなか美味しかったのでオススメです♡

LALÏ は明らかに女子受けしそうなのに、なぜか男性客も多いんですよね。また近所で働く同僚グループも頻繁に利用している模様。とても落ち着ける空間だからついつい足が向いてしまうのかもしれませんが。

Bruton Placeは、中心部とは思えない静かな通り。外にもいくつかテーブル席があり、お天気の日にはぜひ座りたい、メイフェアの特等席です。

 

33A Bruton Place, London W1J 6NP

店名LALÏ
最寄り駅Bond Street / Oxford Circus
住所33A Bruton Place, London W1J 6NP
電話番号020 7408 0626
営業時間月〜金 9:00 – 18:00 土 10:00 – 17:00
URLhttps://www.lalilifestyle.com
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About Author

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岡山県倉敷市出身。ロンドンを拠点に活動するライター、編集者。東京の文芸系出版社勤務、雑誌編集・ライターを経て、1998年渡英。英系制作会社にて数多くの日本語プロジェクトに関わった後、2009年からフリーランス、各種媒体に寄稿中。2014年にイギリス情報サイト「あぶそる~とロンドン」を立ち上げ、編集長として「美食都市ロンドン」の普及にいそしむかたわら、オルタナティブな生活、人間の可能性について模索中。著書に『歩いてまわる小さなロンドン』(大和書房) 『ロンドンでしたい100のこと』『イギリスの飾らないのに豊かな暮らし 365日』『コッツウォルズ』(自由国民社)。NHK文化センター名古屋教室「江國まゆのイギリス便り」講師。MUSIC BIRDのラジオ番組「ガウラジ」に月一でゲスト出演。チャネリングをベースとしたヒーラー「エウリーナ」としても活動中(保江邦夫氏との共著『シリウス宇宙連合アシュター司令官 vs.保江邦夫緊急指令対談』もある)。Instagram: @ekumayu

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