Chapter 2.3
何をして、忙しい?
先日、英国ミニマリスト団体「theminimalist.org」のロンドン支部ミーティングに参加してきました。母体は米国にあるこの団体ですが、世界各地に支部があります。今回の会場はロンドン中心地のレストラン。
ミニマリズムを個人的なツールとして取り入れ人生の方向転換を図っている方、持続可能性・環境運動に取り組んでいる方、ビジネスに取り入れている方など様々な方に会ってお話しすることができました。ミニマリズムをベースにしたファイナンシャル・アドバイザーなんていう職業があることも知りびっくり。前からお会いしたいと思っていた代表のレジーナさんという作家の方ともお話しできてラッキーでした。
会の途中で参加者がミニマリズムに関連するお気に入りの格言を1つずつあげてみることになったのですが、一番人気のフレーズはコレ。
「役に立たないものや、美しいと思わないものを家に置いてはならない」
〜英国の詩人・工業デザイナー、ウィリアム・モリス
(リバティ・プリントでもよく知られていますね)
「〜してはならない」と言われるとちょっとコワい印象を受けますが、つまりは「自分にとって役に立つもの、そして美しいと思うものたちと共に生活を送りましょう」ということ。日々の様々なシーンで重宝するガイドラインということで堂々の一位。
ほかにもミニマリスト・コミュニティでは知らない人はいないといってもよいダヴィンチや老子、アインシュタインの格言などが続々登場。
『星の王子さま』の作者、サン・テグジュベリの「完璧が達成されるのは、何も加えるものがなくなった時ではなく、何も削るものがなくなった時である」というのもミニマリズムや引き算の美学をよく表していると思います。
驚くほどたくさんの名言が飛び出しあらためて感動。そして初めて聞くフレーズもあって新鮮でした。例えば…
「忙しいだけでは十分ではない。アリだって忙しい。大切なのは、何をして忙しいかだ」
〜米作家・博物学者ヘンリー・デヴィッド・ソロー
「誰もが自分だけは例外だと考えていることに、例外はない」
〜英国人の覆面グラフィティ・アーティスト、バンクシー
取り上げられた人たちがミニマリズムを意識していたかどうかはともかく、「自分がフォーカスすべきことを知っている」という意味ではミニマリズム的思考を持っているといっていいでしょう。少なくともミニマリストたちは彼らの言葉に大きな影響を受けています。
ちなみに私が好きなのは「レス・イズ・モア」。
ドイツのモダン建築家ミース・ファン・デル・ローエが残した言葉です。耳にしたことがある方も多いかもしれません。
「Less Is More=より少ないことは、より豊かなことだ」
一見矛盾して聞こえるシンプルな3つの英単語。以前ご紹介した「ミニマリズムはエッセンシャリズム(本質主義)」という解説と組み合わせると、より分かりやすいかもしれませんね。
ちなみに「レス・イズ・モア」に対抗して「レス・イズ・ボア」という言葉もあります。
「Less Is Bore = 少ないことは、退屈、ということだ」
これはポストモダン建築家ロバート・ヴェンチェーリがローエの言葉をもじったもの。ただ批判するだけじゃなくて、韻を踏んでおちょくりを入れるあたりが洒落てますね。
たしかにミニマリズムを禁欲的と捉えるならば味気ないし、退屈かも。やみくもに持ち物を減らし、ケチケチし、楽しみも我慢してミニマリズムという戒律を守るためにひたすらストイックに生きる、という感じでしょうか。
でもせっかくの人生、おもいっきり楽しみたいですよねー。
というわけで私の解釈は「自分の人生に必要ない要素を減らし、真に大切なことのための空間・時間を増やしていく。そして新しいことがやってくるスペースを空けておく」。
ちょっと理想主義的に聞こえるかもしれませんが、とても好きなフレーズです。呼吸と一緒で、出さなければ新しい空気は入ってこないもの。
それに情報&モノに溢れたこの社会では、インプットばかりしていると頭でっかちになりすぎて、身動きがとれなくなってしまう。アウトプットはとても大切です。「大切なのは、何をして忙しいかだ」。
ソロー氏の名言に乾杯!