皆さんはストップモーション・アニメーションとは何かをご存知でしょうか? 静止しているものを少しずつ動かし、撮影し、それを 重ねることでまるで動いているかのように見せるアニメーション。この現代、3DやCG などが隆盛な中、実にアナログな作業を繰り返さなくてはいけない。プロセスを見ていると正に果てしない旅。 もしかして一生終わることはないのではないかと思わされる。まみさんはそんなアニメーションを制作するアーティスト。彼女はこの作業とウラハラにとてつもなく行動的。バッククランドはクリエイティブというよりアカデミック。20 代半ばでこの世界に入ったことを、遅いデビューと悟りそこからどう生き抜いていくかをきちん と論理的に考え行動する。常に行動的で潔い。きちんとゴールが見えていてそこへ向かって回り道はせず一直線に向かう。 初めて彼女に会った時、忘れもしない「イギリスに住みたい」と言っていた。その思いを一途に歩んだのだと思う。有言実行、簡単なようで一筋縄ではない。(武山恵美)
梶保まみ「多様性を受け入れてくれる場所」
彼との出会いから移住を決意
私が作っているアニメーションは人形などを1枚1枚写真で撮って繋げるストップモーションというスタイル。1日で作れるのは 頑張っても10 秒ほどのすごく手のかかる作業です。 元々、早稲田大学で経済を専攻し全然違う分野を学んでいました。初めてアニメーションを作りたいと思ったのは、23 歳の頃。映画館でチェコのストップモーション・アニメーションを観た時に、レトロでシュールな可愛さに、「なにこの世界♡」と一気に引き込まれました。ティム・バートンがナイトメアをストップモーションで作っているのも好きで刺激を受けていたので、 やってみようと思ったんです。ヨーロッパは商業用として成功している分野なので次第に海外に目を向けるように。
イギリスに来たのは1年前、 結婚を機に移住してきました。その前まではテレビ系のアニメーションの仕事をしていたんですが、元々海外に興味がありワーホリを利用してベルリンで暮らしたり、語学留学でロンドンに来たりしていたので、仕事を続けながらも、またロンドンへ戻りたくて大学院に進もうかと考えていたとき、出会ったのが今の夫でした。彼が私の行きたい大学の卒業生だった事もきっかけとなり、そのまま恋愛に発展。 彼は語学を学びに日本に来ていたので、出会ってから1・2カ月後には帰国することが決まっていて。ふたりで居る関係を続けていくためにはどちらかが、 移住しないといけないよねという話になり、付き合って半年ほど経った頃、私がイギリスへ来ることを決意しました。
自由で優しいロンドン
ロンドンの人はみんな自由だなとよく思います。電車の中でもあまり周りを気にしすぎたりしてない感じ。餃子をがっつり食べていたり、フィッシュ&チップスを広げていたり(笑)。日本だと、食べるとしてもチョコバーやガムなんかをこっそり口に入れる程度ですよね。 新幹線以外では、基本、食事はしない。それが日本の暗黙のルールというか。でもロンドンに来て驚いたのは、地下鉄でも道端でもお腹がすいたら食事をするし、服装も季節感も気にしないし、着たい服を着てるんだなというところ。人の目を気にせず、自分に正直な感じがいいなと思います。あと、すごく素敵なのは、妊婦やお年寄りにとても優しいところ。妊娠していたときは99%席を譲ってもらえました。どんなに電車が混んでいても席を空けてもらえたし、気づいて順番なども譲ってもらえたので、外を出歩くのも割と安心して過ごせました。
海外で初めての妊婦生活
日本の妊婦雑誌で読んでいた妊娠中の注意点などを、こっちの先生に確認すると「大丈夫、大丈夫、気にしないで!」と結構ラフな感じで返されます。日本だと、体重や食事の事だったり、かなり細かいですよね。 ちょっとした体調の変化だったら、どうにかなるよ!と励ましてくれます。大変なことへ向かうというより、出産はハッピーなイベントだから、あまり神経質にならないようにと、明るい雰囲気で接してくれるような気がします。 妊娠中に一番ダメなことはストレスを感じることで、例えば体重を増やしちゃいけないから … と、食欲を我慢してストレスを感じるくらいなら、食べた方がいい!という考えだったり。そういった感じで、まず母親のポジティブなマインドを大切にしてくれます。
離れて見えてきた日本の魅力とイギリスの寛容さ
日本の好きなところは、接客がとてもきめ細かくて気持ち良い。お店でもスタッフの方は品があるし、何を言わずともお水を足してくれる気遣いだったり、サービス面は改めて素敵だなと感じます。イギリスはアートや文化だけでなく、色んな人の多様性を受け入れる寛容さがすごい。どんな事をするにしても、全部受け入れてくれる度量があるなってよく感じます。
昼夜で雰囲気が変わる Brixton
Brixtonは大好きなデヴィット ・ボウイの出身地ということで以前から知っていました。移住するという話になったときに、夫から、そこの近くだと聞いてすごく嬉しかったんです。昼はマーケットが開かれているのでとても活気づいているし、夜にはバーもオープンして音楽イベントやクラブも賑わう若者の街に。昼と夜で雰囲気が違うので1日中楽しめるのが魅力です。街歩きを楽しみたい人はお昼にマーケットやアーケードで買い物もいいし、ロンドンらしい夜を楽しみたい人は音楽とお酒をハシゴするのも楽しい過ごし方だと思いますよ。
子育てと仕事を両立していきたい
子育てが落ち着いてきたら、イギリスのケルト神話など昔話からアニメーションを作って、そこからまた絵本として落とし込んだりしたいなと計画中。大きい作品にも関わっていけるように頑張っていきたいです。
(インタビュー記事起こし:吉田真央)
ロンドンの好きなエリア:ブリクストン
Brixton Villageの中にあるプチ大阪。ロンドンでお好み焼きを食べたくなったらここ!
https://www.okanlondon.com/okan/brixton-village/
梶保 まみ Mami Kajiho
ロンドン在住のコマ撮りアニメーション作家。「アート・アニメーションのちいさな学校」夜間人形アニメーションコース卒業後、制作を開始。札幌国際短編映画祭やAthens Video Art Festivalなどの映画祭で個人作品が上映される。 主なクライアントワークは映画やテレビ番組のタイトル、ミュージックビデオなど。またファッション・ブランドやフード・スタイリストとのコラボレーションでも映像を制作している。インスタグラム:@mami_stopmotion
https://mamikajiho.com