日本に一時帰国した際、とても不思議な体験をした。
東京在住の友人が車で日帰りの旅に連れていってくれるというので、どこか元気になれる場所がいいなぁと思い、パワースポットについて軽くリサーチをしてみた。数ある名所の中から、私は直感で奥多摩にある「払沢の滝」という場所を選んだ。
「払沢の滝」(ほっさわのたき)というのは東京の人には知られているらしいが、関西出身者には馴染みのない場所だ。緑したたる秋川渓谷の近く、檜原村というのどかなヴィレッジの中にあるパワースポットなのである。
檜原村の駐車場に到着。払沢の滝まで、山道を10分ほど歩く。平日の昼間だったこともあり、すれ違う人はまばら。二組ほどに「こんにちは」と挨拶をしただろうか。
初夏の森はマイナスイオンが充満し、心がのんのんのんと緩んでくる。眼下のせせらぎに清涼感を感じながらしばらく奥へと歩を進めると、山道の果てに美しい滝が姿を現した。
全長六十メートルという滝の清れつさに目を奪われつつ進んでいく。そのすぐ近く、二人が通れるかどうかという細い道で、前方から滝を見終わって戻って来る女性とすれ違った。お互いに「こんにちは」と声をかけあってふと顔を上げたとき、「この人、知ってる!」と直感し、記憶の糸を素早く辿った。そうだ、確か雑誌でも活躍されている手相観の日笠雅水さんだ。
「すみません、手相を観ていらっしゃる日笠さんですよね?」と思わず声をおかけすると、にっこりとした笑顔とともに、「そうです!」とのご返事が。「私、二十年前に観ていただいたことがあるんです!」と、こちらも元気よく答える。
「あら〜!」という歓声とともに、しばし歓談。なんだか楽しい雰囲気になってきたところで、日笠さんが「私、あちらに座っていますので、どうぞ滝を観ていらしてください」と言ってくださり、ひとまず滝を拝むことにした。
そこは清明な静けさに満ちていた。
しぶきをあげながら落ちて行く滝の流れが周囲をたえまなく浄化し、一瞬一瞬をあまねくゼロにリセットしているようだった。そこに居る者は、否応なくゼロに立ち返らざるをえない。魂の源がそこにあった。
* * * * * * *
充電を完了して日笠さんが森林浴をしていらっしゃるところに戻り、ご挨拶代わりに名刺をお渡しした。私の名刺は片面に自分で撮影した写真を印刷してあるのだが、その中からこれまた直感で猫の写真を選んでお渡しすると、「あら! 可愛い猫ちゃん! 私も猫が大好きで・・・」と、携帯の待ち受け画面を見せてくださった。
この時点で「びびっ」と来た。というのも、ここに連れてきてくれた友人は猫の救済活動をしている人だったので、日笠さんに改めて紹介させていただいた。すると二人には幾人か共通の知り合いがいることが分かり、しばし猫ネタで盛り上がったのだ。
森の樹々と神聖な滝に見守られ、私たちはお互いの縁を歓び合った。そのとき、その世界にいたのは、わたしたち三人だけだった。
ほどよく空気が和んだところで「眺めのいいカフェを友人に教えてもらったんですが、ご一緒にいかが?」と日笠さんが誘ってくださったので、ぜひ、とお供させていただいた。
このカフェは素っ気ない檜原村役場の中にあるのだが、これが超穴場。一筋の清流を見下ろす高みにあり、素晴らしく落ち着けるくつろぎカフェなのだった。ここで日笠さんと私が同じ岡山県倉敷市出身で、日笠さんの実家が私の通った高校のすぐ近くにあるなど(!)さらなる発見が重なり、私たちはすっかり意気投合してしまった。
その後、一緒に清流に触れられる淵まで降りて行き、しばし夢のような時を遊んだ。
聞くと日笠さんは、本当は前日にココを訪れるはずだったのが、調子が悪く次の日に繰り越したのだとか。私はロンドンからの一時帰国中に突然決めた遠足だ。この日、この時間、奥多摩の払沢の滝を訪れなければ、私たち三人はこんな形で出会わなかった。人のご縁というのは、つくづく不思議なものだと思う出来事であった。
「どうしてきょう、ここで、出会ったんだろう?」
考えれば考えるほど、ますます不思議感覚に陥っていく・・・そしてワクワクしてくる ^^
そんなスペシャルな出会い。
私たちはそれぞれの思いを胸に抱いて、檜原村を後にした。
1件のコメント
コメント欄に追記を☆私はもともと手相に興味があって、日笠雅水さんの手相観のファンなんです ^^ だから、私にとってはもっとスペシャルだったんですよね〜♪ あぁ、今考えてもふしぎ・・・