犬とジャズと、優しい散歩道

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イギリスは、すっかり冬の入り口です。

雨や曇りの日が多い、この頃の犬散歩では、ヨシエは厚手の靴下と長靴を履き、冬用の防水・防寒のジャケットを着ています。
空気がひんやりとして、犬のリードを持つ手もかじかんできたなーと感じるから、そろそろ手袋も出番かも?

犬散歩は、春夏秋冬いつでも楽しいけれど、ぎらぎら太陽との夏を満喫したあとにやって来る、このひんやりと静かな季節の犬散歩は、とくに好きです。

ところで、ヨシエは犬のおしりを見ると、その犬のご機嫌がわかります。
しっぽ、ではなく、おしりそのもののほうです。

慣れたメンバーとのお散歩中には、犬のおしりの筋肉は緩んで、歩くたびにリズミカルに揺れ、心からリラックスしているのが伝わってくるし、逆に体調がいまいちだったり緊張している時には、おしりの筋肉がつっぱって見えて、その揺れも、全然テンポが良くない感じ。

犬たちが自分の二歩くらい前を歩くので、自然に毎日そのおしりを眺めているうちにご機嫌がわかるようになったほかに、もうひとつ楽しい発見もありました。
それは、楽しんでいる時の犬のおしりの揺れが、ジャズやボサノヴァにぴったりだ!ということ。

ヨシエは犬散歩中に、片耳でイヤフォンから流れるBGMやポッドキャストをお供に歩くことが多く、BGMならその日の気分に合わせてノリノリのクラブ音楽からしっとりしたクラシックまで多彩なバリエーションで聴いています。

そうするとたまに、まわりの風の音や鳥の声や、犬の鳴き声や、聴いている音楽が重なって、素敵なリズムを奏でる事に気づき、さらには犬のおしりとジャズの最高の組み合わせにも気づいた、というわけなのです。

♪ そんなふうに、心地よいリズムに心が弾むと足取りも弾みますが、ぬかるんだ森の中を通る時には要注意〜 ♪

犬3匹のお散歩中に派手に転び、背中からお尻、長靴の中まで泥だらけ、すでに泥だらけの犬たちにも転んだ自分の泥しぶきがかかり、森の中で泣き笑いしたあの日以来、ヨシエは、泥への心構えは万全!なのです(「経験から学ぶ」ですね)。

ぬかるみといえば、秋のお散歩中に、優しい発見がありました。

森の通り道にある、雨が降るたびに深く大きくなっていく、ほぼ池と呼んでもいいくらいの水たまりがあって、通行人や犬はそれをよけて通っていたのですが、雨続きで地面がさらにぬかるんで、水たまりの両端を歩くのさえも困難になってきていた、ある日のこと。
その水たまりの中に横たわるように、細めの丸太が3、4本、飛び石みたいに置かれていました。

「おお、誰かが置いてくれたんだ。助かるー♪」
と思いながら、犬たちとその丸太のうえをぴょんぴょんと渡ってお散歩を続けました。

その翌日、翌々日も、水たまりには丸太が数本ずつ増えていき、やがて水たまりは完全に丸太でふさがれて、そのまま通れるようになったのです。

誰がやってくれたのか分からないけれど、ありがとうー!

とあたたかい気持ちになったら、そういえば毎日通るお散歩道には、ほかにもたくさんの優しさが詰まっているのが見えてきたりして。

フィールドで、腐って穴が開いた木道や、壊れかけた柵があると、いつも、いつのまにか、新しいものに取り替えられています。

森の中で、誰かが木の枝でつくったデン(テントやかまくらみたいな形で、子どもたちが中に入って遊んだりする)が強風で倒されたり、イタズラで壊されたりすると、いつも、いつのまにか、つくり直されています。

川へと続く抜け道で、肌に刺さるとちくちく痛い雑草が、伸び放題に伸びて道をふさぐと、いつも、いつのまにか、スッキリ刈り取られています。

誰かの落とし物(手袋や帽子、犬の首輪、片方だけのスニーカー、水筒など)があると、みんなの目に留まるように切り株やベンチや柵の上に置かれているし、森の中で誰かがやんちゃな宴会をして放置していった割れたビール瓶やスナック袋などの大量のゴミがあると、いつのまにかきれいに片付けられています。

そのほかにも数えきれないほどの、誰かの優しさに包まれて、毎日快適にお散歩を楽しませてもらっているんだなーとしみじみ感じたヨシエが、小さなお返しをと思ってはじめた新しい習慣。それは・・・よその家の犬のトイレの後始末(笑)。

お散歩中に犬の(大)を見かけて、それがあきらかに誰かが踏みそうな場所にあったら、自分が連れている犬のものでなくても、拾ってゴミ箱に持っていっています。(犬を放しっぱなしにして散歩させる飼い主さんで、しかも本人が犬のずーっと前を電話をかけたりしながら歩くので、後ろで自分の犬が何をしても気づかずにそのまま行ってしまう人が、けっこういるのですよ)。

もはやこれは日課となったので、これからも続けていきます。

あ、ぬかるみでもうひとつ思い出したのですが、このあいだモンティ(第8回「大きな白い犬の背にのって。」参照)と雨上がりのフィールドのお散歩をしている時に、ヨシエはまたもや滑って転びそうになってしまいました。
しかし、さすが大きいモンティはびくともせず、彼につないだリードが命綱となって、転ばずに済みました。ありがとう、モンティ!

白くて毛がふさふさのモンティは、お散歩でどろどろになったら自宅の玄関先で水道ホースのシャワーを浴びることになっているので、自宅が近づくと、おしりがさっきまでの軽やかなジャズのテンポから、ものすごい重たいテンポに変化していくので、毎回大笑い。

ほかの子(犬)たちも、秋冬のお散歩の後には、タオルでしっかりボディの泥を落としてから、それぞれの家に落とします。

ヨシエも家に帰ったら、熱いシャワーで泥を落として、コーヒーをゆっくり飲みながら、ペット・ポートレートの制作に取りかかります。
クリスマスまでにお届けする作品づくりがいろいろあって楽しく、外で犬たちと過ごす時間も、家の中で過ごす時間も、どちらも心はポカポカあたたかい、そんな日々です。

ヨシエのインスタグラムのストーリーズで、イギリスでの日々の犬散歩風景をシェアしています。お散歩気分を味わいたい方は、ぜひご覧ください♪)

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About Author

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1979年、福島県生まれ。漫画描きやDIY、動物のお世話を楽しむ子ども時代を経て、日本大学獣医学科在学中に進路を変え、ESMOD JAPON東京校でファッションデザインを専攻。 アパレル業界に勤務後、2006年より東京を拠点にイラストレーター・コラージュ作家「ヨシエ」 の名で作品の発表をはじめる。 絵本「世界にたった2人の仕立てやさん」の雑誌 Spoon. への掲載以来、書籍イラスト、広告・展示・イベントのコラージュや布ハギレの立体作品、ファッション・インテリア柄デザイン、オーダーメイドのアートワークなどを数多く手がける。 2014年から、アーティストの Sarah Bellisarioと組んだデュオ ‘Sas and Yosh’ でのデザインも担当しており、商業・病院施設などの壁画、書籍挿絵や柄デザインなど、デジタルイラストレーションをイギリス国内外へ発信している。 近年は、自然からインスパイアされた光と影のコントラストの中に自分なりの人生哲学を織りまぜ、それをペインティングやドローイング、切り絵や色とりどりの素材ハギレ、柄で表現することに興味があり、色と素材と遊びながら模索中。 ロンドン郊外の小さな歴史ある町に家族と暮らして10年以上になる現在、愛犬マーゴをきっかけにはじめたドッグウォーカーとペットポートレート制作もライフワークに加わり、笑いと発見の溢れるリズミカルな毎日を楽しんでいる。 著書絵本は「ヨシエフォンデュ」(角川書店)、「ポンポルトンタン」 (祥伝社)、「ツキミモザ」「ギイドロとマレンカレン」(Skyfish Graphix)、「ハッピーイースター」 (くもん出版) 他。

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