Chapter 3.5
その「2割」を見つける
19世紀末のイタリアにヴィルフレド・パレートという経済学者がいました。鉄道技師から経済学の世界に進んだ彼は社会主義者としても知られ「2割の高額所得者のもとに社会全体の8割の富が集中し、残りの2割の富が8割の低所得者に分配されている」という法則を導き出したそう。つまり当時、資産の80%は20%の高額所得者が握っていたということ。現在では「パレートの法則」「80対20の法則」と呼ばれている理論です。
この法則は現在でもビジネスやマーケティングの世界で様々な形で引き合いに出されています。よく見かけるのは、
○売り上げの8割は全顧客の2割が生み出している
○商品売上げの8割は、全商品のうち2割(=ヒット商品・人気商品)が生み出している
○企業売上げの8割は、従業員の2割が生み出している
○仕事の成果の8割は、費やした時間の2割が生み出している
…といったもの。
100年以上も前に発見された法則ですが、現代のビジネス・シーンでも、この2割を見極めることが成功につながる…といった切り口で語られることの多い、なかなか面白いセオリーです。
この80対20の法則はビジネスだけでなく、ミニマリズムにも当てはまるのが面白いところ。比率に個人差はあるかもしれませんが、「大切なこと」と「そうでないこと」を明確にする、ということはどんなシーンでも大切ですよね。
例を挙げてみましょう。「自分の生活の8割を支えているのは、全所有物の2割である」とします。つまり自分の持ち物のうち常に使っているのは20%。残り80%は時々使う程度かさほど必要ないもの。これはパッキングパーティを実践された方には納得がいく数値ではないでしょうか。
もちろん残りの80%が全くの無駄ということではないけれど、大切な部分を押さえることができれば、残りは「取り替え可能」だし「なくてもそれほど困らない」ということ。
これを時間に当てはめてみるのもなかなか面白いです。「自分の生活の8割を支えているのは、活動時間の2割である」。ちょっとドキッとしますね。
質問①「何に一番時間を費やしていますか?」
質問②「何に一番時間を費やしたいですか?」
ほとんどの人はこの2つの質問の答えの間に大きなギャップがあります。たとえばのんびりしたい、好きなことしたい、家族ともっと過ごしたいけれど現実は仕事・家事・勉強で忙しい…といった具合です。
「時間がない」というフレーズは「お金がない」と共に、やりたいことができない理由のトップの常連です。
ここでもう2つ、大切な質問を挙げてみましょう。
質問A「自分の生活の中で、何をしている時間が自分の望みや幸せを運んできてくれていますか?」
質問B「自分の生活の中で、どの時間が悩みやトラブルの原因になっていますか?」
それぞれ3つぐらいずつ例を挙げてみてください。ちょっと難しいかもしれませんが、質問Aの答えを見つけることができたなら、残りの時間は入れ替えても幸せには基本的に影響がないということ。質問Bの答えが分かれば、その改善策を打ったりその部分をスッパリ削除したりすることができるはずです。
時間は皆に平等に与えられているけれど、どうやって使うかでその意味はずいぶんと変わってくるもの。もしかしたら「時間がない」という悩みは、やらなくてもいいことやどうでもいいことに振り回されているせいなのかもしれません。
あなたが優先したいことは何ですか?