ポッサムおじさんの実用猫百科

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だいーぶご無沙汰してしまいましたが、皆様お元気でお過ごしでしょうか。ここ最近、ロンドンではテロ事件が続発したり、痛ましい火災事故が発生したり、総選挙で労働党が奇跡の逆転劇を見せたりと、本当にいろんなことが起こっているわけですが……タムタムとラミーは相変わらず元気です。この稀にみる猛暑の中、いつも以上にウダウダゴロゴロしています。

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私自身は、つい最近まで日本に1ヵ月近く里帰りしていまして、その間に頼もしい友人たちが交替で彼らの面倒を見てくれていたのでした。今までもちょっと旅行で家をあける時などに、友人に世話をお願いしたことはあるのですが(あぶそる〜とロンドン編集長にも一度お願いしたことがあります。その節はありがとうございました!)今回のように1ヵ月近くも離ればなれになったのは初めて。最初の1週間は夫が残って世話していて、毎日のようにスカイプで様子を窺ってはスクリーン越しに話しかけたりしていたのですが(必死ですハイ)、夫が私と合流してからは3組の友人たちに分担で任せきりだったので、もしかして家に帰ってきた時に猫たちに忘れられているかも……と心配したりもしましたが、帰宅したその日、会った途端にタムタムがゴロニャーンとお腹を見せて横たわったのを見て一安心。ラミーもどこか嬉しそうにしているように見え(思い込みかもですが)、犬は覚えてるけど猫は忘れる、っていうのは迷信だなと確信しました(まあこれが1年とかの長期にわたった場合はどうなのかわかりませんけどね)。

さて久々の今回は、イギリスの詩人、T・S・エリオット著『Old Possum’s Book of Practical Cats』について。個人的には、2年前のクリスマス、猫を飼う前に夫にもらって初めて読み、猫に名付けするにあたって大いにインスピレーションを得た一冊でもあります。

ご存知の方も多いかと思いますが、この詩集は、かの有名なロングラン・ミュージカル「キャッツ」の原作です。ここに登場する十数匹の猫たちは、それぞれに個性的でいかにも猫らしい性格、行動を見せる半面、近所やパブで見かける人々、ちょっとした知り合いや遠い親戚、はたまた身近な友人のようでもあります。

まず第1章「The Naming of Cats」を読んで、すぐにこの詩集が好きになりました。

The Naming of Cats is a difficult matter,
It isn’t just one of your holiday games,
You may think at first I’m as mad as hatter
When I tell you, a cat must have THREE DIFFERENT NAMES.

猫の名付けは実に厄介
遊び気分じゃまったく失敬
徒おろそかな話じゃない
欠くべからざる三呼の礼

(『キャッツ – ポッサムおじさんの実用猫百科』小山太一訳、以下同)

続いて著者は、こう言っています。「猫には3つの名前が必要である」—— 1つ目は普段、日常的に使われる家族の呼び名、2つ目はそれぞれの個性に合う、威厳に満ちた、それでいて並外れた名前。そして3つ目は……人間には決してわからない、想像も及ばない、でも猫自身は知っていて、決して明かすことのない、神秘の名前。

うーんなるほど。さすが猫様。隠された名前かあ。なんだかわくわくします。

そんなわけで、うちの猫たちに名前をつける時も、それなりに考えました。で、最終的に、1つ目の名前として「Tam Tam」と「Rummy」、2つ目の名前として「Tugboat」と「Rumbelow」 に決めました。まあいちおう由来はあるのですが、長くなるし大して興味深い話でもないので、そこは割愛します。最終的に、響きが気に入って決めた感じもありますし。

それにしても、私たちが知り得ない彼らの3つ目の名前は何かなあと、時々ふと思います。

When you notice a cat in profound meditation,
The reason, I tell you, is always the same:
His mind is engaged in a rapt contemplation
Of the thought, of the thought, of the thought of his name:
His ineffable effable
Effanineffable
Deep and inscrutable singular Name.

時として 猫がきわめて考え深く
見える理由は他になく
満悦至極 感慨深く
味わい味わうその名前 いな
究めようとて 究め得ぬ
申し申すに申されぬ
謎ふかき唯一の御名

うちの猫たちも類にもれず、時々、神妙な顔で何をするでもなくじーっと佇んでいることがあります。そんな時、「おれッちの名前は……」「あたしの名前は……」って味わってるんですかねえ。

この詩集に登場する猫たちも、それぞれ素晴らしい名前を持っています。グラウルタイガー、ジェリクル・キャット、マンゴージェリーにランペルティーザー、etc, etc。みんな芸能人みたい。あ、そういえば彼らは芸能人みたいなもんか。

なかでも個人的に親近感を抱いているのが、ラム・タム・タガー。ラミーとタムタムの中間みたいな名前であるのもさることながら(これ偶然なんですけどね)、こいつの天の邪鬼ぶりときたら、ラミーそのもの、そして私自身にも思い当たる節あり。また、私の義父もお気に入りだという、マキャヴィティもカッコいい。マキャヴィティは、罪を犯しても絶対に痕跡を残さないのでミステリー・キャットと呼ばれているのですが、なにやらこの猫の名前にちなんだ「マキャヴィティ賞」という、国際ミステリ愛好家クラブ主催の推理小説アワードが実在するそうです。

終章で著者はこう言っています。

You now have learned enough to see
That Cats are much like you and me
And other people whom we find
Possessed of various types of mind.
For some are sane and some are mad
And some are good and some are bad
And some are better, some are worse —
But all may be described in verse.

ご覧の通り 猫たちは
あなたや私とご同様
他の誰ともご同様
十猫十色の性格・気性
正気なやつ 狂ったやつ
善良なやつ 邪悪なやつ
他よりいいやつ 悪いやつ ――
どんな猫でも詩になるはず

そしてさらには、

But
How would you ad-dress a Cat?

So first, your memory I’ll jog,
And say: A CAT IS NOT A DOG

でも
猫とジッコンになる方法は?

まず 思い出してもらいたい
猫は犬ではありません

そうですね。猫は犬ではありません。でもうちの猫たちなんか、ちょっと犬っぽいなあと思うところがけっこう見受けられます。猫を飼っていて、同じようなことを言う友人もいます。そうなるともう、猫もそれぞれだし、犬だの猫だの区別するのもどうなのかという気もします。しかしあえて猫と犬を比べると、猫の方が犬より人間っぽいような気がするってことでしょうか。なので、私たちの猫たちとの付き合い方は、人間同士の付き合い方になんとなく似ているような気がします。

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About Author

旅行誌や情報誌、広告等の編集&ライターの仕事を経て2005年に渡英、デヴォン州に約9ヵ月、ロンドンに約4年滞在。2008年頃からベースを弾き始め、バンド活動を開始。2010年より東京—ロンドンを行き来し、2014年に結婚を機に拠点をロンドンに移す。現在は主に翻訳ローカライゼーションの仕事をしながら、DIYパンク/インディポップ/ガレージポップ系の複数のバンドで活動中。 Etsy shopオープン中です:https://www.etsy.com/uk/shop/TubbingRummy

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