011 | 生命の源、潤いの水

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イギリスの夏は、年々温度も湿気も高くなって、日本の夏に近づいてきているような気がします。地球温暖化のせいでしょうか。体温調整のため、暑い日には多めの水分がからだから出ていきます。水は人間も含めてすべての生命体に欠かせないもの。心身ともに癒されて心も潤う森林浴の次は、からだに潤いを与える水のお話です。

 水はなぜ大切?

人間のからだは、全体の60−70%が水分、また99%以上が水の分子で構成されているそう(1)。加齢とともにからだの水分量は少なくなりますが、年齢に関わらず、十分な水分が得られないとうまく機能しなくなります。例えば、水分が足りないと、からだは水不足に備えて細胞内に水分をため込もうとするため、むくみを生じたりもします。極端な場合には、脱水症状などで死に至ることもあります。稀ですが、その逆で水分を摂り過ぎても、体調不良のもとになるのでご注意を。

潤いを保つには?

潤ったお肌の状態を保つために、クリームなどを塗って保護膜を作るのも役に立ちますが、決してからだの中が潤うわけではありません。なので、中も外も潤わせるためには、適度な水分補給は必須。日頃から気を使えば、歳をとっても必要な水分量を維持でき、心身ともに若々しくいられるということでしょうか。

からだの潤い度をチェックするには、水分摂取量はもちろん、唾液の状態をみるのも有効そうです。漢字の「活」が水分補給の大切さを説明しているとのことで、中国医学的には、口の中がべっとりとしていて唾液が濃いか不健康なにおいがする場合は、気の巡りが悪く体液が清浄ではない状態。改善法には、こまめな水分補給はもちろん、口を開けたままにすることを避け、不必要におしゃべりしないことや、心の平穏を保つことも有効だとか(2)。唾液は一日に1.5リットルほど作られているので、同量の水分補給(その他を食事から摂取する計算です)をすることによって、体液のリサイクルを避けて、毒素の排出を助けると考えていいでしょう。同様に尿や便から一日約1.5リットル分の水分が出ていきます。味付けの濃いものに加え、カフェインやアルコールなど利尿作用のあるものを摂取した際には、水を多めに飲む必要があります。また、運動量の多い日にも、運動量に応じて水分量を増やすといいでしょう。

 水の機能

水は空気との境目に水面を作って膜を張ったような状態になり、アメンボなどが水の上を歩くことを可能にしています。これは水の水素原子が特定の構成で水面に並び、水の酸素原子のみと高密度で結合するため。そうかと思えば、水溶性の物質を溶かし込む機能もあります(3)。体内では「代謝」という名の下に、様々な化学変化が起きて生命を維持しますが、水が深く関係しています。例えば、毒素が肝臓内で脂溶性から水溶性に処理され、腎臓を通過して尿となって排出されるプロセスなど、水なしでは機能しません。生命維持に欠かせない血液も、水分。また、わたしたちのからだには弱い電流が流れていて、水にはその電気を通すコンダクターとしての役割もあります。水の機能には、まだ解明されない謎の部分がたくさんあります。

たかが水、されど水。

たかが水、されど水…。

水の種類

一概に水といっても、世の中にはいろんな種類の水があります。どの水が一番いいのかと、クライアントから意見を聞かれることがしばしばあります。個人的には、長い時間をかけて山から地下を潜って濾過され、ミネラル成分を含むわき水が、成分的にもエネルギー的にも一番だと思うのですが、残念ながら、このような水の湧き出る場所の近くに住んでいない限りは、入手困難。近年では、環境汚染も懸念されるので、それも水の質に大きく影響しているはず。以下、水の種類をリストアップしてみました。

水道水:都会に住む人たちは、水道水に頼ることを余儀なくされます。今でこそ、ミネラル・ウォーターのペットボトルなどを持ち歩く人が増えたものの、水道水をそのまま飲んで、お料理に使う人もまだまだたくさんいるはず。規定のチェックをクリアした浄化水が水道水となるわけですが、汚水浄化の際に取り除けない物質がたくさんあることと、雑菌処理に使われている塩素が問題。塩素は安全だから使われているわけではなく、安価に殺菌できるため使われているようです。殺菌された水はいいのですが、健康の源で免疫システムの要、腸内の善玉菌たちも殺してしまうのでは? ちなみに塩素は、水に含まれるその他の有機物質と化合し、発がん性物質として知られるクロロフォルムにもなります(4)。

市販のミネラル・ウォーター:大半のミネラル・ウォーターはBPA(Bisphenol A=ビスフェノルA)が使用されているプラスチックのボトル(ペットボトル)に入っています。 BPAは環境ホルモンで、男女ともに乳がんなど、エストロゲン過剰の状態を引き起こす原因のひとつ(5)。ペットボトルは長期の保存が可能なため、どのくらいの期間どういう状態で保管されているかによって、水に溶け込むBPAの量は多少なりとも違うようです。特に暖かいところに保管されたペットボトル入りの飲み物は避けるべきですが、一般消費者には知る由がありません。ファンクショナル・メディスンの世界で名の知れた免疫学者が、とあるインタビューで「ペットボトルの水を飲むくらいなら、水道水の方がまだまし」とコメントしていました。もちろん、水道水にはよからぬものがいろいろと入っているのを承知でのコメント。

フィルター・ウォーター:雑菌や塩素から重金属、そしてできればエストロゲンまで濾過できる、ウォーター・フィルター・システムを家全体用に取り付けるのがお勧めのようです。完璧ではありませんが、水道水やペットボトルの水より安全度はぐっと上がります。システムの取り付けが無理な場合には、重力式の強力フィルター・タンクなどもあります。ちなみに一番手っ取り早いブリッタ・フィルターは、ある程度のものを少し濾過しますが、濾過された水のアルミニウム量は逆に増加する、という残念なテスト結果が出ています(6)。

リバース・オスモーシス(逆浸透膜):逆浸透膜という特殊なフィルターを使ってつくる、純粋な水。純粋であるため、ミネラル分のない水(自然界には存在しない)になってしまうのが難。ミネラルはからだにとって、非常に大切な成分。あとからミネラル分を足すという手もありますが、濾過後、水自体が酸性になり、ミネラル・ウォーターを飲むのとは違った話になるそう(7)。

ストラクチャード・ウォーター: 密かに話題を呼んでいる、ストラクチャード・ウォーターは、物理量子学を利用して構成した水。ナチュラル・ヘルス業界では、このタイプの水が一番という意見もちらほら。水が必要とされる工場などでも、水質の維持や水道管保護の目的で(塩素処理された水が水道管を傷めるため)、ストラクチャード・ウォーターを取り入れているところがあるようです。かなり興味深い領域なのですが、今回十分な情報の入手ができなかったので、別の機会を作ってレポートしたいと思います。

結論

水は食べ物より大切なものかもしれません。特に、夏にはしっかり補給したいもの。残念ながら、理想的な水の入手は、一筋縄にはいかないという結論に至っています。数号前に食品の安全性でもコメントしましたが、からだが必要とするものは、良質のエネルギー源。水はその大切な一部を担っています。濾過システムの取り付けやフィルター・タンクの購入、または、毎日グラスボトルのミネラル・ウォーターを飲むというのは、自分も含め、多くの人にとって簡単にはできないこと。でも、グラスボトルのミネラル・ウォーターを一週間や隔週で一本購入すると決めて、少しでもいい水を使うようにすることは可能なはず。

もし、ペットボトルの水を使うなら、まず長期の保管を避けること。冷暗所に保管して、ボトルから直接水を飲まないようにすることが、多少なりとも環境ホルモンによるダメージを少なくすると思います。水道水をそのまま使うという人がいれば、日頃からクロレラやパセリ/コリアンダーなどクロロフィルを多く含む食品(重金属の排出を助けます)と食物繊維を多めに摂取するなど、少しでもからだに毒素がたまらないよう、何らかの形で対処することをお勧めします。

 

参照:

  1. Mercola, J. (2011). Water: The Single Most Important Element for Your Health. [Online] Available at: http://articles.mercola.com/sites/articles/archive/2011/01/29/dr-pollack (Accessed: 04 July 2016)
  2. Guo, B and Powel, A. (2001). Listen to Your Body. Honolulu: University of Hawai’i Press. pp.107-108
  3. Kent, M. (2000). Advanced Biology. 1st edn. Oxford: Oxford University Press. pp.20
  4. Pitchford, P. (2002). Healing with Whole Foods. 3rd edn. California: North Atlantic Books. pp.123
  5. Keep A Breast and Environmental Working Group. (2013). Dirty Dozen – List of Endocrine Disruptors. Keep A Breast Foundation and Environmental Working Group. pp.4
  6. Water Filter Labs. (2014). Brita water filter heavy metals reduction laboratory results. [Online] Available at: http://www.waterfilterlabs.com/Brita-water-filter-heavy-metals-lab-test-results-lead-arsenic-cesium.html (Accessed: 06 May 2016)
  7. Wolf, D. (2014). HEALTHY TO 100. Kelowna: Wolf Publishing. pp.300

 

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About Author

大阪府出身、1996年よりロンドン在住。ナチュロパス、ファンクショナル・メディスン・プラクティショナー、ニュートリショナル・セラピスト(mCMA, mBANT, CNHCreg, CFMP)。ハックニー地区にあるコンプリメンタリー・ヘルス・クリニックと並行して、オンライン・クリニックでも活動中。好きなこと:健康的でおいしいものを作って食べること、ナチュラル・ヘルス・フード・ストアでヒット商品を探すこと。好きな色:ピンク紫(夕暮れ時の空の色とか)。好きな言葉:(実現の状態を)見る前に信じること(”You’ll see it when you believe it.” by Wayne Dyer)。

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