Redemption Covent Garden リデンプション コヴェント・ガーデン
ロンドンにおける現代的なヴィーガン・レストランの先駆け的な存在はいくつかあると思うのですが、間違いなくその一翼を担ってきたのが、本日ご紹介するRedemptionです。
もともとロンドンには菜食主義の人口が多く、ベジタリアン・フレンドリーなカフェも他都市に比べて多めでしたが、一切の動物性食品を摂らないヴィーガンのコンセプトが流行り始めた7、8年前から、これまでとは違う新世代レストランが出現し始めました。
それまではヴィーガン料理というとジューシーな美味しさとはかけ離れた健康主義一辺倒で、「味」を犠牲にしているなんて言われていて、厳格さも手伝って少し敬遠されがちでした。そんな風潮に大きな「NO」を突きつけたのが、若い世代へ向けたお洒落ヴィーガン料理店。今回ご紹介するリデンプション・バーのようなポップにヴィーガンやノンアルをアピールする軽いノリのお店が増えてきました。
リデンプション・バーはもともと西のノッティング・ヒルで2014年に産声をあげ、2016年にショーディッチ支店、そして2018年のコヴェント・ガーデン旗艦店オープンへと順調に拡大してきました。
面白いのはヴィーガンだけでなく「グルテン・フリー」「白砂糖不使用」「アルコール・フリー」など、その頃から注目されてきた食のキーワードを全て取り入れているところです。創業者はもともとヴァージン・グループに勤めていたキャサリン・サルウェイさん。ヴァージンと言えば奔放でユニークな企業文化で知られる英企業。そこでブランド・ディレクターまで務めた彼女ならではの力強いコンセプト作りが項を奏したのでしょうか。先見の明があったとも言えるのかもしれません。
ただリデンプションは独立系ブランドだけにこれまで2度の経営危機に見舞われていて、その度に、そのコンセプトの素晴らしさを買われて復活しています。今回のコロナ機による危機も、別の会社による投資とコンサルによって救われたようです^^
興味深い偶然なのですが、今では毎年1月になると何十万という人が参加する禁肉月間「ヴィーガニュアリー」がイギリスから始まったのも、リデンプションの創業年と同じ2014年です。今年1月には世界中の58万人を巻き込んでヴィーガン・ライフスタイルの推進に貢献した一大ムーブメントなのですが、その発展の背景には、イギリスにおける(もちろん世界も巻き込んだ)ヴィーガン人口の増加があります。
複数の調査会社によるデータ分析によると、昨今におけるイギリスのヴィーガン市場の主要なターゲット層は、18歳から23歳のZ世代と言われています。彼らは環境問題への関心が非常に高い層で、中でもダントツで高い関心を示しているのが “18歳” という調査結果もあります。そして、そのうち約8割が環境問題を真剣に捉え、4分の1がすでに肉を食べないそうですよ。コロナをきっかけに健康に目覚め、ヴィーガンに興味を持ったという20代後半から30代と併せると、これからイギリスはますます「ヴィーガン社会」になっていくわけです。
どうしてティーンたちがヴィーガン化しているのか。それはおそらく、グレタ・トゥーンベリさんのような新世代の環境リーダーが引っ張っている部分が多いのかなという気がしています。少なくともきっかけにはなっているのかと。反対に中高年層は健康への配慮からヴィーガニズムに注目しています。また他国よりも強くイギリスに定着している伝統的な志向として「動物愛護」があることも否めません。
こういうデータを目にすると、英国のスーパーの棚にヴィーガン商品が急激に増えているのも至極納得です。ヴィーガンでない私もたまに試してみたりするのですが、市販品は明らかにまだ試行錯誤の余地ありですが^^; こちらのリデンプション・バーのようにレストラン市場の成熟は侮れないものがあります。ここはとにかく味もコンセプトも大成功していますから。
コロナを機に新しいビジネスを始めるとしたら、私ならヴィーガン食品の開発にチャンスがあると見ますね。ターゲットはもちろんカジュアルな若年層です。現に環境問題=ナチュラルというイメージを打ち砕く、オルタナティブ系のブランドが数多く誕生しているのも近頃の市場特徴なのではないでしょうか。イギリスのシェフってカジュアルにイレズミをしている人が多いんですけど、そういう層とガッツリ重なると思います。
この傾向はロンドンだけでなく、すでに世界の都市部に当てはまっていることを考えると、今後はミートよりもベジ、という世界になっていくのかなぁと・・・。そんなことをうっすらと考える今日この頃なのです。
ちなみにヴィーガンって栄養に偏りが出てしまうのでは? と考えるあなたは、肉や魚を断つことはオススメしません^^ 動物タンパク食の良さがあるからこそ、これまで人類は肉や魚を食べてきたのですから。でもタンパク源は、実は様々な野菜から十分に摂取することが可能なはずなのです。まだ人類はその方法の開発に至っていない、そういう感じがしています。
例えばクオーンというマイコプロテインを利用したヴィーガン食品がありますが、これは大豆タンパクに頼らない新たなヴィーガンの可能性を示しています。しかし、味という観点からはまだまだ開発途上のような気がしてなりませんし^^; もっと別の代替タンパク源も今後出てくる可能性がありますよね。代替肉を嫌う人もいますけれど、ヴィーガンへの移行がスムーズに進むまでは、肉も魚も歓迎されるべきだと思います。
ただし昔のように魚を含めて動物タンパクが完全に安全だという保証も、もうどこにもありません。動物たちはホルモン注射を受けて肉の品質に影響が出ていますし、魚介類は海洋汚染から明らかに影響を受けています。ということは、動物の福祉を考えた昔ながらの手法で生産している小規模生産者へも、今後さらに注目していきたいところです。
最近ではときどきベジタリアンになる「フレキシタリアン」の人も増えていますよね ^^ 食の多様性は今後ますます加速化しそうです。