Floral Hall フローラル・ホール
パンデミックは全てを変えてしまったのだろうか? 否。去るべきは去り、良きものが残った。2021年から歳月を経るにつれ、そのような感想も生まれるようになっているのではないだろうか。
北ロンドンはクラウチ・エンドにあるガストロノミック・バー「Floral Hall」は、そのルーツが非常にロンドン的であり、場所を変え、形を変えて脈々と生き延びている個性的かつ良心的なネイバーフッド・バーの代表例だなと思います。そして今の物価高のロンドンにあって、味、価格、雰囲気のバランスがとても良い。こんな素敵なバーをご紹介しない手はない♡
と言うわけで、本日はFloral Hallのご紹介です♪
Floral Hallのルーツは、ロンドンの元祖ガストロパブ「The Eagle」にあります。1991年、クラーケンウェルの食エリアに颯爽と登場したThe Eagleは、レストラン出身のシェフたちがパブ・フードの質を改善すべく奮闘した最初期のガストロパブ。そこで腕をふるっていたシェフのマイケルさんが、次は元祖オーガニック・パブとして知られるイズリントンの「Duke of Cambridge」へ転職。
ロンドンを代表する名物パブ2軒の厨房を経験したマイケルさんが、独立してオープンしたのがフィンズベリー・パークで人気のあったブティック・レストラン「Season」でした。Seasonはとても雰囲気がよく美味しかったのでたまに食事をしていたのですが、閉店したのは残念だと思っていたところ・・・
当時私は知らなかったのですが、そのマイケルさんがさらに北に位置するクラウチ・エンドで、仲間4人とともに創業したのが、Floral Hallの前身となるバー「Nickel」だったのです。
このNickelは、最高でした。とても色気のあるクールなバーで、カウンター席のほかはテーブル1つのみという狭い空間。そこに口コミで広がったのか、夜な夜なファッショナブルな人たちが出入りするようになり、当時はかなり話題になりました。ユアン・マクレガーなんかも時折訪れていたようです。
話題になった理由はいくつかあると思うのですが、やはりガストロパブ仕込みのバーフードが最高に美味しい。そして陰影のある独特の雰囲気。もちろん仕入れ先にこだわったワインリストも。全てが素敵に共鳴しあった結果、伝説のバーとなったのですね。
いつしかNickelは手狭となり、斜め向かいにあったヴィンテージ家具のお店を譲り受け、現在のFloral Hallが昨年誕生しました。
今回外観の写真が手元にないのでお見せできないのが残念ですが、元花屋さんだった建物はヴィレッジ内でも最も特徴ある建築として愛されてきたもの。一度、フラットに建て替えられそうになってカウンシルに反対されていました。それが無事に保存され、現在のレストラン・バーとなっているわけです。現在の写真じゃないですが、このページで外観はご覧いただけます^^

シンプルなズッキーニとヘーゼルナッツのサラダ。旬が美味い!
このお店の強みは、やはり味、雰囲気、価格の絶妙のバランスにあると思います。
旬を重視したバーフードはどこまでも味良く、そして価格はとってもお手頃。ナチュラル・ワインは外れがなく、ヴィンテージを意識した家具も趣があります。旬の食材をシンプルに美味しく調理する手法は、マイケルさんのルーツであるガストロパブのテクニックなのでしょう。

チキンも柔らかく完璧な味でした。ポテトはボウル一杯食べられそう。

ピーナッツとラズベリーのパンナコッタ。最高です。
ロンドン中心部の実力派・有名店で修業し、経験を積んで自宅の近くにオーナー・レストランを開業する筋道は、最近のロンドンでよくある現象だと感じています。例えばこのクラウチ・エンド内だけでも、すぐに何軒か思い浮かぶほどですから。
このFloral Hallは、その出発地点に元祖ガストロパブとオーガニック・パブがある。経歴としては最強だし、腕も知識も間違いないことは客が知っています。小さな北ロンドンのネイバーフッド・バーだと、あなどるなかれ。
最近のロンドンはゾーン2や3も面白くなってきています!
【再訪写真】