第12話「サイレント・ノイズ」

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minimalist


Chapter2.2
「サイレント・ノイズ」

  • 今日は何を着ていこうかなとタンスをあけたものの、服はあふれているのに着たいものがないか、見つからない。そのせいで支度に時間がかかったり、新しく買い物してしまう。
  • ショッピングが趣味、暇つぶしに買い物にいくことがある。
  • ごちゃごちゃしてきた自分の部屋をみて片付けに精を出すものの、数日後、数ヶ月後にはまた同じことを繰り返している。
  • 引っ越ししようとしたら、箱詰めの前に取捨選択しなくてはいけない持ち物が沢山あることに気づいてうんざり。
  • 突然の来客、部屋の散らかり具合に慌てる。
  • モノの置き場が足りない。

…身に覚え、ありませんか?

たいていの人は必要以上にモノを持っているもの。そしてそれらをあまり活用できていなかったり、好きでもないのに何となく持っていたりするというケースも多いのではないでしょうか。

プレゼントなどの頂き物、家族やパートナーのモノについては別に触れることにしますが、自分で増やしたモノが日々のプチ・トラブルを引き起こしている場合、いさぎよく処分してもいいはずなのに、高かったからもったいない/捨てるには忍びない/いつか使うときがくるかも/思い出・思い入れがあるから/万が一の場合に…そんな気持ちからずっと持っていたりするんですね。5年も10年も、ときには一生。

あ、「つべこべいわずに全部捨てちまえー!」というのを薦めている訳ではないので身構えないでくださいね(笑)。

先日BBCニュースをチェックしていたら、 英国人女性は年間平均59着の衣類を購入し、一度も着たことがない服が22着もクローゼットに眠っているという調査結果がトピックになっていました。1年は52週間ですから、週平均1着以上購入しているという計算になりますね。これにはびっくりです。

服に限らず溜め込んだものはモノは思い切って処分した方がすっきりするし、そうじや移動の手間&時間が省けるのはホント。でも処分したとしても、そもそもの原因()を意識していないと、いつの間にかリバウンド。ダイエットと似ています。

フィジカルな痛みは感じないかもしれませんが、こういう繰り返しって不毛だし、スペースや時間、お金、労力などの無駄も多いし(詳しくは前回コラムをみてね)、人によってはかなりのストレス源になっていることも。

「これで死ぬことはないけどぉ♪、なんか〜なんか〜よくないな〜♪」

という調子っぱずれのコーラスがアタマのななめ後ろあたりで、小さな音量だけど24時間エンエンと流れているようなもの。でもこれ、冗談ではないんです。

2012年にUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)で行われた研究で、モノとストレスの関係が科学的にも明らかになりました。 「うちの部屋、散らかっているでしょ」「ガレージを片付けたいと思っています」と他人に自分の部屋の状況を説明したり、自宅の散らかり具合を意識している時、体内のコルチゾール値がぐーんと増えているのだそう。(註)

コルチゾールといえばストレスホルモン。
免疫低下・老化・肥満・うつなどを引き起こすという、あまりうれしくない存在です。私たちがはっきり意識していなくても、モノはそこにあるだけでしっかり人体に影響を及ぼしているんですね。

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この無音のノイズ(←さっきのコーラスね)、意識していないだけに影響は大きそうです。環境によってイライラや鬱、怒りといったネガティブな形であらわれることもあれば、安心感や創造性、愛情といった形をとることもあるでしょう。

物質に限らず、感情や人間関係などの中からもいらないノイズを取ってあげると、うっとうしさが取れ身の回りだけじゃなく頭の中もすっきりしてくる。近年のシンプル・ライフ(ミニマリスト)人気は、単にビジュアル的なトレンドというだけでなく、こういったご利益もあるからこそなのです。

でも、実はこの先が肝心、と私は思っています。

このやかましいノイズを取り払った後、しばらくそっと耳を澄ましていると、おもしろいことに別の歌やおしゃべりが聞こえてくるんです…!
これについては近々、がっつり書いてみたいと思っています♪

〜〜〜〜〜

註/UCLAの調査について。この傾向は女性にとくに顕著に見られたそう。中流家庭を対象にした大規模な調査だったとのことですが、女性(=母親)が家事を担っている割合が高い、女性の方が「整理整頓できる人であるべき」といった社会的イメージを期待されやすい立場にあるということも関係あるのかもしれません。また、男性の方がモノや散らかり具合をそれほど重大事項ととらえないとか、モノを得ることにより征服感を感じるなど、男女でどのくらい差があるのかも気になりますね。

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About Author

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写真家&ライター。東京で広告制作・編集と撮影の仕事を経て2003年渡英。フリーランスで活動中のアーティスト。ロンドンをベースにアーティストや作家をモデルにした絵画的なテイストを持つポートレート制作などを行う。英国をベースとしたエキシビションを開催。日常系ミニマリズム研究家。「あぶそる〜とロンドン」編集長、江國まゆ氏と共に2018年に『ロンドンでしたい100のこと(自由国民社)』(執筆&撮影)、そして2020年には『レス・イズ・モア 夢見るミニマリストでいこう。』を出版。

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