日本のアートをもっと! 極北から現代までElectric Japanが担うもの

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今日のロンドンは30度超え! 金曜日ですし、 もう誰も働く気力なしw  お天気の日は屋内がガラガラになるロンドンです。

さて、5月から6月にかけて、ノッティング・ヒルのThe Coronet Theatreで日本の現代アートを紹介する芸術祭「Electric Japan 2022」が開催されました(一部展示は明日土曜日まで)。

期間中は新旧の才能が入り乱れ、シアター・パフォーマンスのほか写真やファッションの展示が美しいヴィクトリア朝時代のシアターに精彩を与え、訪れる大勢の人たちに感動をもたらしました^^

私もいくつかの演目や展示を拝見する光栄を得て、刺激的な1ヵ月でした。その一部はこちらでも書いています。

シアターのエントランスを飾る、ファッション・デザイナーのケイ・カガミさんの作品。一目惚れしました^^

丸いシアターは、中に入っても丸い円を描いています。とっても趣ある回廊。

日本国内で目覚ましい活動をしているアーティストの皆さんを英国に紹介する芸術祭「Electric Japan」は、今年初めての試み。今後、定期開催を目指し、日本文化紹介のプラットフォームにしていく予定だそうです!毎回どんな皆さんが選ばれるのか、これから楽しみなのであります。第一線で活躍する日本人アーティストの作品に定期的に触れることができるなんて、本当に素晴らしいですよね。

私が今回拝見させていただいた作品には、例えば前衛シアターカンパニーとして名高い冨士山アネットの長谷川寧さんのプロダクションがありました。

「地球上の残り少ない水をめぐって、どういう方策をとっていくか」をテーマに、実際にグループ分けして評決をとっていくという趣向で観客全員を巻き込む参加型シアターは、誰もが楽しんでいたのが印象的でした。私も参加したのですが、やはり興奮します! ゲームのような、本当の地域社会での出来事のような・・・

長谷川寧さんのチーム! 公演を終わってバーでホッと一息。真ん中手前で座っている男性が寧さん。

「毎回そのとき参加した人たちで結果が異なり、違う世界を見せてくれる。それぞれが思い、考えてもらえたら。そこに僕の意図があります」と長谷川さん。大人はもちろん、子供たちは特に生き生きと参加していました。

この長谷川さんの参加型シアターが行われた空間。ここはパンデミック期間中に天井を抜いて梁を出し、趣あるクラシカルな空間に生まれ変わったお部屋です。さすがヴィクトリア朝時代の保存建築! 私は今回のElectric Japanをきっかけに、このシアターの大ファンになってしまいました^^  ストーリーを語りかけてくる空間には心を奪われます。

序盤を飾ったロンドン在住の写真家、平田真弓さんの作品たちもここに並べられました。圧巻! 19世紀の書斎風に飾られた地下バーも展示会場となり、 なんとも言えない独自色に染まっていました。会場と作品が見事に融合している好例だと思います。

美しい!

真弓さんのシリーズ作品「JUMP!」の展示でした^^ 右で飛んでるのはハッピースカイ・ベーカリーの飛騨もとこさん♡

地下バーではイレズミ・シリーズの展示!

 

そして後半はファッション・デザイナー、加賀美敬(ケイ・カガミ)さんのフェティッシュな作品で埋め尽くされました! まるで彼のためにあるような空間ですね〜^^ 静謐で満たされ、息を飲む圧倒的な美しさをたたえていました。

カガミさんの代表作、ドレスの噴水。

シュールレアリスムを感じます。極めてフランス的な〜。「エンジニアド・クチュール」と名付けられた作品群です。

カガミさんはセントラル・セント・マーチンズのMAで学んでいるので、イギリスとは縁が深い方。アレクサンダー・マックイーンと同期で卒展では彼をしのぐ評価を得たとか。もともと建築畑にいらしたからか、作品はとても立体的です。そう言えばYKKとのコラボレーションが有名で、私もいつかジッパーだけを使ったドレスをニュースで見た記憶があります。

今回の展示で初めて氏の作品を直に拝見し、すぐに去来した言葉は「フェティッシュ」。あるいは「シュール」。フランスのシュールレアリスムやデカダンスなどを感じさせる作品には、心臓を射抜かれたような衝撃を受ける人もいるでしょう。日本でもこういった世界観は90年代に注目されましたよね^^

ファッションが「トーチャー(苦しみ)」であった時代を彷彿させる作品群ですが・・・より自由になった現代に蘇るのにはどんな理由があるのか? 個人的にはケイ・カガミの今を見たいと、ふと思いました。

彼の作品群はコロネット・シアターのギャラリーで展示されたことで、一層の深みを増していると思います。展示が1週間延長され明日の土曜日まで見られるので、ぜひぜひお運びください!

右が有名なYKKジッパーの作品!まさにブラックスワン、ですね^^

地下バーに展示されたカガミさんの靴! この場所にぴったりで、作品も喜んでいます。

そして今年のElectric Japanの最後を飾ったのは・・・勅使河原三郎さんのコンテンポラリー・ダンス! 演題はトリスタンとイゾルデ。UKプレミアでした。

長年のデュオである佐東利穂子さんとのぴったりと息の合ったダンスは限りなく美しく切なく、ときにドラマチックで、カップルの苦悩やあふれるエモーションを極限のところで表現。二人のボディに光と陰がまとわりつき、幻想的で力強いダンス作品に仕上がっていました。これは見ないとわからないね^^

勅使河原さんは今年2022年、その生涯の功労に対してヴェネツィア ヴィエンナーレの金獅子賞を受賞されています。コンテンポラリー・ダンスの世界において、これまでどれだけの貢献をされてきたのかがわかりますね・・・。本当におめでとうございます!

私は実は勅使河原さんの作品を拝見するのは今回が初めて。次回は別の演目も拝見したいなぁと、強く思った次第です。

 

コロネット・シアターはかつては映画館だったのですが、現在はシアター・スペース、ギャラリー、バーとして訪れる人たちを魅了しています。改装の総指揮をとったのが芸術監督のAnda WIntersさん。素晴らしい仕事!

こちらが地下にあるバー。突然ここに案内されたら、誰もが驚くと思うんですよね^^

バーについてはまた別の枠でご紹介する予定。

Electric Japan 2022のご成功おめでとうございます! 関係者の皆様の尽力の賜物。また次回が楽しみだなぁ♡

この土曜日まではジャズ・フェスティバルを開催中! 詳しい演目はこちら。ジャズ・フェスティバル開催も初めての試みだそうです。ロンドンのエンターテインメント・シーン、フル稼動ですね。ぜひ訪れてみてください!

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岡山県倉敷市出身。ロンドンを拠点に活動するライター、編集者。東京の文芸系出版社勤務、雑誌編集・ライターを経て、1998年渡英。英系制作会社にて数多くの日本語プロジェクトに関わった後、2009年からフリーランス、各種媒体に寄稿中。2014年にイギリス情報サイト「あぶそる~とロンドン」を立ち上げ、編集長として「美食都市ロンドン」の普及にいそしむかたわら、オルタナティブな生活、人間の可能性について模索中。著書に『歩いてまわる小さなロンドン』(大和書房) 『ロンドンでしたい100のこと』『イギリスの飾らないのに豊かな暮らし 365日』『コッツウォルズ』(自由国民社)。NHK文化センター名古屋教室「江國まゆのイギリス便り」講師。MUSIC BIRDのラジオ番組「ガウラジ」に月一でゲスト出演。チャネリングをベースとしたヒーラー「エウリーナ」としても活動中(保江邦夫氏との共著『シリウス宇宙連合アシュター司令官 vs.保江邦夫緊急指令対談』もある)。Instagram: @ekumayu

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