イギリスに来てから本当に頂き物が多くて、本当はブログではなく個人的に御礼をするべきなのですが、中々タイミングが掴めなくて…。:-)
1999年に渡英してすぐの頃、チェロの名手、YO-YO MAのコンサートがあり、素晴らしい演奏の後に会場の外で老紳士に声をかけられそのまま彼の自宅に食事に誘っていただき…
「ヒデは一人暮らしなのかい?」
「はい」
「結婚はしていないのかい?」
「いいえ」
「彼女はいないのかい?」
「いいえ」
「ゲイじゃないのかい?」
「いいえ」
「それは残念だなぁ」
「はっはっは…(苦笑)」
みたいな会話をしながら楽しく歓談し(英語はかなりゆっくり喋って下さっていたと思います)その後もずっと仲良くしていただき、僕の母がイギリスに初めて来てくれた時もわざわざ女性用のコートを用意してプレゼントしてくれたり、彼の実家のあるウェールズに5、6時間かけて車で連れて行ってもらい僕は一日中ギターを弾き彼が食事を作ってくれるという夢の様な(?)待遇を受けたり…(何もお返しできず本当に申し訳なかったです)。
他にも彼のお姉さん家族が住んでいるというスペインの家に当時付き合っていた今の奥さんと二人で招待していただいたり(この時も僕達は数日間にわたり生活の面倒を見てもらい、ギターとビーチとレストランの繰り返しといった日々を送らせていただきました…)。
その彼が亡くなってしまった時には彼のお姉さんから「遺産の一部を貴方に送るようにと書かれていたから」と連絡があったほどでした。
初めてアイルランドのギネスというビールを飲んだのも彼と一緒に行ったパブで、初めてグラインドボーンというオペラのフェスティバルを観たのも彼と、初めてイングリッシュ・ガーデンを体験したのも彼の自宅でした。
ランドスケープ・デザイナーとしてイギリス内外のガーデニング、デザインをして活躍していた彼の自宅の庭園はまるでそこに自分以外には誰もいないような錯覚を覚える程の不思議な空間で、植物だけでなくあらゆる装飾を自由に使った彼のアイデア、そして何より彼の愛する2匹の猫ちゃん(パルシファルとローエングリンw)が楽しそうに走り回る姿を思い出しながら、2012年に亡くなった彼と残された家族の為に書いた曲が「Stuart’s Garden」でした。
曲を書いてから数年経ち、ステュアートとお姉さん、家族の皆さんに御礼がしたくて、ビデオでステュアートの写真や自分の演奏している動画をプロのカメラマンの方に撮影して頂き…
ただ、この動画をお願いした方の予定と僕の予定が中々合わず、結局当時3歳くらいだった娘を撮影現場に連れて行くことになり、さらにはその娘に撮影中に背後からギターを触られたりチューニングを変えられそうになったり、指板を叩かれたり…w
元々は写真と楽譜、演奏風景とガーデンの映像を使った作品にする予定だったのが、すっかりアホ親子のホームビデオみたいになるのでは…と危惧していましたが、素晴らしく美しい映像のお陰で逆にほのぼのしたイイ〜感じのビデオに仕上げて頂きました!:-)
ビデオは2019年12月24日に完成し、25日にご家族の許可を得て発表することが出来ました。:-)
ステュアートが亡くなってから7年も経ってしまいましたが…是非見てみて下さい!:-)
YouTube 動画はこちらから。:-)
Spotify で無料視聴はこちらから。:-)
余談ですが、グラインドボーン音楽祭に連れて行ってもらった時、音楽監督・指揮をしていたサイモン・ラトルさんが両手にシャンパングラスを持って休憩中に客席を普通に歩いている姿を見て、「クラシックもこういう楽しみ方をしてもいいのか!」と価値観を覆された事をとても良く覚えています。
捉え方は人によって違うと思いますが(彼もいつも休憩中にお酒を飲んでいるわけではないと思いますがw)、緊張した演奏は聴衆にも緊張が伝わりますし、指揮者がお酒を飲んで楽しく演奏しているという事実は、聴衆も一緒に一流のオペラを純粋に偏見や先入観や緊張感なしで楽しむべきというとても良い教訓になりました。:-)
若い時というのは特に、自分の演奏にも完璧さを求めるあまり人の演奏会でも完璧さに重きを置いてしまい、「音を楽しむ」という本来の目的を忘れてしまいがちだったような気がしますが、コンサートを見に来てくれたお客さんを完璧な演奏で疲れさせるよりも、綺麗な、楽しい音で喜んでもらえる演奏がいいなぁ、と思いました。
完璧な、綺麗な、美しい音が一番良いとは思いますがw