寝付きが悪い人や、夜中に目が覚めたりしてぐっすりと眠れないという人へ。前回の睡眠に関するリサーチ情報に続き、今回は最良の眠りを得るには何が必要なのかを探ってみました。きちんと睡眠をとっている人も、よりよい眠りに有効な情報を見つけるかも!?
安眠の妨げになるもの
眠りのクオリティ向上には、まず妨げになるものに近づかないのが基本です。以下、主だって避ける必要があるものをリストアップしてみました。
ストレスや心配ごと (1) ・・・日頃のストレスは、その日のうちに解消するのが理想的です。あれこれ考えれば考えるほど、頭の中のストレスが堂々巡りするかもしれません。心配ごとも同じです。夜のお風呂で洗い流したり、アクション・プランを紙に書いたりして、ストレスを頭から出すように心がけましょう。どうやっても振り切れないストレスや心配ごとは、カウンセラーやサイコセラピストなど心の専門家に相談して、抱え込まないようにするのも有効です。
夕方〜夜(特に夕方5時から7時の間)の激しい運動 (1) ・・・心拍を上げる激しい運動は、ストレス・ホルモンの分泌を促し、からだが緊張した状態になります。特に起床時から疲労感のある人は、さらにホルモン・バランスを崩す可能性があるので、夕方以降の激しい運動を避けるべきでしょう。ヨガや太極拳など、呼吸法を取り入れたゆるやかな運動がお勧めです。
夕方以降のカフェイン含有飲料、重い夕食または遅い夕食 (2) ・・・ご存知のとおり、カフェインは覚醒とともに脳を活性化します。同時に、アドレナリン腺を刺激してコーチソル(ストレス・ホルモン)の分泌を促すので、からだは緊張状態になります。カフェイン代謝の早さには個人差がありますが、目安としては午後3時以降の摂取を避けるようにするといいでしょう。また、重い食事と遅い夕食は、睡眠中にも消化運動が続くため、眠りを浅くします。
軽すぎる夕食/夕食なし(意図したファスティングを除く)・・・軽すぎる夕食や空腹での就寝は、睡眠中に血糖値が下がりきる原因となります。睡眠中に血糖値が下がりきると、コーチソルの分泌を促すため夜中に目が覚めたります。きちんとした夕食をとばしがちで夜中に目が覚めるという人は、血糖値を安定させるため、就寝前にGL値の低い(=低糖/低炭水化物)スナックをとってみてはいかがでしょうか(3)。オーツ麦のビスケット(いわゆる「オートケーキ」)に、フムスやナッツバターを塗ったもの2枚程度でいいと思います。 チーズをのせて食べたいという人がいるかもしれません。チーズには、体内にある刺激物質の分泌を増加させるティラミンが含まれるため、人によっては鮮明な夢を見て深い眠りが得られなくなるので、ご注意を(4)。
就寝前の水分過剰摂取と夕食後の飲酒・・・当然ながらお手洗が近くなるので、夜中に目が覚めるはめに。。。
ブルーライトを放つ電子スクリーンと、必要以上に明るい室内照明・・・光(特にブルーライト)は視覚神経をとおして脳を刺激し活性化します。夜、視覚神経が必要以上に光を感知すると、体内時計を狂わせる原因になります。なので、夜にはやや暗めの照明が適切とえるでしょう。
就寝前のソーシャル・メディア使用・・・ブルーライトの影響に加えて、精神的な中毒性が懸念されます。
プラグ接続して使用中の電気系機器・・・電磁波は、パワフルな抗酸化物質で眠りに必要なメラトニンの合成を阻止し、体内時計を司るCry1(Cryptochrome protein molecule)という遺伝子に影響を与えると報告されています(5)。配線を変えるなどして、ベッド付近から接続中のケーブルがなくなれば理想的です。就寝時には、可能な限り寝室内の電気機器の電源を切るかプラグを抜きましょう。また、ワイファイのルーターが寝室の外あっても、部屋まで電波が届くなら、夜には電源を切るのがベストです。
適切でない室温と、騒音や明るすぎる寝室・・・室温は、暖かすぎず寒すぎず、やや涼しめくらいが適切。まわりの騒音対策には、耳栓を。光は、普通のカーテンから遮光カーテンに変えれば、大きな違いとなる寝室もあるはず。
柔らかすぎる/固すぎるマットレス、合わない枕・・・当然ながら、からだに合わないマットレスや枕は、よい眠りをサポートしません。心当たりのある人は、これらの新調を考慮してみては?人生のうち眠っている時間の割合を考えると、大いに投資価値のあることだと思います。
日中のうちにやっておきたいこと
運動は、朝やランチタイムなど早めの時間帯に取り入れると、神経やホルモンを整えるのに有効です。人間のからだは、光に視覚神経が反応して体内時計を調整するので、夜になって暗くなると眠りに必要なメラトニンというホルモンを合成するようにできています。イギリスの冬は日本よりも夜長なので、日の短い時期には、日の出前に出勤して日の入り後に帰宅、という人も少なくないはず。電気の普及によって、わたしたちの生活はぐっと便利になりましたが、そのせいで、現代人の脳は長時間人工的な光で活性化されるようになりました。自然とシンクロして体内時計を整えるなら、日中に最低一度の太陽の光(曇りでも)を浴びて、可能な限り沈んでいく夕日を見るといいでしょう。
慌ただしい日々を送っている人は、 一日中神経を張りつめたままだと、夜になっても日中の緊張状態がなかなか解けない状態になりがちです。短めでもいいので、100%食事に集中した「ながら」なしのランチ・ブレイクをとりましょう。よく噛んで食事を楽しむと、副交感神経を刺激するので、神経のスイッチが切り替わりやすくなります。また、一日数回数分のティー・ブレイクをとって、100%お茶を楽しむひとときを作りましょう。神経を整えるのに有効です。その際に、腹式深呼吸を数回取り入れると、さらに効果が上がると思います。
夕方以降、家での対策
まず、就寝3時間までに夕食を済ませること。難しい場合は、消化に時間のかかる赤身の肉を避け、具たっぷりのスープや、雑炊、大きめのサラダなど、栄養があって消化のいいものを、就寝の最低2時間前までに食べ終えるようにしましょう。夕食後は、リラクゼーション・アクティビティを取り入れて「スイッチ・オフ」の時間を作るのが理想的。仕事でクライアントによくお勧めしているのは、夜エプソム・ソルト(マグネシウム)のお風呂に入ることです。マグネシウムには、こわばった筋肉を緩める効果も期待できるので、お風呂好きのストレス解消法にぴったり。普通の薬局なら、1キロが4ポンドくらいで購入できます。オーガニック・フード・ストアだと、倍かそれ以上の値段だったりしますが、エッセンシャル・オイルやドライ・ハーブの入った商品もあります。手足の冷たい人は、就寝前に15分程度生姜スライス(なければレモン&ジンジャーなどのティーバッグでも可)を入れたお湯で、足湯するのがお勧め。足湯には、頭に集中したエネルギーを足もとまで下げる効果もあるので、考え過ぎの傾向にある人にもよさそうです(6)。また、就寝2時間前までにブルーライトを放つスクリーン(携帯/タブレット/コンピュータ・モニタ/テレビなど)の使用を止めることも、安眠の大切な要素。かわりに、読書や瞑想などで神経を休めれば、眠りのクオリティ改善/最適化につながるはず。
日常レベルで、誰でも簡単に楽しめるもの
以前に比べて、良質のオーガニック・ハーブ・ティーなどが、普通のスーパーでも手軽に買えるようになりました。メーカーによっては、スリープ・ブレンドもあるので、チェックしてみてください。カモミールやスカルキャップ、メリッサ(レモン・バーム)、バレリアンなどに催眠効果があるとされています(7)。ハーブに加えて、エッセンシャル・オイルも見逃せない存在。夕食後、オイル・バーナーでリラックス系の香りを楽しむという手もあります。一般的に知られたオイルで眠りにいいとされるのは、ラベンダー、カモミール、シトラス系のオイル、イランイラン、など(8)。数種を混合すると、香りによる効果も変わります。わたしが特に好きなのは、ベルガモットとゼラニウムのローズ・タイプ。嗅覚は、個人の香りの記憶やその日の体調などによってセンスが異なるので、気分に合わせていろいろと楽しんでみてはいかが?
快適で深い眠りは、からだの再生と修復に欠かせないもの。常に最良の状態であるのが理想的です。簡単にできる小さなことが、大きな違いを作ることもあります。積極的にできることを取り入れてみましょう。
参照:
- Guo, B and Powell, A. (2001). Listen to Your Body. Honolulu: University of Hawaii Press. pp.152, 153
- Pitchford, P. (2002). Healing with Whole Foods. 3rd edn. California: North Atlantic Books. pp.337
- Nicolle, L and Bailey, C. (2014). Eat to Get Younger. London: Singing Dragon. pp.236
- Davidson, J and Connor, K. (2000). Herbs for the Mind. New York: Guilford Press. pp.202
- Henshaw, D. (2014). Power frequency – electric & magnetic fields and human health. [British Society for Ecological Medicine Conference: Electromagnetic Radiation and Health: Evidence, Diagnosis, and Management] 7 March.
- Tierra, L. (2003). Healing with the Herbs of Life. 1st edn. California: Crossing Press. pp. 251, 250
- Price, S and Price, L. (2007). Aromatherapy for Health Professionals. 3rd edn. Philadelphia: Churchill Livingstone Elsevier. pp.486