Enderby House エンダービー・ハウス
テムズ川の豊かな流れにぐっと頭を突き出すグリニッジ・ペニンシュラ。その首元のリバーサイドに佇む最高立地の麗しいパブ、Enderby Houseをご紹介しましょう。
この辺りはエンダービーズ・ワーフと呼ばれるテムズ南岸の埠頭で、19世紀半ばに開発された歴史あるエリア。エンダービー・ハウスはその時期に土地の名士だったエンダービー家によって建てられたと伝えられています。
このエンダービー家は代々、捕鯨やアザラシ狩りに関わっていた商家なんだそうです。それでテムズ川に近いグリニッジ・エリアに一族が点々と住んでいたのだとか。周辺には彼らの船を修理したりする造船工場が散らばっていて、このエンダービー・ハウスがその中心地なって取りまとめていたようです。その後、建物はエンダービー家から電報通信社の手に渡ります。なんだか時代を反映していますよね。
ちなみに通りの名前は「Telagraph Avenue」というのですが、その19世紀末から20世紀にかけてテレグラフ通信の拠点となっていたという歴史を反映しているようです。当時は電報(テレグラフ)が大切な伝達手段。必要なケーブルがこの辺りの川底に敷かれていたそうですよ。ロンドンの通りの名前は、ちょっと調べるだけですぐに深い歴史に行き当たるところが面白い!ネットサーチでわかる範囲から想像を膨らませるのが好きな私です^^
パブへの入り口は裏手。エントランスはモダンな感じですが、建物自体は19世紀のもの。表から見るとまた違った趣なのです。1階がバーになっていて、この階からも外に出ればテムズの眺めはあなたのもの。実はこのパブ、2021年1月に大規模な改装を終えて再オープンしたばかり。まぁとにかく見目麗しいデコレーションに仕上がっているので、そちらも一見の価値ありなのです。
いかがです? グリニッジらしく、貿易やコロニアル、海洋にまつわるインテリアでまとめられていることがなんとなくお分かりでしょうか。どのお部屋もとても居心地よく仕上げられています。
そしてここはガストロパブとしても利用価値が高い! いただいた食事はかなりハイクオリティで、フィッシュ&チップスやバーガーなどの基本をおさえつつ、ベジタリアンにも優しいメニュー構成となっていました。
私がメインでいただいたのはベジタリアン・オプションの野菜のケバブ(シャワーマ)。簡単に見える料理ですが、実は野菜のグリル加減やソースのバランスなど、注意すべき点はたくさん。白いのは豆乳ヨーグルト・ソース、グリーンはルッコラのペスト・ソースで、バランスもパーフェクト。ヴィーガン・オプションでもありました。クレイフィッシュとドーセット蟹のバーガーなんていうメニューもあり、現代人の嗜好をかなり取り入れたメニュー構成。
建物は3階建で、半地下とルーフトップあり。隅々まで美しくデコレーションされていて・・・徘徊して回ると楽しいと思います^^ 私が一番気に入ったのはこちら、2階(First floor)にある「The Study」。
小さな集まりにぴったりの小部屋で、テムズの美しい風景を眺めつつ親睦を深められます。このStudyとは別に、2階には「Octagon Room」と呼ばれるメイン・ルームがあり、その名の通り八角形の造りで大変美しく仕上げられています。次回の訪問時、私なら2階に座るかなぁ^^(写真はウェブサイトで)
いやぁ、グリニッジには歴史的なパブが多いですが、こちらの川沿いに陣取るエンダービー・ハウスは歴史も箱も負けていません。大手ビール醸造メーカー、Youngsが所有するパブとして長く愛されて欲しいと切に願ってしまう美しき佇まいのローカル・パブです。
近くにはThe O2アリーナ、世界遺産のグリニッジ、カティ・サーク号、そして新しく開発中のデザイン・ディストリクトなど、見どころにあふれています。テムズ川沿いのそぞろ歩きも楽しめる「あなたの知らない英国」です^^
協力:英国政府観光庁