
8月も中旬を過ぎ、私が毎年楽しみにしている「ホップ」の開花シーズンがやってきました。
え?ホップって、あのホップ? そう、ビールの香りや苦味に欠かせない原料として使われている、あのホップです。

ビールの原料に欠かせないホップ
ホップ Hops
学名:Humulus lupulus
アサ科の蔓性多年草
和名はセイヨウカラハナソウ(西洋唐花草)
<英国産ホップ>
英国内のホップ生産は、ケント、サフォーク、サリー、サセックスといった南東部で始まりました。英国ホップ協会(https://www.britishhops.org.uk/)によると、現在英国内でホップを栽培している農家はわずか50軒ほど。
国産ホップの半分は、ウェスト・ミッドランズの農家、もう半分が南東部の農家によって生産されています。
これらの地方では、ドライブ中などにホップ畑を見かけたり、最近はその多くが使用されなくなりましたが、オースハウス(Oast house)またはホップキルン(Hop kiln)と呼ばれる、ホップを乾燥(キルニング)するために設計された建物を見かける場合もあるかもしれませんね。
ホップの品種は、英国ではターゲット、アドミラルなど含め、商業的に34種類が栽培されているとの事です。日本でもIBUKIや信州早生など、日本生まれのホップがあります。

オースハウス(Oast house)こちらは今は他の目的で使われているとのこと
<商用栽培は雌株だけ>
ホップは雌雄異株で、受粉すると香りと苦味の成分である黄色い粒状の樹脂ルプリンの品質が落ちるので、通常は雌株しか商用栽培されていません。

雌花と雄花
筆者が住んでいる地域(サリー州)の散歩道でも、毎年ホップの姿を見かけます。主にキッチンの飾り付けやハーブティー用にと、収穫を楽しみにしています。
ホップは一度根付くと15~20年は生き延びる植物なので、いつからこの地域に生息しているのかは分かりません。近くにオースハウスも見られませんし、雌と雄の株が見られるので、種ができて発芽して増えていったのかもしれません。

木の枝に絡まりながら成長し続け、9月中旬ごろにはホップの毱花が見られます。
<香りと苦味成分のルプリン>
雌花は、開花直後は毛花(けばな)と呼ばれる形状ですが、苞(ほう)が伸びてきて松かさ状に重なり、毱花(きゅうか)の形になります。

毛花から毱花への成長過程中
そして、この苞の内外の根元に、前述した「ルプリン(lupulin)」と呼ばれる黄色の粒が分泌されます。このルプリンには、苦味物質の他、ホップの品種によって成分や含有量等は異なりますが、香り成分である精油も含まれています。

成熟した毱花をパコーンと切ってみると黄色い粒々「ルプリン」が見えます
含まれる精油の成分一例:
《テルペン類》ミルセン、フムレン、カリフォレン等
《テルペンアルコール類》リナロール、ゲラニオール等

同じ道に育っているホップの毱花でも、株によってもかなり香りが異なります
ホップは品種によっても含まれる精油の種類や含有量が異なるため、柑橘系や松、ウッディーやスパイス、フローラルなど、さまざまな香りを楽しむことができます。
ホップ毱花から水蒸気蒸留法で抽出される精油は、アロマセラピーのマッサージなどで使われることはまれですが、一部の専門店(主にネットショップ)で精油(エッセンシャルオイル)として見かけることもあります。

私も一度だけ商品開発の一環でホップの精油を数社から購入した事があります。
<薬用として>
ホップ毱花は、薬用としても古くから使われてきました。鎮静・鎮痛・催眠・苦味健胃・利尿作用等があり、不安や神経が高まったときの緊張やイライラ感、神経の高ぶりから起こる不眠などに効果的です。また、鎮静作用と健胃作用にも優れているため、神経性の胃痛や胃けいれん、IBS(過敏性腸症候群)といった症状にも効果的です。
ただ、ハーブティーとして飲む場合、使うホップによっては非常に苦く(その苦さが薬効の一つなのですが)、慣れないうちは飲みにくさがあるので、私は苦味をすべて消さない程度にラベンダーやジャーマンカモミールなどのハーブをブレンドして少し飲みやすくして利用します。
また、ホップは英国でも日本でも苗から購入することができます。9月中旬にホップの毱花を見かけることがあれば、ぜひその香り(少し苦いですが)と味を楽しんでみてくださいませ。

ハーブを実際にご自身でも使ってみたいと思われるか方は、拙著もご覧になってみてくださいね。
『メディカルハーブハンドブック』(説話社)
https://www.setsuwa.co.jp/publishingDetail.php?pKey=50
