月夜のワイン・バー

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Goodbye Horses グッバイ・ホーセズ

ナチュラル・ワインの愛好家たちが我こそ先にと訪れる、楽しげなバーがこの夏イズリントンの住宅街にひっそりと誕生しました。

ここはもともと19世紀のヴィクトリアン・パブがあった場所。ワイン・バー、コーヒーハウス、アイスクリーム屋という全く別々のブランドが同居するという面白いコンセプトが受けてか、業界であっという間に知られることになり、私もオープン直後のある日の午後、「ちょっとコーヒーでも」と思って出かけてみたのですが・・・

その日から実際に、ワイン・バーのカウンター席に座れることになるまで、数ヵ月が必要だったというお話 ^^  なぜだかわからないけれど本当にすごい人気で、予約が取れない・・・!

というわけでオープンから3ヵ月後の日曜の夜、8時15分のスロットに滑り込み^^  お店に足を運んで気づいたのは「グッド・ヴァイブ」「プロフェッショナル」「隠れ家」「上質」といったロンドナーたちの好物が全て、そこにあったということでした。

昼間来たときとは全く異なるアンビエンス。1本のオークの木から作られたという約10メートルの有機的なカウンターに、まず目が惹きつけられます。

その上には横長のタペストリー風ランプシェードが吊り下げられ、神話をモチーフにしたオリジナル絵画が♡  これはイギリス人アーティストのルーシー・スタインさんの手によるもので、物語はカーテンにまで続いて描かれ・・・

月と馬。日曜の夜でこの賑わい。住宅地の中にあるお店です。

独特のヴァイブを生み出しているのです〜(好)。

オーナーは起業家のアレックス・ヤングさんと、ダルストンのミュージック・バー Brilliant Cornersのマネージャーだったジョージ・デヴォスさん。東ロンドンのホットなレストラン「Papi」で腕をふるっていたジャック・コギンスさんが厨房を仕切り、専門家によってキュレートされたオーガニック&バイオダイナミックのワイン・セレクションを揃えたスーパー・コージーなバー。注目されないわけないですね。

イワシのパテのカナッペ。うまい!

これはお魚のムニエル。素晴らしい出来栄え。

ナチュラル・ワイン特有のさっぱりとした、しかし葡萄や土との繋がりを直に感じられるしっかり目のテイストには、やはり主張ある地物の野菜や魚・肉がよく合います。

例えばミルクパンにのせたイワシのパテ、白身魚とポテトのムニエル、キクイモのロースト、ロックフォールと洋梨のボリューム・サラダなど。こう書くとシンプルに思えますが、どの品もあるべき味に導かれており、本当に美味しいのです。いずれも下拵えをしっかりと済ませ、丁寧に調理した逸品揃い。たかがおつまみと侮るなかれ。

キクイモ。

サラダのシーザー風ドレッシングも美味しい♡

デザートにはきめ細かでシルキーなカスタード・タルトを。プルーンのナチュラルな甘さとの相性抜群。薄いタルト生地もサクサクです♪

ウォークインも受け付けているので、ご近所ならば絶対に通いたいお店(座れるかどうかは運次第!)。インテリアの工芸コンセプトと、ナチュラル・ワイン、そして通好みのお料理が三位一体となり、旬のロンドンを見せてくれる上質バーでした♡

そうそう、4000 枚を超えるレコード・コレクションから紡がれるアコースティックなバックグラウンド・ミュージックもなかなか。音響はよく設計されていて、決しておしゃべりを邪魔しません。DJしながら運営もできるなんて、楽しすぎますね^^

ひょっこり訪れた夏のある日の写真も載せておきますね。

インテリア施工はスイスの建築家によるもの。ヴィクトリア朝当時のオリジナルの部分はほとんど残っていなかったので、まっさらなところからデザインしたのだそう。インスピレーションは英国のアーツ&クラフツだけでなく、日本の民藝の影響も受けているのだそうですよ。どおりで手作りの温もりを感じるわけですね。建築資材にもなるべく自然素材を使っているそうです。

もう一つ・・・特別な存在感を放つアイテムが、小さな前庭で迎えてくれます・・・。それはゆったりとした弧を描く、古びた石造りのベンチ。ここに座って風に吹かれつつ、野草が揺れる様子を見ていると、ふとベンチが造られた200年前にタイムスリップしてしまうかもしれません^^  不思議な陰影を感じる存在です。

デザイン賞をあげたい!

有名なガーデン・デザイナーさんとのコラボで創造されたという小さなお庭。夏の日にゆっくりとコーヒーを飲んでみたい場所ですよね。

さて、「Goodbye Horses」という店名について少し。1991年の映画「羊たちの沈黙」をご存知の皆さんは、「おや」と思われるかもしれません。そう、映画で使われた曲にちなんで名付けられました。スタッフのお気に入りの曲というだけでなく、言葉そのものの響きに惹かれ、選ばれたそうです。

そしてお店のロゴは「月と馬」。三日月に馬が紐づけられた寓話風のイラストに目を引かれますよね。実はこの二つのエレメントは、昔から世界各地の神話で取り上げられてもいるモチーフであり、月は女性性を、馬は男性性とパワーを暗示しているようですね・・・(でもロゴの馬は三日月に繋がれて幸せそうです♡)

この建物に同居するコーヒーのブランドは「Day Trip Coffee」、向かいにできる予定のアイスクリーム屋さんについては、また機会あれば!

21 Halliford Steet, London N1 3HB

店名Goodbye Horses
最寄り駅Essex Road
住所21 Halliford Steet, London N1 3HB
電話番号
営業時間水・木 17:00 – 00:00 金・土 14:00 – 00:00 日 14:00 – 23:00
URLhttps://www.goodbyehorses.london
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岡山県倉敷市出身。ロンドンを拠点に活動するライター、編集者。東京の文芸系出版社勤務、雑誌編集・ライターを経て、1998年渡英。英系制作会社にて数多くの日本語プロジェクトに関わった後、2009年からフリーランス。2014年にイギリス情報ウェブマガジン「あぶそる~とロンドン」を創設。食をはじめ英国の文化について各種媒体に寄稿中。著書に『歩いてまわる小さなロンドン』(大和書房) 『ロンドンでしたい100のこと』『イギリスの飾らないのに豊かな暮らし 365日』『コッツウォルズ』(自由国民社)。カルチャー講座の講師、ラジオ・テレビ出演なども。英国の外食文化について造詣が深く、企業アドバイザーも請け負う。チャネリングをベースとしたヒーラー「エウリーナ」としても活動中(保江邦夫氏との共著『シリウス宇宙連合アシュター司令官 vs.保江邦夫緊急指令対談』もある)。Instagram: @ekumayu

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