東ロンドンの勢いを象徴するイレズミ・シェフのプレイ・ルーム

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Cornerstone  コーナーストーン

2012年ロンドン・オリンピックでは、ストラットフォードに隣接する共同開催地としてググンと開発が進んだハックニー・ウィック。アーティストが多く住む町という漠然とした印象しかなかったのですが、私自身も近年になって初めてちょくちょく来るようになりました。というのも、本日ご紹介する2018年創業のCornerstone、英国初の廃棄ゼロ・レストランSiloなどが2019年にこのエリアに登場したのを機に、グルメ分野でも注目されるようになったからなのです。

最寄りのオーバーグラウンド、ハックニー・ウィック駅はコロナ前に改築されたらしく、遊び心がありながらもすっきりとしたコンクリートのデザインが現代的。気持ちよく駅を出た途端、この風景が目に飛び込んできて、ビビビッときました(笑)。

駅に向かってパシャり。

町はストリート・アートの宝庫。アーティストが一丸となって景観作りに励んでいるような印象なんですよね。工場地帯として発展したハックニー・ウィックだけに、工場や倉庫として作られた建物にアートが施され、唯一無二の個性を発揮しています。

この角を曲がります。

曲がるとこんな風景。どんどん工場の方へ入っていく感じw  ただし右手にはモダンなビルがそびえています。このコントラストが今のハックニー・ウィックを象徴しています。

この広場が目的地!

さて、やってきたのはこちらの一角です。ミシュラン一つ星を獲得しているフィッシュ・レストラン、Cornerstone!  2018年のオープン当初は私の周りでも話題騒然で、特にホスピタリティ業界に関わっている人からは絶賛されていました。私も友人に誘われ、ようやくやってきたのが今年の夏です。

奥正面に見えるレンガのビルの左側にくっついているモダンなパートが、今回のレストランです。

ここ。

古いレンガの建物に新しいエクステンションを付け加えた不思議なビル。この町の歴史に敬意を評し、新しい空間にオープンしたコーナーストーンも、内装はインダストリアルなまま。ハックニーらしい空気を大切にしています。

O字型のカウンター内でシェフたちが忙しく立ち働いています。この日は残念ながらトムさんはいませんでした!

このレストランの主人は、今では飛ぶ鳥を落とす勢いという言葉がピッタリとくるセレブ・シェフのTom Brownさんです。トムさんはコーンウォールでミシュラン2つ星レストランを引っ張るシェフ、Nathan Outlawさんの元で長らく右腕として働いた後、自身のソロ・レストランを持つという夢を実現しました。

もともとコーンウォールで生まれ、海の近くで育ったトムさんは、かのお魚専門のテレビ・シェフ、リック・ステインさんのレストランからスタートして現在の地位を築き上げたのですよね。つまり魚の知識も料理の腕もピカイチ。その両腕にはイレズミがびっしり施され、シェフとしての矜持を見せつけています。まだ34歳の若さで、確か昨年結婚されたばかり。今後がますます楽しみです^^

さて、期待を膨らませて望んだこの日のランチ。まず突き出しで出てきたのがスモークしたタラコのクリームがたっぷりと詰まったシュー。まったり濃厚なお味です。そしてシグニチャーでもあるサーモンのパストラミ! パストラミ風の胡椒風味が良きアクセントとなり、舌触りもまろやかで素晴らしい燻製でした。

シュー生地で包んだスモーク・コッドロウ

サーモンのパストラミとサワードゥ・ブレッド。

前菜風のセクションから、ホタテの刺身にグリーンカレー・ソースを合わせた一品。生のホタテにグリーンカレー!  ハーブの香りが程よく漂い、グリルした野菜の火加減もほどよく、この日のメニューの中で際立ってクリエイティブだと思った逸品なのであります。感動。

生のホタテとグリーンカレー・ソース

実は感動が続いたのはここまでで、主菜と思われるセクションから選んだ2品は、味はもちろんいいけれど、一皿20ポンド以上しなくてはいけない理由があまりわからず・・・ ^^;

自家製クランペットとシーフード・カクテル

シーフード・キエフ

シーフード・カクテルを自家製クランペットにのせた一品は、写真通りのお味。さほどひねりも感動もなく・・21ポンド。続く白味魚のキエフ風はシュリンプ・バターを添えた一品。衣もカリカリで美味しくはありますが、これで24ポンドと言われると?という印象を受けてしまいます。メインのお皿にこれだけ払うのはやぶさかではないですが、衒いのないタパスっぽい印象なんですよね。シンプルだけど最高の食材を使った一流シェフによるお料理であり、感想はもちろん人それぞれだとは思うのですが、一緒に行ったグルメな友人も同じ感想を持ったようなので、もしかするともう一工夫必要なのかもしれません。

というわけで私たちは中心部の高級レストラン並みの12〜14ポンドしたデザートの量とクオリティに疑問を持ち、甘いものはパス(笑)。そのまま辞去してオットレンギのケーキをいただきました(笑)。何に期待を持っていくかってあると思うのですが・・・近所のお金持ちは通ったりするのかな〜?と漠然とした感想を持ったコーナーストーンだったのであります。

ちなみにこの日の客層は意外と年齢層高かったんですよね。ハックニー・ウィックというよりも北ロンドンっぽい客層w  もちろん若い層も来ていましたけれども・・・ふだんはどんな人たちが来るのかな。

このカフェに行ってみたくて後日再訪したのに臨時休業だった・・・

とは言えハックニー・ウィックは、テムズ川の支流であるリー川の流れが興趣を添える本当にユニークな町です。運河沿いを歩いているだけで、地元のクリエイティブな人たちから元気をもらえる活気あるコミュニティ。

うらびれた労働者階級の町から、テック系で富をなした若い世代が人生を謳歌する最先端エリアへ。住宅価格は上がり、貧困層は住みづらくなったことを指摘されつつも、治安の活気の向上は何物にも代え難いと思う人が大半なのではないかと思います。古き良き地元の遺産を残しつつ・・・。

10年前は官民一体で再開発、頑張っていましたよね。オリンピック後の地域開発のお手本になるんじゃないかな? なんて思った気持ちの良い午後の散歩でした。

3 Prince Edward Road, London E9 5LX

店名Cornerstone
最寄り駅Hackney Wick
住所3 Prince Edward Road, London E9 5LX
電話番号020 8986 3922
営業時間火 18:00 – 21:00水〜土 12:00 – 14:00 / 18:00 – 21:00
URLhttps://www.cornerstonehackney.com
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岡山県倉敷市出身。ロンドンを拠点に活動するライター、編集者。東京の文芸系出版社勤務、雑誌編集・ライターを経て、1998年渡英。英系制作会社にて数多くの日本語プロジェクトに関わった後、2009年からフリーランス、各種媒体に寄稿中。2014年にイギリス情報サイト「あぶそる~とロンドン」を立ち上げ、編集長として「美食都市ロンドン」の普及にいそしむかたわら、オルタナティブな生活、人間の可能性について模索中。著書に『歩いてまわる小さなロンドン』(大和書房) 『ロンドンでしたい100のこと』『イギリスの飾らないのに豊かな暮らし 365日』『コッツウォルズ』(自由国民社)。NHK文化センター名古屋教室「江國まゆのイギリス便り」講師。MUSIC BIRDのラジオ番組「ガウラジ」に月一でゲスト出演。チャネリングをベースとしたヒーラー「エウリーナ」としても活動中(保江邦夫氏との共著『シリウス宇宙連合アシュター司令官 vs.保江邦夫緊急指令対談』もある)。Instagram: @ekumayu

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