WW1をアートに昇華する

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何気な~く歩いているだけで、驚くような歴史的意味を持つ建造物を数多く目にしているはずのロンドンなのだが、そんなことにはおかまいなく日常は過ぎてしまう。でも、たまにはその意味に向き合ってみるのもいいと思えた最近のイベント。

テムズ川上、Victoria Embankment沿いに停泊しているHMS President (1918)。第一次世界大戦中に英海軍によって造られた軍艦のうち、生き残っている三艘のうちの貴重な一艘だ。

HMS President (1918)を北岸からのぞむ

HMS President (1918)を北岸からのぞむ

迷彩服は敵の目をあざむくための軍服だが、これと同じカモフラージュ理論によるペイントが艦船にも施され活用されていた。HMS President (1918)は、そのカモフラージュ船の一つで、Dazzled ship(迷彩艦)として敵の目を撹乱していたという。ストライプや曲線パターンを施された艦船は、Uボートのような潜水艦が進路を測ったり、どこを狙えばいいのか分かりづらくする効果があったのだそうだ。

このHMS President (1918)が、カモフラージュ理論に基づいた新たなアート・ペイントを施されて生まれ変わったのが今年7月。2014年いっぱいは現在の場所に停泊し、人々の目を楽しませることになるので、ぜひこの機会に皆さんも足を運ばれてみてはどうだろうか。

ところで私もまったく気に留めていなかったのだが、今年2014年は第一次世界大戦が始まって100周年という節目の年。2014年、2016年、2018年の3年間は1914-1918年のWWI百周年を振り返るイベントがイギリス各地で行われることになり、HMS President (1918)のアート・ペイントはその一連イベント「14-18-NOW」の一貫なのである。UKだけでなく世界各地からアーティストを招いて、WWI関連の遺産とのコラボをするようだ。(ちなみに今年の14-18 NOW関連のイベントはもう終わっちゃったみたい〜。夏の数週間のお祭りのようです)

今回私はHMS President (1918)の船内で行われたレセプション・イベントに参加し、船内見学までさせてもらった。

小さなバーだけど眺めは抜群

小さなバーだけど眺めは抜群

家族参加も見られたレセプション

家族参加も見られたレセプション

会場ではこのDazzle shipイベントに関わったクリエイティブ・チームのスピーチがあり、当時2000艘以上あった迷彩艦の生き残りであるHMS President (1918)の役割や、今回のアート・ペイントについてとても興味深い話を聞くことができた。

関係者スピーチも盛り上がった

関係者スピーチも盛り上がった。左下はオリジナルの模型

目をまどわすトビアス・レーベルガーさんの作品

目をまどわすトビアス・レーベルガーさんの作品

この素晴らしいペイント作品のデザインを手がけたのはドイツ人アーティストのTobias Rehberger/トビアス・レーベルガーさん。この人、目をまどわす不思議なパターンを生み出す天才みたいで、illyのコーヒー・カップ&ソーサーとかもデザインしちゃっている面白い経歴のアーティストなのだ。

スピーチ後の質問タイムで、「WWIの記念作品にドイツ人アーティストを起用とはこれいかに」みたいな冗談めかした質問が飛び出したが、「それはたまたま。トビアスが最もふさわしい作品を作れると判断したからだ」という答えで会場は納得。全て緻密にコンピュータでデザインした後に、98ものパネルを作ってパターンをコントロールし、実際の作業は6人で行われたのだという。さすが、カモフラージュというコンセプトを生かしつつ、粋にコンテンポラリーな作品になっていると思う。

これに続いた船内ツアーがなかなか面白かった。

迷彩パターンの折り紙で作った船も一緒に展示

折り紙で作った迷彩艦も展示。上の写真のパターンだと何艘にも見えるのだそうだ

3層になった船内はかなり広く、私たちのレセプションがあったバー・スペースなんてかわいいもの。奥にはさらに大きなイベント・スペースやバー、ラウンジがあり……

こちらは我らがイベントとは別で、より広いイベント・スペース

こちらは我らがイベントとは別で、より広いイベント・スペース

レコーディング・スタジオや普通のオフィスが!

レコーディング・スタジオや普通のオフィスが!

さらには普通のオフィスや録音スタジオまで・・・!

オフィスからの眺め〜♪ ゆ〜らゆ〜らしそう・・・

オフィスからの眺め〜♪ ゆ〜らゆ〜らしそう・・・

この録音スタジオは、スタジオ内そのものの音がウルサすぎて現在は使われてないみたい・・。

船上からサウスバンクをのぞむ

船上からサウスバンクをのぞむ

このHMS President (1918)のバーは12月までふつうにオープンしているので、こんなテムズの景色を楽しみたい方は、ぜひ☆

夜の眺めは格別。この日は月がきれいだったな

夜の眺めは格別。この日は月がきれいだったな

 

HMS President (1918)

HMS President (1918)

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About Author

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岡山県倉敷市出身。ロンドンを拠点に活動するライター、編集者。東京の文芸系出版社勤務、雑誌編集・ライターを経て、1998年渡英。英系制作会社にて数多くの日本語プロジェクトに関わった後、2009年からフリーランス、各種媒体に寄稿中。2014年にイギリス情報サイト「あぶそる~とロンドン」を立ち上げ、編集長として「美食都市ロンドン」の普及にいそしむかたわら、オルタナティブな生活、人間の可能性について模索中。著書に『歩いてまわる小さなロンドン』(大和書房) 『ロンドンでしたい100のこと』『イギリスの飾らないのに豊かな暮らし 365日』『コッツウォルズ』(自由国民社)。NHK文化センター名古屋教室「江國まゆのイギリス便り」講師。MUSIC BIRDのラジオ番組「ガウラジ」に月一でゲスト出演。チャネリングをベースとしたヒーラー「エウリーナ」としても活動中(保江邦夫氏との共著『シリウス宇宙連合アシュター司令官 vs.保江邦夫緊急指令対談』もある)。Instagram: @ekumayu

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