Enoteca Turi エノテカ・ツゥリ
イギリスではロックダウンの段階的な緩和が発表されましたが、飲食店が本格的に営業再開できるのは7月くらいからの見込み。それまで6月くらいから野外スペースのあるカフェなどが店舗営業を再開できるかも? という状況です。
飲食店にとっては未曾有の危機ですよね。専門家のアドバイスから持ち帰りやデリバリーへの移行を選択しないレストランもありますが、ビジネスが停止している以上、再開後の先行きは不透明で、なんらかのアクションを起こさなければならない・・・! という空気が、5月に入った頃からグンと濃くなっています。ロックダウン直後からずっと店を閉めていたカフェが、持ち帰りをメインに営業を再開し始めたのも、この頃です。
こちらの記事で飲食店のサバイバル方法について書きましたが、どの方法をとるにしても顧客の支持・サポートがなければ成り立たないものですよね。中でも、お客さんとの信頼関係が直に反映されるのが、バウチャー作戦です!
バウチャー作戦をとっているのは、クオリティを謳っている高級・準高級レストランが多いようです。バウチャーは営業再開後に利用することが大前提なので、いわばそのレストランへの直接のサポートであり、支持表明であるわけです。「あなたのレストラン、大好きだから応援してるよ!」と。
南西ロンドンのPutney Bridgeで30年前に創業し、2016年から高級住宅エリアとして知られるベルグレイヴィアに移動して家族営業を続けるエノテカ・トゥリは、まさにそんなレストランの代表格。ずっと臨時休業していたのですが、存続の危機から4月末になってバウチャー発行の形で5万ポンド(約650万円)を目標に寄付を募ると・・・18日間で167人が寄付購入し、4万4000ポンドが集まりました!(驚)
4万4000ポンドが集まったのは、ロンドンの富裕層が住むエリアにあるから、という理由だけではないと思います。どれだけローカルたちに愛されているか。味やサービスなど、いかにトータルに愛される理由をつちかい、それを維持してきたか。そして地元以外から来るお客さんにどれだけアピールする実力を持っているか。リピートしたいと思わせる訴求力、なくなってほしくないと思ってもらえる魅力・・・
エノテカ・トゥリは、マスターソムリエのジョゼッぺ・トゥリさんと奥様のパメラさんの二人三脚で営業を続けるイタリアン・レストランで、シェフのマッシモさんが創業直後から味のクオリティをコントロール。マネージャーさんも長年勤めておられる方で、本当に家族が一丸となって取り組んでいる独立店なのです。
センスの良い落ち着けるインテリアと心地よいサービス、丁寧に調理される正統派イタリア料理。まさにベルグレイヴィアに住む保守層に支持される要素をたくさん備えていますね ^^ 後はロンドンにおけるイタリアン・コミュニティの結束の固さのようなものもあるのかな?
ロックダウンの結果、残念ながら永久閉店してしまうお店も出てくると思います。もしかすると、よく知られた高級店などの名前を目にすることになるのかもしれません。それはとても残念なことですが、本来の飲食店が持つ役割=記念日利用を含め手がとどくお値段で美味しい食事を提供し、コミュニティの役に立つことができているかどうかも、運命の分かれ道なのかもしれません・・・。夏以降、ロンドンに数あるレストランの虚像と実像が明らかになってくるのかも。
Enoteca Turiは、拙ロンドン・ガイド『歩いてまわる小さなロンドン』の9刷でも、新規に入れ替えたお店の一つです^^ ぜひロックダウンが解けたら、お祝いに訪問してみてください♡