【ロンドン人 2】中川 綾「長く愛される洋服づくり」

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ファッションデザイナーの中川綾さん。ロンドンに移住後、2008年に自身のブランド、コレニモを立ち上げる。コレニモは 日本語の「これにも」。これにも、これにも、と何かを足していくの意。出身は愛媛県、タオルで有名な今治市の海沿い、後ろを振り返れば山々に囲まれ、自然に恵まれた環境の中で育っていく。そんな中、18 歳で上京しファッションの世界へ。その後、イギリスに拠点を移し現在に至る。彼女を一言で表現すると” 地に足がついている”。彼女がデザインするものにもそれが反映されている。流行を追うのではなく、一生モノとして大切な宝物にできるように機能的かつ決して飽きのこないデザイン。そして生地選びから自らの足を運んで納得いくまで探し続ける。彼女が作ったものは全てに温かみを感じる。そして意外な才能は「鳥愛好家」。その知識は、鳥の鳴き声など、少しの情報で鳥の種類を識別できるほど。地に足のついている綾さん、空を飛び回る鳥の姿に少しの憧れを持っているのかもしれない。 (武山恵美)


中川 綾「長く愛される洋服づくり」

「28 歳計画」 を実行し、渡英

服飾の専門学校へ通い、新卒でアパレルデザイナーの道に。年に8回展示会を行うほど忙しく、1シーズン 300 型数ほどのデザインをしていたので、8年経った頃にはものを作るというより、絵を描くのに近い作業になってしまっていたことに気付き、視野を広げるためにも一度リセットすることを決めました。元々 “28 歳になったら2年間だけロンドンに住む!” という「28 歳計画」が自分の中にあり、それを実現するのが夢だったんです。ハリスツイードの生地や、スコットランドの糸が好きでファッション的にも影響を受けていたのも大きかった。 それまでコツコツ貯めた定期預金と退職金を合わせて、1 年半ほどの語学学校を予約し、渡英しました。

初めて知る、 やることがある有難み

当初、2年で帰国する予定でしたが、現在の夫に出会っていたのもあってまた戻ってきたいと思うようになりました。それから、東京で普通に出来ていた事がロンドンでは出来なかったりする挫折感を味わった事もよかった。携帯を使うにも理解できなくてブロックされたり、そういう当たり前が大変になる経験を通して、考えがシンプルになれたし、より親にも感謝することが出 来るようになりました。ただ、また学生として戻ってくるのは少し違うなとも思っていました。

渡英して 1 年半、もの作りをする立場から消費する立場になり、もちろんリフレッシュにはなったのですが、どこかで寂しく感じていたのかもしれません。あるとき雲をぼんやり見ていたら、あっという間に2時間経っていたことがあって、そのときハッとしたんです。東京にいた頃と真逆の生活をしてみて「やることがあるってすごい有り難いことなんだな」と。そこで、一旦帰国する前にロンドンのルベックセン ヤマナカのインターンに応募し、その後1年間、学校へ通いながら働きました。その当時、シェアスタジオが職場だったのですが、1つ席が空くと聞き、そのタイミングで格安でスタジオを借り、自分の作品も作るようになりました。それが今につながる “Colenimo” のはじまりです。

コロンビア・ロードで自分らしく働く

インターンの後、ショーディッチのど真ん中にある長屋に6年ほどいたんですが、デベロッパーの都合で急遽立ち退きしなきゃいけないことになり、その時に、今のコロンビア・ロードの店舗に出会いました。 同じエリアで偶然お店が見つかるなんて本当に奇跡でした。コロンビア・ロードは日曜日にフラワーマーケットが開催されていてとても活気のある場所。中には3世代にわたり商売しているような元気なファミリーも多く、セリのような掛け声が通りから聞こえてきて気持ち良いし、一生懸命な人ばかりで環境的にも刺激をもらっています。

アートと隣合わせの生活の中で

今住んでいるWalthamstow / ウォルサムストウは、昔ウィリアム・モリスが住んでいたこともあり、アートカルチャーを盛り上げていこ うという姿勢があるエリアなんです。アーティストやデザイナーの仕事場があったり、コンセプチュアルなスーパーを作ったりして、暮らしの中にアートを感じる瞬間が多い。息子の学校もアートカルチャーに力を入れた教育をしていて、家族にとっても、良い環境だなと思っています。

人と違っていることを応援してくれる場所

ロンドンは自分のやりたいことを発信していたら、面白がって人が寄ってきてくれる場所だと思います。みんな一歩踏み出すことに対してあまり恐れがなくて、やってみてダメでも、それは失敗じゃないし、何とかなるさ精神がありますね。それから、まだロンドンに来たばかりの頃、自分で何かをやっていたわけではなかったので、単に “彼の彼女” と呼ばれていて、あまり名前を覚えてもらえなかったんです。正直、とても悔しかった。そういう経験もあって 「私はこういうことをしている中川綾です」 と、堂々と名乗りたい気持ちから、今でも前向きに挑戦できているのかもしれません。

作品を通して価値観を届ける

現在のブランド名「コレニモ(Colenimo)」は、これにもこれにも足せるという意味で名づけました。例えば、自分が買ったコートを次の世代が受け継いでいけるような、元々あるクローゼットに足して長く愛してもらえるように作っています。こちらの若い子って、普通におばあちゃんの時計をおしゃれに身に付けていたりして、そういう精神ってチャー ミングで好き。日本にいたときは、新しいものを着ないといけないと いうのがあったんですが、今は考えが変わりました。そんな想いと一緒に、大切にする価値観ごと届けていきたいです。
(インタビュー記事起こし:吉田真央)


ロンドンの好きなエリア:ウォルサムストウ

1. William Morris Gallery  ウイリアム・モリス・ギャラリー
モリス本人が青年期に住んだ家をミュージアムとして開放しています。カフェなどもありバックガーデンは彼のタペストリーなどに使われたであろう植物が花を咲かせています。その奥にはプレイグラウンドもあり、私たち家族連れでよく散歩にいきます。
https://www.wmgallery.org.uk

2. Rebel Coffee  レベル・コーヒー
お友達のアリスが2018年にオープンした内装も愛らしい小さなカフェです。こだわりのコーヒー豆は、彼女の大叔父がローストするイタリアから。グルテンフリーのイタリアン・フードも扱っています。
https://e17rebelcoffee.com/

3. Blackhorse Lane Ateliers  ブラックホース・レーン・アトリエ
唯一無二、ハンさんが運営するのロンドンのデニム工房。アトリエの見学やマスターデニムクラスも受け付けています。Kings Crossのショッピング・モール、Coal Drops Yardにも昨年出店し、そちらにはフルアイテムが揃い一生もののデニムに出会えるはず!
https://blackhorselane.com/

4. Wood Street Cafe  ウッド・ストリート・カフェ
ブラックホース・レーン・アトリエのすぐ裏手にあるカフェです。こちらのコーヒーもこだわりの自家ロースト。週末ブランチのオープンサンドはローカルのサワドーブレッドを使っていて、いつも人気で満席状態。
https://www.woodstcoffee.co.uk/cafe


中川 綾 Aya Nakagawa
愛媛県生まれ。高校卒業後に上京し、東京モード学園で学ぶ。卒業後、アパレル企業にデザイナーとして入社。約8年に渡ってデザインだけでなく、プレスや販売、生産管理などさまざまな経験を積む。2004年、退社と同時に渡英。ファッション・レーベルのアシスタントを経て2008年に自身のブランド「コレニモ」を設立。同年、ロンドン・ファッション・ウィーク中に初コレクションを発表。2008年、2009年にはパリの展示会ル・ショールームに招待された。生地にフォーカスし、ヴィンテージの風合いに現代らしさを取り入るスタイルで、時代を超えて愛される洋服を創り出している。基本的に英国内でデザイン、縫製、生産。現在は東ロンドンのコロンビア・ロードにスタジオ兼ショップを構える。

Colenimo
110A Columbia Road, London E2 7RG
土・日のみ営業 ・ 平日はアポイント制
www.colenimo.com
@colenimo

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About Author

MEG & 武山恵美

歌手でもあるデザイナーのMEG、サパークラブ「MEGUMIS」主宰の料理家、武山恵美が発起人となり、2019年にロンドンで活躍している日本人に話を聞いてコンテンツを起こす新ロンドン・ガイドブックを企画。しかし制作途中でまさかのパンデミックとなり、ブック形式の出版を一旦保留とし、取材を終えていたインタビュー・コンテンツを救うべくウェブメディア掲載へ。海外移住や海外での仕事を考えている人に刺激をもたらし、背中を押すきっかけになることを願って企画された。インタビュー起こし前半は吉田真央、後半はあぶそる〜とロンドンが手伝っている。

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