元スーパーモデル、セリア・ハモンドの偉業

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日本では、本日2月22日はニャン・ニャン・ニャンで猫の日なんだそうですね(欧米では10月29日になってます)。猫チャリティに寄付したり、ホームレスの猫を引き取るにはうってつけの日です。おうちでは、飼い猫に好物のおやつを余分にあげたりとか、おもちゃを買ってあげたりとか、飼い主的には猫の柄の服とかアクセサリーを身に着けるとか……? なにはともあれ、いつも以上に猫たちを甘やかしていい日ってことで、猫の日万歳!

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さて、私たちにタムタムとラミーを紹介してくれたCelia Hammond Animal Trustは、その名からも分かるとおり、セリア・ハモンドという一人の女性が創設したアニマル・レスキュー・センターです。

ここでも触れましたが、Canning Townブランチで私たちは幸運にもセリアさんご本人にお会いすることができました。その時は、子猫を選ぶにあたって創設者ご本人に対応してもらうことになるとは思っていなかったので、お会いできたことが単純に嬉しかったのですが、後になって、彼女が実はかつてスーパーモデルだったことを知り、二度ビックリしたのでした。

ホームページの記事によれば、セリアは60年代にスーパーモデルとして活躍、Vogue誌の表紙を何度も飾り、撮影で世界中を飛び回る多忙の身だったそうです。ティーンエイジャーの頃にすでに倫理的な理由からベジタリアンになっていた彼女ですが、皮肉にもモデルとして毛皮を身にまとう機会が数多くありました。

しかしカナダのアザラシ猟の映像をテレビで見て衝撃を受けたことをきっかけに、Beauty Without Cruelty(アニマル・プロダクツを一切使用しない、イギリスのヴィーガン化粧品会社)の依頼を受けて、偵察のためにカナダ南東部のセントローレンス湾へ赴きます。そこであまりにも残酷なアザラシ猟の事実を目の当たりにした彼女は、以後、毛皮を絶対身に着けないと心に誓い、他のトップモデルたちにも毛皮をプロモーションしないよう説得するとともに、モデルとしての自らのキャリアと知名度を生かして、毛皮貿易、工場式畜産、動物生体解剖をはじめ、あらゆる動物虐待行為に反対するキャンペーンを展開するようになります。

60年代の半ば頃から、野良猫や野良犬、捨てられたペットなどを保護して去勢手術を施し、里親を探すといった活動に携わるようになったセリアは、野良猫の捕獲方法を習得し、工夫を凝らして独自の捕獲器具を開発しました。そして自ら捕獲作業を行い、去勢手術を施した後、適した環境へ再び戻してあげるという作業を、実に数多くの野良猫に対して施しました。

野良猫を捕らえたら安楽死させるしか方法がなかった当時のこと、地方自治体や病院、環境保健部などと何度も衝突することがあったようですが、人々の野良猫に対する見方を「人間に害をもたらす動物」から「人間が世話をする価値のある動物」にまで高め、殺すのではなく、去勢することで出生率をコントロールできるということを示して、理解を得ることに成功したのです。

さらに、都市化が進んで新しい建物や道路の建設および取り壊しが増え、棲むところを奪われた野良猫たちのために、イースト・サセックスのHastings近郊にキャット・サンクチュアリーを開設しました。キャット・サンクチュアリーとは、病気や障害、高齢などさまざまな理由で里親が見つけられない、見つけにくい猫たちを、広々とした敷地で主にボランティアが世話している、いわゆる猫の楽園です。

こうした献身的かつ草分け的な活動が認められ、セリアは1982年にRSPCA (英国動物虐待防止協会)から表彰されました。70年代初め、モデルのキャリアをすっぱり捨てて、動物関連の福祉活動に専念することに決めた彼女は、その後15年間、野良猫をはじめとする動物たちの保護&里親探しに身を捧げます。

とにもかくにも膨大な数の野良猫の繁殖が問題であると考えていた彼女は、カナダやアメリカの成功例を参考に、低料金で去勢手術を提供することが、ここ英国で望まれない動物たちの数を増やすのを防ぐのに最も効果的な手段であると信じていました。こうした考え方があまり一般的ではなかった当時、セリアは自ら行動を起こすことを決断。そして1986年、去勢手術とワクチン接種を提供するクリニックを開設することを主な目的として、Celia Hammond Animal Trust を創設します。

以後、精力的な募金活動を行い、ついに1995年10月、Lewishamに初のクリニックを開設。まもなくして毎週平均、犬50匹、猫100匹の去勢手術を行うようになります。1999年には2つめのクリニックをCanning Townにオープンさせ(私たちが訪ねたところですね)、こちらもすぐにLewishamクリニック同様の数の犬猫の去勢手術を請け負うようになりました。現在どちらのクリニックも、基本的に24時間体勢(緊急時対応)でレスキュー活動を行っています。また一般的な獣医サービスも、生活保護を受けている人や、正規の治療代を払うことが難しい低所得者に対してのみ低料金で提供しているそうです。そして60エーカーの敷地をもつサセックスのキャット・サンクチュアリーには、里親募集中の猫も含め、常時300匹ほどがのびのびと暮らしています。

2004年、セリアは、まさに生涯をかけた動物福祉への奉仕の精神が認められ、RSPCA創業者の名を冠した最も栄誉ある賞、リチャード・マーティン・アワードを受賞しました。セリアは今も一日平均18時間、ほぼ毎日休むことなく働いているそうです。まさにスーパーウーマン。メールの返信が来るのがいつも深夜の時間帯だったりしたのも、今となっては納得、脱帽です。そんな中、面と向かってお会いできたなんて本当にラッキーだったなあと、しみじみ思います。

Celia Hammond Animal Trustは、野良猫たちに対して、どうにも手の施しようのない末期症状で苦しんでいる場合を除き、殺処分は絶対に行わないというポリシーを掲げています。また、SNSなどでよく掲げているスローガン、というかタグラインに「Adopt Don’t Shop (買わずに里親として引き取ろう)」というのがあります。日本では犬や猫を飼うとなったら、ペットショップやブリーダーから買いとるのが主流かと思いますが(私も子どもの時以来ペットは飼っていませんでしたが、日本で飼うとしたらペットショップとかに行っていたと思う)、こちらでは、私の知る限り、レスキューセンターから引き取っている人たちが大半だと思います。それだけこうしたアニマル・レスキューセンターがいくつも存在し、その活動が幅広く認知されているということなんだろうなと思います。

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About Author

旅行誌や情報誌、広告等の編集&ライターの仕事を経て2005年に渡英、デヴォン州に約9ヵ月、ロンドンに約4年滞在。2008年頃からベースを弾き始め、バンド活動を開始。2010年より東京—ロンドンを行き来し、2014年に結婚を機に拠点をロンドンに移す。現在は主に翻訳ローカライゼーションの仕事をしながら、DIYパンク/インディポップ/ガレージポップ系の複数のバンドで活動中。 Etsy shopオープン中です:https://www.etsy.com/uk/shop/TubbingRummy

1件のコメント

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    素晴らしいお話!!とても感銘を受けました。ありがとう!!
    日本にもこういうボランティア/チャリティ団体ができるとよいな・・・

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