<Sticky toffee pudding スティッキートフィープディング>
スティッキー(=べたべた)?トフィー?なんだか甘そう~と思ったあなた、そう、確かに甘~いプディングです。でもこれが何故かもう一口、もう一口と欲しくなる甘さなのが非常に厄介なところ。数多あるプディングの中で「スティッキートフィープディングが一番好き !」 と答えるイギリス人も多い人気のプディング。
見た目は濃い茶色でそれほどそそられる感じでもないのですが、一度この味を知ると、どんなに地味な見た目でも「あ~美味しそう~」と思ってしまうから不思議です。
基本温めてサーブするものなので、秋冬が旬。あったかフワフワのスポンジにとろりとかかる温かいトフィーソース、脇にバニラアイスでも添えられていた日には、これはもう抗いようがありません。
このプディング、驚くほどしっとりしているのですが、このモイストな食感の秘密はデーツ(なつめやし)。デーツは刻んで軽く加熱してから生地に加えるため姿はほとんど見えず、言われなければ存在に気づかないほどなのですが、味と食感の上でなくてはならない存在。ただ、この基本のデーツの入りの生地を作ってしまえば、形はわりと自由。大きく作って切り分けても、小さく一人用に作ってもOK。そして加熱方法も作り手の好みにより、オーブンで焼く派、湯煎焼き派、お鍋で蒸したりとバリエーション豊富。
でもそもそものオリジナルはどんな風だったのか気になりますよね。人気者の定めか、これまた例のごとく、我こそは生みの母と名乗る人が一人ではないのですが~
とりあえず、定説は「Sharrow Bay」という湖水地方の湖畔に建つ瀟洒なホテルのシェフが1970年代に作り始めたのが始まりというもの。ここに異議あり~と唱えたのが料理評論家のSimon Hopkinsonさん。なんでも1971年出版の料理本にランカシャーのClaughtonでホテルを営んでいたMrs. Martinという女性がスティッキートフィープディングのレシピを載せているというのです。そしてそのMrs.Martinの息子さんから連絡を受けて話を聞いてきたところによると、彼女はカナダ人の知り合いからそのレシピを教えてもらったとのこと。ということはスティッキートフィープディングはカナダ生まれということ?
湖水地方生まれにしろ、カナダ生まれにせよ、かなりイギリス中で市民権を得ているのでどんなに古株なのかと思いきや、1970年代生まれと、イギリスプディングとしては案外新参者だったりするスティッキートフィープディングです。
ちなみにMrs.Martinのレシピは長方形の型に生地を入れてオーブンで焼き、焼き上がったその上にトフィーをかけてグリルの下でもう一度ふつふつっとする程度に加熱する、というレシピです。
これも試してみたところ、スポンジにしっかりトフィーが染み込んで、なかなかの美味しさ!
下の写真は件のシャロウベイホテルのスティッキートフィープディング。まるでビーフシチューのような迫力です。たっぷりのトフィーソースにアイスクリーム。この上にさらに生クリームを回しかけていただきました。

シャロウベイホテルでいただいたスティッキートフィープディング
ダイエットなんて言葉はこのプディングの前では雲散霧消。
デーツは確か美容と健康にいいらしいし、ブラウンシュガーもミネラルたっぷりで体にいいはず。
美味しいプディングは心の栄養。
暗く長く寒いイギリスの冬、凍えた体も心もじんわり温めてくれる至福のプディングです。
どこかで巡り合えたら是非ともお試しを!