Tea House Theatre ティー・ハウス・シアター
テムズ南岸の再開発ハブ、ヴォクソール周辺の進化が目覚ましい昨今なのですが、高層ビルが立ち並ぶナイン・エルムスを尻目に東のランベス側はまだまだ昔のロンドンらしい面影を残し、ヴィクトリアンの住宅街が広がるゆったりとした情緒を漂わせています。
ヴォクソール駅を出て高架を潜ってすぐのところには庶民の緑地「Vauxhall Pleasure Gardens」があります。その端に佇んでいるのが、ヴィクトリアン・パブをそのまま再利用したティールーム、ティー・ハウス・シアター♪ 2011年の創業です。
名前の通り、ここはティールームでありながら、折に触れてシアターとしても機能しているのですね♡ オーナーさんは俳優、シアター監督、執筆業などを営むハル・イガルデンさん。Timeoutの「Love London Awards」で3年に渡ってアワードを受賞した、まさに地元民に愛されるティールームでは、夜はアルコールも提供するので結局はパブのような雰囲気に^^
さて、ティー・ハウスと言っているだけあり、茶葉にはこだわりがあります。紅茶も頼むとティーコージーが必ずついてきて気持ちがほっこり。ハウスブレンドはアッサムとセイロンをブレンドしたブレックファストのほかにも2種があり、その他にも約30種の充実したティー・メニューを用意。お好みのティーにハーブ類を1ポンドで加える薬効ティーのリストもあって、こちらも興味をそそられます。冷たい飲み物もオリジナルがたくさんあり、本当にお茶や飲み物の専門店なのだなと納得。
食事も朝から夜までノンストップで提供しています。イングリッシュ・ブレックファストはもちろん、田舎のティールームならどこでもありそうな軽食、丁寧に作ってくれるサンドイッチ、パイやサラダ類が揃っていて嬉しくなるメニュー仕立て。でも、よく目を凝らしてみると21世紀らしい現代人に合わせたヘルシー・メニューもちゃんとあり、オーナーさんのバランス感覚を感じます。
この日はケーキ類をどうしても試してみたくなり、マーブル・ケーキにバター・クリームとストロベリー・ジャムを挟んだものをいただいてみました。このマーブル・ケーキはなんと3種もあり、他にもヌテラを挟んだものなどがありました^^ 焼き具合も完璧で甘さ控えめ、ココアのほろ苦さも感じることができ、クリームの甘さと混ざり合うとちょうど良いバランスでした。
さて、このティー・ハウスが佇んでいる周辺については、とても面白い歴史があるので少し。
目の前に公園があると書きましたが、その昔、17世紀後半から19世紀半ばにかけては、もっと広いエリアが「Vauxhall Gardens」または「New Spring Gardens」と呼ばれる遊興目的の美しい緑地だったのです〜。
最初に造成して所有していたのは貴族だったようですが、伝統的に一般にも開放されていたようです。基本的には上流階級の人々が遊ぶための壮大な敷地で、1万2千人の観客を前にオーケストラがヘンデルの組曲のリハーサルをしたり、はたまた6万人が参加する仮想パーティーが開かれたりと、さまざまなエンターテインメントが繰り広げられたようです。
18世紀半ばはロココの時代。時の皇太子がロココ様式の擁護者だったとかでロココなパビリオンを創設したほか、トルコ様式のテントが作られたときは大人気となり、大いに盛り上がったようですね。しかし19世紀半ばに所有者が破産して敷地は一旦閉じてしまいました。ジョージ王朝時代の貴族の虚栄を描いたサッカレーの『Vanity Fair』にも、Vauxhall Pleasure Gardensが登場します。たいへん歴史のある土地なのですね〜。
そして現在のような公共の公園になったのは1976年。何だか歴史を振り返ると気が遠くなるような思いもありますが、今では庶民の憩いの場としてなくてはならない存在です。
ティー・ハウス・シアター。いかがでしたか? ウェブサイトを見るとこう書いてあります。
「とにかくリラックスして欲しい。ミーティングしたいなら僕たちはそっとしておこう。仕事をしたいならWifiもあるし、友達とただ楽しむためのゲーム・ボードも用意している。お子さんがいるならハイチェアもあるしオモチャもある。新聞を読むだけでもどうぞ。ここへきたら紅茶でも飲んで、ゆっくりしていって欲しい」
私はよく家を飛び出してカフェで仕事をすることが多いのですが、こういったカフェやティールームは、早く人を回転させたいお店が多い中、今となっては貴重だと感じます。それで、勝手に “ゆる系ティールーム” と呼んでいます ^^ キビキビとしたウェイトレスさんも制服を着こなしていて可愛らしいのです(シアター系だからかな?)。
もちろん、折に触れてイベントも各種催されています。イギリスでは8月からエンターテインメント・ベニューの再オープンを認めるというニュースがつい先日流れていましたけど、さて、これからどうなるのでしょうか。大きなベニューは色々と大変でしょうけど、このくらいの規模であればきちんとコントロールしながら再オープンしていけそうですね^^