現在、英国キュー王立植物園の協力のもと、ボタニカル・アート(植物画)の展覧会が東京・新宿SOMPO美術館で開催中です!(2023年1月15日まで)
そういえば12月3日に放送されたTBSテレビ「世界ふしぎ発見!」では、「イギリスロイヤルファミリー秘密の庭園!」をテーマに、ガーデニング帝国イギリスについて教えてくれましたね。
ロンドンにある「キュー王立植物園」は、英国王室が生んだ世界一の庭といわれる世界遺産です。昔からイギリス人は植物をこよなく愛してきました。今年国王に即位したチャールズ3世も、全身全霊で庭を愛するひとりです。人と植物の繋がりを知り、イギリスの歴史と食文化をたどる展覧会が、今回ご紹介する「食を彩る植物のものがたり おいしいボタニカル・アート」です。
「ボタニカル・アート」とは、薬草学や植物学といった科学的研究を目的として、草花を正確かつ細かい部分まで描いた「植物画」のことです。17世紀の大航海時代、珍しい植物を追い求めたプラント・ハンターたちの周辺で多くのボタニカル・アートが描かれました。
展覧会名に “おいしい” とあるように、野菜、果物、ハーブやスパイスなど「食べられる」植物を描いた作品が大集合。その食用植物にまつわるイギリスの歴史や食文化が分かります。古いレシピ、食卓を飾るティー・セット、カトラリーなどの資料類と一緒に、見て味わう趣向。
料理、菓子研究家の山本麗子さんによる、現代の日本で作りやすいようにアレンジされたイギリス伝統菓子のレシピも館内にてご紹介! とても楽しめる内容です。
実はこの展覧会に、私は、食空間プロデューサーの山本侑貴子さんとご一緒しました。先日お会いした時、こう言われたからです。
「ナミヘイさん、ボタニカル・アートの展覧会に一緒に行かない? 私、19世紀ヴィクトリア朝のテーブル・セッティングを再現するお仕事で関わったの」
「はい、行きます!絶対行く!!」
それで「世界ふしぎ発見!」放映の翌日に、侑貴子さんと展覧会に行ってきました。
3階から5階が展示階。原則、展示フロア内での撮影はできませんが、撮影可能なものについてはお知らせの表示があります。早速、撮影可能な展示場所を私たちと一緒にまわりましょう。作品はキューガーデンから借りたものに加えて、個人所蔵のものが一堂に会しています。
下で挙げているのは王立園芸協会の専属画家であったウィリアム・フッカー(1779-1832)の果物画。ボタニカル・アートの鑑賞ポイントは「花」だそうです。花が大きく描かれ、その脇に花のつぼみや実、根や茎が描かれることが多いです。しかしフッカーは、花よりも果実が実った様子を好んで描く作家でした。科学的な観点から研究目的で描かれながらも、食べられる植物を描いた作品として展示されています。
古代ケルトでは聖なる果物とされていた「りんご」。シェイクスピアの時代から親しまれていた「いちご」など、イギリスの食生活に関わるボタニカル・アートを展覧会でご鑑賞ください♪
19世紀後半に起こったアーツ・アンド・クラフツ運動は、伝統的な手工業の復興と日用品のデザインの向上とともに、人々の生活を美しく豊かにすることを目指した芸術運動です。ウィリアム・モリスらによるデザイン改革を通し、人々は生活の中に美を求めるようになりました。お茶もこの頃には広く普及し、ミントンや自然モチーフの茶器などが巷に溢れました。アフタヌーン・ティーやピクニックの流行とともにお茶のある生活が楽しまれました。
3階では、ティーポットやコーヒーカップなどカトラリー類の実物も展示しています。ヴィクトリア朝の主婦のバイブル『ビートン夫人の家政読本』を参考に、19世紀のテーブル・セッティングを展示室内にフォト・スポットとして再現しています。
テーブル・セッティングを担当された侑貴子さんに、セッティング時の苦労話を聞いてみました。
◆ 6セットが優雅に並ぶ、6人用のダイニング・テーブル自体を準備するのが大変だった!このテーブルは、スッタフさん手作りの汗と涙の結晶!(ありがと〜!おつかれさま〜)
◆ ディスプレイ用の果物、お花は全て造りもの。なぜなら貴重なテーブルウェアになまものは厳禁だからです。購入に走り回りました!
◆ 何よりもお仕事のお話をいただいたのが急だったこと。準備時間が短くて大変だったそうです。その為、パンフレット、Webサイトに「山本侑貴子」の名前が間に合わず掲載がないそう。これは残念。Webサイトだけでも更新してもらえるよう働きかけるといいのかも。
侑貴子さんのインスタグラムを拝見すると、こうコメントされています。
「貴重なテーブルウエアに実際に触れることができて、なんともエキサイティングで楽しいお仕事でした✨ボタニカルアートは観ているだけで癒されますし、食に携わっている方々や絵を習っている私にとっても大変勉強になります」
帰りはミュージアムショップに立ち寄ってグッズを見ておしゃべりしました。今日はお誘いありがとう♪
私もロンドン時代にキューガーデンを訪れたときのことを思い出しました。
それぞれの植物には非常に奥深い人類との関わりの歴史が積み重なっていて、それを知ることにより自分も豊かにもなります。また絶滅に瀕している植物がいることにも気付かされます。植物を未来に繋ぐためにも、私たちが命あるものをいただくためにも「ボタニカル・アートの始まり」を是非SOMPO美術館でご覧いただければと思います。
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【おいしいボタニカル・アート】
SOMPO美術館
〒160-8338 東京都新宿区西新宿1-26-1
開催期間:2022年11月5日(土)〜2023年1月15日(日)
休館日:月曜日(ただし1月9日は開館)/ 年末年始(12月29日〜1月4日)
開館時間:午前10時〜午後6時(最終入館は午後5時30分まで)
観覧料:大人1,600円・大学生1,100円・高校生以下無料(当日券)
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2件のコメント
19世紀のテーブル・セッティングは華やかで見ているだけで優雅な気持ちになりますね。侑貴子さんのセッティングをたくさんの方にご覧いただきたいです♪楽しいおいしい時間をありがとうございました!
詳しく丁寧にレポートしていただきありがとうございます!奈美さんは、実際にキューガーデンに行かれてるですものね!流石です!