マイ・ポッシュ・ドッグ:英国のグルーミング事情

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2ヶ月に一度やってくる、うちの犬・マーゴの受難。
それは何かといいますと・・・

グルーミングです。

うちのマーゴは、今から約7年前、彼女が2歳だった時に、事情により飼えなくなったよその家から引き取りました。

引き取った時のマーゴは、見た目がかなりもじゃもじゃな感じで、まさに白黒のテディベア。ずーっと抱っこしていたくなる愛らしさでした。

Lee (夫) もヨシエも犬飼い家族の出身で、毛が抜けるタイプの犬たちとの暮らしがどんなものかよーく知っているので、今回はイギリスで自分たちの住んでいる家のサイズや、当時は1階がすべてカーペット敷きだったことなどを考慮して、毛が抜けないタイプの小型犬を探したのです。

そうして、ご縁でマーゴに出会えて、ハッピー♪

しかし、たったひとつ考慮していなかったのが、この、グルーミングのことでした。

引き取った後に、うちの町の獣医さんにマーゴを連れていき、かんたんな健康診断と、マイクロチップの情報確認などをしてもらった時のこと。
(2023年現時点のイギリスでは、マイクロチップは生後8週目までに犬の皮膚に挿入することが義務付けられています。IDとして、犬の身元情報の確認や飼い主の特定などができます。ちなみに、イギリス政府のウェブサイトを見ると、イングランドでは2024年6月から、猫も生後20週目までにマイクロチップを挿入することが義務となるそうです)

獣医さんが健康診断で問題のなかったマーゴをもじゃもじゃとなでながら、
「あ、そうそう、この犬種(シーズーとビションフリーゼのMIX)って、定期的なグルーミングが必要だからね」
と言ったのが、マーゴの受難の始まりとなりました。

それは、元・飼い主さんに聞いていなかった!
というか多分、元・飼い主さんも、一度もマーゴをグルーミングに連れて行ったことがないのでは・・・。

ともかくそれで、さっそくドッグ・グルーマー(犬の美容師)さん探しをはじめ、犬を飼っている友人知人に聞いたおすすめをあたってみること、数回。

小型バンに犬用の浴槽やシャワーを搭載して、自宅まで来てくれて、その場でシャンプーとカットをしてくれるグルーマーさんは、便利で良かったのですが、マーゴの耳からしっぽまで全身の毛を豪快にカットしてくれたため、なんだかちょっと骨犬・・・っぽく、さみしげな姿になってしまったマーゴ。(そのグルーマ-さんがたまたまそういうカットの仕方だっただけなのですが・・・)

なので、次のグルーミングのために、町で人気のグルーミングサロンを見に行ってみました。

小さな、でもなんだかとっても高級感を感じるサロン内では、
「これから、ショーに出てくるわ」
みたいな風貌に仕上がったプードルが、グルーミング台の上でドライヤーを当てられているところでした。

「わー、素敵!ここでぜひ、マーゴもお願いしてみたい!」
と思ったのですが、なにせ人気のグルーマーさんで、しかもひとりで経営しているので、予約の空きがまったくないという答えで、残念。

その後も、お願いしたいけど予約がいっぱいだったり、素敵そうだけどお値段が高すぎるように思えたり。

なんだかんだで探し続け、ついに巡り合えたのが、レイチェルです。

グルーマーの学校で学んで資格を取り、自宅の庭の車庫を改装して、そこでグルーミングサロンをやっている彼女。グルーマーだけでなく、自宅で飼っている3匹の血統書付きの犬のブリーダー業もしているそうです。

さっそく、はじめてレイチェルのサロンへ向かった日。

小型バンのグルーミングの経験からなのか、空気中に漂うサロン的な匂いを嗅ぎ取ったのか。
何かを察知したマーゴは、近くに路上駐車してサロンへと向かう、その途中から歩みを止め、ぶるぶると震え出しました。

大丈夫かな・・・と思いつつ、抱っこして歩くヨシエの腕の中で、サロンが近づくにつれて、気の毒になるほどに震えが増していくマーゴ。
温泉浴場を出た廊下などによくある、電動足裏マッサージ器を思わせるような、ぶるぶる度です。

でもレイチェルさんは、さすがプロ。
「来るほかの犬たちも、こんな感じになること、多いのよ。
でも、大丈夫、大丈夫。グッド・ガール!
じゃ、わたし預かるわ」
と、てきぱきとマーゴを受け取り、
「じゃ、だいたい一時間後くらいにね。終わったらメールするわ。バーイ!」
と、サロンのドアの中へ消えていきました。

そして、約一時間後。

サロンのドアが開くと、そこには、見たことのない美しい犬が!

絶妙な長さにカットされた毛。
それにより、いつもは隠れていた、くりくりの丸い瞳と長いまつ毛が現れて、星空をも魅了する輝き。
耳と、マズル(鼻口まわり)と、しっぽの長さはきれいに残され、ドライヤーで丁寧にブラッシングされて、ふわっふわ。
長く伸びていた爪や、臭っていたおしりも、すっかりきれいに。
そして、全身からはむんむんと漂う、レイチェルのこだわりシャンプーのフレグランスの残り香。

一刻も早く逃げ去りたくて暴れるマーゴを腕に抱え、レイチェルさんにお礼とともにお代を払い、彼女のアドバイスにより2ヶ月に一度の定期予約を取ることにして、家へ帰りました。

もじゃもじゃしていた時より、動きも機敏になった感のあるマーゴは、家に着くなりストレス発散で家中を駆け回っていました。

そしてその日は、帰宅したアラン家全員が、マーゴの高級感ぶりに大笑い。
携帯電話がポッシュ・マーゴの写真で埋まったのも、いうまでもありません。

というわけで、それ以来、2ヶ月に一度の恒例となった、レイチェルのサロンへの旅。
車で向かう途中から、電動足裏マッサージ器もいまや負けを認めるほどのぶるぶるとともに、受難に備えるマーゴなのでした。
がんばれ、マーゴ!

余談ですが・・・
ヨシエのお散歩メンバーにも、グルーミングに行く犬たちがいます。
その中で、唯一、バングル(ハンガリー産の牧羊犬種・プーミー)だけは怖がりでグルーマーさんを噛んでしまうため、サロンに連れていくことができず、飼い主夫婦が数ヶ月に一度、力をあわせて自宅でバリカン・カットをしています。

もつれた毛糸玉のようにもじゃもじゃなバングルが、時々魔法にかけられたように、スリムで目力の強い美女犬に変身して、ドアでお出迎えしてくれるのですが、「カット中、そうとう暴れたんだろうな・・・」と思うような、ところどころまだらな長さやバリカン傷の残るその姿はかなりファンキーで、痛々しいけれど可愛くて、ついつい毎回笑ってしまうのでした。

これはチャコール画でじゃもじゃマーゴと遊んだ時にできた作品。マーゴ雲です。

ヨシエのインスタグラムのストーリーズ、またはそのアーカイブで、マーゴのグルーミングのビフォー & アフターに会えるかも?!探してみてね♪)

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About Author

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1979年、福島県生まれ。漫画描きやDIY、動物のお世話を楽しむ子ども時代を経て、日本大学獣医学科在学中に進路を変え、ESMOD JAPON東京校でファッションデザインを専攻。 アパレル業界に勤務後、2006年より東京を拠点にイラストレーター・コラージュ作家「ヨシエ」 の名で作品の発表をはじめる。 絵本「世界にたった2人の仕立てやさん」の雑誌 Spoon. への掲載以来、書籍イラスト、広告・展示・イベントのコラージュや布ハギレの立体作品、ファッション・インテリア柄デザイン、オーダーメイドのアートワークなどを数多く手がける。 2014年から、アーティストの Sarah Bellisarioと組んだデュオ ‘Sas and Yosh’ でのデザインも担当しており、商業・病院施設などの壁画、書籍挿絵や柄デザインなど、デジタルイラストレーションをイギリス国内外へ発信している。 近年は、自然からインスパイアされた光と影のコントラストの中に自分なりの人生哲学を織りまぜ、それをペインティングやドローイング、切り絵や色とりどりの素材ハギレ、柄で表現することに興味があり、色と素材と遊びながら模索中。 ロンドン郊外の小さな歴史ある町に家族と暮らして10年以上になる現在、愛犬マーゴをきっかけにはじめたドッグウォーカーとペットポートレート制作もライフワークに加わり、笑いと発見の溢れるリズミカルな毎日を楽しんでいる。 著書絵本は「ヨシエフォンデュ」(角川書店)、「ポンポルトンタン」 (祥伝社)、「ツキミモザ」「ギイドロとマレンカレン」(Skyfish Graphix)、「ハッピーイースター」 (くもん出版) 他。

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