
あっという間に2026年もかなり終わりに近づいてきましたが、みなさんは、その後も元気にお過ごしでしょうか。今号では、期限が迫ってきている、小麦粉への合成葉酸(フォリック・アシッド)添加義務についてお届けします。わたしたちの半分以上が影響を受けかねないことなので、特に小麦系食品を毎食のように摂取しているなら、意識した注意が必要になりそうです。内容が複雑なため長い記事となってしまいましたが、文末部分には056号と068号で取り上げた乳製品事情のアップデートとちょっと気になる点も加えています。ご興味のある方はご覧ください。
葉酸とは?
葉酸は、英語でfolate(フォレート)、ビタミンB群に属する水溶性の栄養素でビタミンB9としても知られています。大きくは、食品に含まれる自然の天然葉酸、人工的に作られた合成葉酸のfolic acid(フォリック・アシッド)、そしてメチル化され活性状態にある活性型葉酸(5-メチルテトラヒドロ葉酸など)の3種に分類されます。前者の2つは、それぞれの代謝経路を経て活性型に変換されますが、後者はその過程を必要としません(1)。
「一炭素代謝」と呼ばれる代謝のネットワークは、葉酸を必要とする葉酸回路から関連の代謝回路へとつながっています。この代謝ネットワークをとおして、遺伝子発現の制御、エネルギー産生、解毒機能、眠りやメンタルヘルスに関係する神経伝達物質の生成など、生命維持に欠かせない機能が働いているのです(1,2)。葉酸はこれらの土台部分に必要とされる栄養素なので、葉酸回路に問題が生じると、一炭素代謝一式が多少なりとも影響を受けることになるでしょう。
葉酸不足が関係している病気や症状は:自閉症、癌、心臓病や脳卒中、認知症やアルツハイマー病、鬱、神経管閉鎖障害、未熟児、先天的異常など、大球性貧血、粘膜炎、不妊症、神経障害。葉酸過剰による病気や症状は:ビタミンB12不足の隠蔽、大腸癌とその他の癌、未代謝合成葉酸の増加、NK細胞の減少/免疫システムへの栄養、(母親の過剰摂取による)子どもの神経/代謝異常、などが挙げられています。(2,3,4,5)
葉酸のタイプについてわかりやすくなるよう、省略化された一炭素代謝経路図(1)を以下に付け加えておきます。この図は、葉酸回路と活性型葉酸が直接的に働くメチオニン回路のみですが、以下の解説と併せて、天然・合成・活性型は葉酸でも同じではないということがおわかりいただければ十分です。

状況の背景と関連事項
小麦は、胚芽やふすまなど外側の部分に栄養素が集中しています。これらを取り除いていないのは、wholemeal/ホールミール(全粒粉)。精製された白い小麦粉は、外側が取り除かれたものなので、全粒粉に比べて栄養価が低くなることは避けられません。同じ量食べても、摂取できる栄養素の量が異なるということです(6)。ちなみに、玄米や胚芽米と白米との関係も同様です。現在、取り除かれた栄養素の充填として、イギリスでは小麦粉に合成のビタミンB1、B3、カルシウムと鉄分が添加されていますが、2024年に合成葉酸添加の義務化案が加わり、その期限は来たる12月13日となっています(7)。
義務化の対象は、全粒粉以外の小麦粉で、全粒粉や小麦以外の穀物の粉は今のところ対象外です。ちなみに、期限を待つことなく結構前から、合成葉酸の添加は始まっています。例えば、見た目にはブラウン系のパン類でも小麦粉との混合なら、既に合成葉酸添加だったりします。誰の目にも明らかな、パン、パスタ、ビスケット、クラッカーやケーキ類にとどまらず、揚げ物の衣、ソースやクリーム系のもの、ドレッシング類、ファラフェルなどのつなぎとして小麦粉が使われている場合も、合成葉酸添加のものということになります。そのため、もし少量でも小麦粉使用の食品を頻繁に食べているなら、安全確認目的で大まかな総摂取量を把握するには、これらの目安量を加えて計算する必要があるかもしれません。
合成葉酸の摂取を避けたい人たちにとって、選択の余地がほぼない状況となっているため、安全を懸念する医師たち(8)や問題点を理解している消費者層も動いています。ただし、現在のところ小規模の製粉所には義務化が適用されないため、無添加の小麦粉やそれから作ったパン類を購入することは可能なようです(7)。これらの製粉所やパン屋さん関連の情報は、ネット検索にかければ簡単に見つかると思います。
この記事のためにいろいろと調べてわかったのですが、葉酸も含めてヨーロッパ圏内で小麦粉への合成栄養素添加を義務化しているのは、イギリスのみ…!ヨーロッパ圏内では、任意となっているようです。イギリスのEU離脱で、ヨーロッパ圏からイギリスに輸入される小麦粉には、新たに加わっている合成葉酸も含め、一定量で合成の栄養素を添加しなければならなくなっています(7)。例えば、パスタやビスケットなど既に商品になっているものは、製造元が添加していなければ、この先も添加なしのままでイギリスに輸入されるかもしれませんが、具体的なことは調べていないので、ご興味のある方は詳細をチェックしてみてください。
日本の状況も気になるので調べてみました。日本も義務化はされていません。その代わり、健康食品のカテゴリーを中心に強化食品として合成栄養素を添加したものが幅広く出回っているようです。ちょっと調べてみたところ、日本で合成栄養素が添加されている穀類リストやその割り合いに関するデータは、公開されていないようです(9)。さっと見渡した限りでは、義務化しない代わりに、国ではなく企業がどんどん合成栄養素の添加を進めているという印象を受けています。
一体何が問題?
合成葉酸添加に際して問題視しているポイントは、大きく分けて2つあります。そのうちの一つは、合成葉酸そのものに付随している難点です。もう一つは、一般に出回っている情報のずれが、多くの人を「無意識」または「無防備」にしていることです。
結論からお伝えすると、最も大きな問題だと受け止めている点は、遺伝子レベルで葉酸回路が滞り気味な人にとって、合成葉酸がさらなる滞りを促す可能性を上げることです。次に、遺伝子の問題がなくても、食事とサプリメントで無意識的に合成葉酸か葉酸の総摂取量が過剰になって不調を起こすケースや、その他の理由で未代謝の合成葉酸が増えすぎて不調を伴う人の増加が見込まれることです。葉酸の代謝不良や過剰の摂取は、健康のサポートどころか、それに気づかない限り改善できない不調の原因になってしまいます。その他多くの栄養素と同様に、葉酸は適量が必要です。不足も過剰も健康の妨げになるということです。合成葉酸を避けたいと思っている人たちにとって、選択の余地がほぼないことも問題だと感じています。
イギリス政府のガイドラインによると、成人食事摂取基準は一日200マイクログラム(以下μgで表示)で、妊婦は400μg(10)。期限が目前となっている義務化では、小麦粉100gにつき250μgの合成葉酸を添加しなければならなくなっています。例えば、典型的なイギリス人の食事を想定した場合、朝食がトースト2枚と卵かベークドビーンズ、オレンジジュースをコップに1杯、お昼にアボカド、ベーコン、レタスのバゲット・サンドとバナナ1本、おやつにビスケットを2~3枚かマフィン1つ、夜にピザとサラダを食べたとします。この場合、小麦粉を使った食品に添加されている合成葉酸に、食事そのものによる天然葉素の摂取が加わるため、1日の葉酸総摂取量は200μgどころか、おそらく400μgも超えます。もしお昼のサンドイッチを白米とバランスの取れたおかずのランチに変えた場合、葉酸の摂取総量はさほど変わりませんが、合成葉酸の摂取量は減ります。
食事による栄養素の摂取量とは無関係に、毎日同じ量のマルチビタミン剤を(ラベルに記されているとおりに)無意識的に飲んでいる人が結構多いことも、気がかりです。彼らがもし上のような食事内容で、毎日一定量のビタミン類をサプリメントからも摂取していれば、慢性的に過剰の状態を継続させることになってしまいます。しかも、そのマルチビタミン剤が合成栄養素の集合体であれば、健康をサポートするか負担になるかはとても微妙な感じです。(合成の栄養素は、至って健康な人にとっては問題にはならないかもしれませんが、遺伝的要因と後天的な理由で毒素のバケツが埋まっている人にとっては、負担になる可能性大です。)
当然ながら、各個人のニーズに合わせて個別に対応するということが政府の役割ではないため、食事摂取基準量はあくまでも「一般的」なガイドラインとして設定されているもの。基準の設定はもちろん必要ですが、普段より活動的な日や心身ともにストレス度の高い日には多めの栄養素が消費され、逆に、あまり動かずリラックスしている日には需要が減ります。栄養素の食事摂取基準量が、妊婦の場合異なるのはこのためです。これに加えて、各個人の体調や遺伝子の状態などによって、栄養素の消化吸収率や代謝の状態にかなり幅が出ることも念頭に置いておく必要があるでしょう。

小麦食品は、食卓の定番。
問題点その1:合成葉酸
合成葉酸の添加でまず問題となるのは、世界人口の半分以上がMTHFR(methylenetetrahydrofolate reductase/メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素)の遺伝子多型に該当することです。MTHFRとは、活性型葉酸の合成に必要とされる酵素の略式名称で、遺伝子多型とは、DNAの塩基配列(A、G、C、T)が特定の位置で通常とは異なっている状態を指します。MTHFR遺伝子多型の場合、DNAの塩基配列が1箇所入れ替わるため、英語ではSingle Nucleotide Polymorphism/SNP(スニップ)と呼ばれています。
遺伝子多型は、比較的頻繁に見られる現象で病的な遺伝的変異ではないため、病気と直結しているわけではありません。各個人の、体質や性格的な傾向を構成する要素だと理解していただいて問題ないでしょう。遺伝子自体は変えられませんが、遺伝子多型の場合、より健康的に機能するようサポートすることは可能です。とある調査では、MTHFR遺伝子多型で代表的なC677TとA1298Cと呼ばれる2箇所に多くみられる塩基の組み合わせに該当した人が約65%で(11)、別の調査では、その他のMTHFR遺伝子多型のバリエーションを合わせると87.2%というデータを得ています(12)。ちなみに日本人のMTHFR遺伝子多型の調査では、調査対象となった不妊症の日本人女性205人中、C677Tのみの統計で約65%、同文献内で比較している別の調査ではこちらもC677Tのみで日本人4517人中61%となっています(13)。
食事から摂取する天然葉酸とは異なり、摂取した合成葉酸の全てが活性型にはならない点も要注意です(14)。遺伝子多型や補酵素の不足などにより、MTHFRのみならず葉酸回路がどこかで滞り気味になっていれば、合成葉酸添加食品や合成葉酸のサプリメントを継続的に摂取することにより、そもそも滞り気味の部分をさらに滞らせて、一炭素代謝全体の機能低下を促す可能性を上げます。冒頭でも触れたように、一炭素代謝には生命維持に欠かせない機能各種が関わっているため、合成葉酸添加が60~80%の人に多少なりとも影響を及ぼすとすれば、それは問題だと思うのですが…。
合成葉酸の食品添加は1998年にアメリカからスタートし、その後アメリカに続いたのは80カ国以上(15)。アメリカでは、その後5年以内に二分脊椎や無脳症(胎児の成長異常)が約28%減少したようです。その一方では、天然葉酸とは違って合成葉酸が肝臓内で代謝されるまでには時間がかかるため、処理しきれない分が未代謝の状態で血液中に増えると報告されています(14,15,16)。合成葉酸添加に付随する問題点は、すでに各種の研究で幅広く報告されているという点も無視できません。合成葉酸が過剰になると、本来必要な活性型が必要とされる機能を妨げることも考えられます(15,17)。冒頭でも触れていますが、癌との関係や(2,15,18)、年々増加するばかりの自閉症や自閉スペクトラム症と関係している点も気がかりです(15,17,19)。
現在のところ、合成葉酸のほとんどが石油化学製品由来であることも、ここに付け加えておきます(20)。もちろん、製造工程で毒素は濾過されるようになっていますが、石油化学製品由来ということには変わりありません。そのため、今後に向けて、細菌類の遺伝子操作で葉酸を作るという方法(以前にも触れたシンセティック・バイオロジー/シンバイオの領域に入ると理解しています)を取り入れることも始まっているようですが(21)、新たな領域なので過去の記録はないはず…。安全重視の体制でいるなら、研究データが揃って長期での安全性が確認されるまでは距離をおいた方がよさそうです。
問題点その2:混乱や誤解がつきまとう「フォリック・アシッド」
合成葉酸添加を義務化する主な理由は、胎児の神経管閉鎖障害の予防目的らしいのですが(22)、小麦粉を使った食品を毎日のように食べているのは、妊娠準備中のカップルや妊娠中の女性だけではありません。この状況は間違っても「合成葉酸を小麦粉に添加すれば、問題解決」というシンプルな図式にはならないと思います。しかも、わたしたちの多くが知らずしてMTHFR遺伝子多型なら、その対処法を探すことはないため、影響は時間の経過とともに顕著になるのではないでしょうか。
前述のとおり、葉酸は生命維持に必要な各機能の土台部分に必要とされるため、神経管に限定することなく、胎児の健康や成長にも欠かせない栄養素の一つに挙げられます。そのため、一般的に妊娠前や妊娠中の女性には「フォリック・アシッド(合成葉酸)」のサプリメントが勧められています。
仕事を通じて徐々に明らかとなったことですが、GPも含めて「フォレート(葉酸)」のことを指しながらも「フォリック・アシッド(合成葉酸)」という名称を使っている人が多く(NHSでは特殊な場合以外、活性型葉酸のオプションがないことも理由の一つかもしれません)、さらに彼らは、妊娠準備や妊娠中の女性には万人共通で「フォリック・アシッド」のサプリメントは必須だとアドバイスしているようです。そのため、葉酸が何なのかよくわからないのに調べないままで、合成葉酸のサプリメントは必要不可欠だと思い込んでいる女性が圧倒的に多いことも、個人的には大きな問題だと感じています。これに関連して、活性型を使用していても原材料のリストに「folic acid/フォリック・アシッド(active/活性型)」と不思議な表記になっているサプリメントもいくつか見かけています。上記の理由により、消費者層が商品ラベルに「folic acid/フォリック・アシッド」を探して購入を求めるためなのでしょうが、サプリメント会社が知らないわけはないので、彼らも売上のために誤解の悪化に加担しているということになります。
一般向けの情報に欠けていると感じるのは、サプリメントで葉酸を摂取するなら、活性型葉酸の方が安全で機能的にも安定しているということです(5,23,24,25)。ただし、個人の状況に合わせた摂取量やタイミング等を適切に保つことが大切なポイントとなります。
誰かの役に立つかもしれないので、追加サポート情報もここに加えておきます。葉酸も含め、ビタミンB群は基本的にファミリーとしてお互い助け合って働くため(26)、仕事でクライアントの葉酸回路や一炭素代謝をサポートする必要がある場合には、一定期間(経過をチェックしながら、徐々にサプリメントによる摂取量を減らす方法で)葉酸も含めて活性型のビタミンBコンプレックスやマルチで、各個人の状況に合うものをお勧めしています。最初の部分に入れている代謝経路図には、代謝過程で必要とされる補酵素の表示はありませんが、葉酸回路ではビタミンB2、B3、B6、鉄、葉酸回路の隣にあるメチオニン回路ではB2、B3、B12、さらにはマグネシウムや亜鉛なども必要です(27)。活性型のBコンプレックスやマルチといっても、配分やフォーマットの異なるものが幅広くあるので、可能であれば添加物なしで、目的やターゲットに合うものを選ぶのが理想的です。
もちろん、合成葉酸のサプリメントでも大きな助けになる場合はありますが、前述のとおり、ここで問題となるのは人口の60%以上(か、総合して87%程度)が遺伝子レベルで、活性型葉酸の合成に多少なりとも問題を持っているということです。それに加えて、葉酸回路でもMTHFR以外の部分に問題が生じることもあります。それを知らないまま、合成葉酸を摂取し続けることは、健康を賭けたギャンブルになるかもしれません。例えば、妊婦で合成葉酸(フォリック・アシッド)のサプリメントを一日400μg程度で摂取している場合、食事による天然葉酸が加わり、小麦系の食品に含まれる天然葉酸プラス添加されている合成葉酸がさらなる上乗せとなると、過剰摂取に向かうスピードに加速がかかります。過剰になると、体は合成葉酸に対応しきれなくなり、血液中に未代謝の合成葉酸が増え始めます(2,5,14,15,16,17,18,25,28)。それが直接的もしくは間接的なリスクとなることが各種あるため、特に妊婦は胎児のためにも注意が必要だと思います。合成葉酸の添加された小麦食品を食べ続ける場合には、その摂取を低く保つために、もしサプリメントを使用するなら活性型に切り替え、食事による葉酸の大まかな総摂取量に合わせて、必要な時のみ活性型葉酸サプリメントで必要量を補充するよう調整してみてはいかがでしょうか。ただし、消化吸収力が落ちている場合には、摂取した分が最良の状態では吸収されない可能性が高いため、それを改善もしくはサポートしながら更なる調整を加えるのが理想的です。
比較的安価で簡単な遺伝子のテストにより、一炭素代謝に関係する各遺伝子多型の有無やどの程度で影響するかを知ることはできますが、不当な遺伝子データ売買をめぐる個人情報保護の問題が浮上している領域です。まずは、消化の状態を整えて日頃の食事から葉酸も含めて必要なら栄養素を摂取できるよう取り組んではいかがでしょうか。もし必要に迫られてテストを検討する際には、あらかじめ個人データ保護の安全を確認しておくようお勧めします。

カフェのおやつも、小麦中心。
妊娠には葉酸のサプリメントが必要?
ビタミンDなど理由の付随する栄養素や食事ではサポートできないこと以外、サプリメントには極力頼らないようにするのが理想的だと思います。なぜならば、通常食事から摂取できる栄養素の不足をサプリメントでサポートしても、それ自体が真の問題解決にはならないからです。何らかの理由で傾きや不調が生じている場合には、可能な限りその原因を探し当てて、原因自体に対処することが最善策だと思いませんか?食事のバランスやライフスタイルの見直しはもちろん、消化や腸の状態を整えて日頃の食事から十分な栄養素が摂取できていれば、特殊なケースでない限り体は正常に機能する方向に向かいます。
具体例を挙げると、まず第一に表面的に健康に見えた20代後半の女性のケースが思い当たります。IVFも2度試したけどうまくいかなかったため、IVF以外の方法を探したようです。ケースの分析と原因をチェックするためのテストで、不妊の原因はグルテン不耐性と腸内細菌のバランスの崩れらしいことが判明。集中的に腸内環境を整えるのに3ヶ月ほど要しましたが、その後すぐ妊娠し、安定した状態で妊娠6ヶ月目に入る頃まで一緒に取り組みました。これと大きく異なり、既に子どもが一人いる40代前半の女性のケースも記憶に鮮明です。当時、彼女は2人目の妊娠を望んでいたのですが、一年以上試しても実りがなく、何ができるのかを探してやってきました。問題の主な原因は、食事の偏りが関係して自律神経やホルモンのバランスが崩れていたことでした。不足と過剰のバランスを整え始めて、約半年後に妊娠。その後の経過も安定し、一人目の出産後に陥った鬱の症状も全くなく、母子ともに健康を維持しました。どちらの場合も、葉酸が問題の直接的な原因ではなかったため、(食事やライフスタイルの指導はしましたが)葉酸のサプリメントは使用していません。
誤解のないようクリアにしておきたいのですが、決してこの記事をとおして「小麦粉の合成葉酸添加やサプリメントは全面的に必要ない」ということを伝えたい訳ではありません。前述のとおり、葉酸は妊婦に限らずみんなにとって大切な栄養素の一つです。でも、ここで大切なのは、各個人に必要とされることは、必ずしも万人共通式に勧められている葉酸の(しかも合成の)サプリメントや食品への添加とは限らないということです。しかも、各種のリサーチでは、どう見ても合成葉酸の摂取では対応しきれない体質の人の方が多いというデータとなっています。各個人はそれぞれがユニークな単体であるため、英語でいわゆる”One size fits all(みんなにピッタリ合う共通サイズ)”式の考え方を適用して、問題解決に至るのはほぼ不可能だと感じています。実際の状況は結構複雑ですが、各個人にとって本当に必要とされるものやことを提供することが、健康の基礎部分にあるということもお忘れなく。
個人レベルで健康をサポートするには、「小麦の精製で取り除かれた栄養素は、安価な合成の栄養素で充填すればいい」という発想の枠から出てこの状況を見据えることが必要かもしれません。ファンクショナル・メディスン的な視点で状況を見渡した場合、なぜ合成葉酸を添加するに至るような状況になっているのか、ということ自体をまず問う必要があります。その原因は、一体何だと思いますか?
アップデート:牛のメタンガス削減目的で使われたボヴァー(Bovaer)
スコットランドから、安全やエシカル面を重視する人たちにとって朗報となる、アップデート情報が入っています(29)。10月8日付で公開されたスコットランド政府の統計によると、6,400以上登録されているスコティッシュ酪農業中、その後も牛の餌にボヴァーを使用しているのは、6,414の回答のうちたったの6件。また、メタンガス削減目的で使われている別の添加物シルヴエア(SilvAir)は、質問に回答した6,212件のうち、使用していると答えたのはたったの5件。別の質問に答えた6,462件の酪農業者のうち、アドバイザーが牛の飼料製造の際にメタンガス発生を考慮していると答えたのは約1割とのこと。スコットランドの牛が食べているのは、外で自由に食べる牧草が中心となっているため、定期的に一定量の添加物を与えるのは困難だということが明るみとなったようです。イングランドも、似たような状況であるといいのですが、どうでしょうね。
余談ですが、この号に関連して、ボヴァーの製造元であるDSM-firmenich(スイスが拠点)は、ヨーロッパに卸している合成葉酸の製造元でもあるようです(30)。単なる偶然でしょうか…。
(参照)
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