St. Ermin’s Hotel ★ スパイが暗躍したホテルで、午後のお茶を

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St. Ermin’s Hotel  セント・アーミンズ・ホテル

さまざまなホテルを訪れるたび、強く思うのは、「この巨大な組織を動かしているのは、人なんだなぁ」ということ。個性あふれる建築というハードウェアがあり、そして、おもてなしの心というソフトウェアがあり。私にとってホテルは、レストランと同じく、人のパワーを強く感じる場所の一つです。

イギリス行政の中枢であるウェストミンスターに、St. Ermin’s Hotelという中規模のホテルがあります。セント・ジェームズ・パーク駅から歩いてほんのすぐ。このホテルのことを私は今回初めて知ったのですが、何やらとても不思議な魅力を備えた場所だと思いました。


何が「不思議」だったのか・・・それは建物が放つ個性です。

現在のホテルがあるのは、15世紀頃にセント・アーミンという聖者を祀る教会が立っていた場所。それでセント・アーミンズ・ホテルというのですね。19世紀後半に、現在の建築の前身となるビルが建てられ、今の形になったのは1889年。セント・アーミンズ・マンションとして生まれ変わりました。そして直後に新しいオーナーシップの下、ホテルに転身。

ホテルに入って、一番驚くのはそのユニークなインテリアです。「こんなインテリア見たことない!」と誰もが思うでしょう(少なくとも私はそう思った)。大邸宅でありながら、どこか親しみを感じてしまうのは、こぢんまりとしたホールの大きさのせいかもしれません。

でも、そのホールがすごかったんです (☆。☆) 2階の踊り場へと続くこんなバルコニーが・・・

こ、これはっ。

流麗な曲線が特長ですねぇ。

ぐるりと設えてあるのです! まるで劇場のよう? このインテリアを担当したのは、ヴィクトリア朝時代の劇場デザイナーだったそうですよ。どおりで・・・!

どうしてこのホテルでアフタヌーン・ティーをしようと思ったのかって? アフタヌーン・ティーしたことがないという妙齢のイギリス人女性を、どこに連れて行けばいいか迷いに迷い、リサーチして見つけたのが、このセント・アーミンズだったのです。だって、このインテリアを写真で見たら、行きたいと思うでしょう?^^  こちらのホテルのホームページで、感覚をつかんでいただけると思います。

その2階の一画に、ティールームがあります。

ティールームもこぢんまりとしています。でもイエローを基調としたクラシカルなインテリアはなかなか味があり、アフタヌーン・ティーを終える頃には、すっかりと馴染んでしまいました^^

同じお茶を頼んだら、砂時計と一緒にでっかいティーポットで出てきました^^ ハウスブレンド!


アフタヌーン・ティーは、3 段トレイのクラシックなスタイル。スコーンは食べたい時に声をかければ焼きたてを持ってきてくれる嬉しいサービスです。つまり3段のうち2段は、甘いケーキが占める贅沢な構成なのです^^

私がこのセント・アーミンズのアフタヌーン・ティーをおすすめする理由を、いくつかあげてみましょう!

まずサンドイッチが美味しい! しっとりとしたパンに挟まれたサンドイッチは5種類。コロネーション・チキン、スモーク・サーモン&ディル・クリームチーズ、ハニーロースト・ハム&トマト・チャツネ、クレイフィッシュ&コリアンダー、ズッキーニのグリル&ミント・クレームフレッシェ。そのどれもが味のハーモニーを奏で、完璧なのです。アフタヌーン・ティーで、私は最もサンドイッチなどのセイボリーを重視するので、これは得点が高い。

キュウリではなくズッキーニで。

次に素敵なスコーン。先ほども書きましたが、声をかけると焼きたてが運ばれてきます♪  これは問題なく美味。小ぶりなホテル・スコーンであります。


そして上品なケーキ! 5種類が用意されたスイーツは、どれも手作りとわかる仕上がりで洗練された甘さでした。マンゴーとパッション・フルーツのチーズケーキ、ココナッツ・ムース&パイナップル、ストロベリー&クリームのマカロン、レッド・ベルベット&クリームチーズ、そしてピムスのジェリー!


私のお気に入りはレッド・ベルベット、ストロベリー&クリームのマカロン、ピムスのジェリーでした。特にマカロン・ファンでない私を唸らせたストロベリー&クリームのマカロンは、さっくりとした軽さとイチゴの爽やかさにノックアウトされました。(ピムスのジェリーもさっぱりと美味しくいただきましたが、アルコールもちゃんと入っているのでアレルギーの方は気をつけて。)

その他、ヴェジタリアン、ヴィーガン、グルテン不使用などにも対応しているので、ご自身に合ったものをメニューからお選びくださいね^^

そうそう、言い忘れるところでした。お値段もオススメの理由。これで38ポンドです。5つ星ホテルのアフタヌーン・ティーが軒並み50ポンドを超える傾向にある中で、なんて良心的な価格設定なのでしょう。ここは大きなポイントで、しっかりとお腹を膨らませたい方、ちょっとしたAT体験をしてみたいだけの方、その両方にアピールすること間違いなし。(私の友人のように)アフタヌーン・ティー初心者の方には、本当におすすめの内容です。ぜひぜひ試してみてくださいね^^

ホテルの各所に休憩できる場所が♪ 夏はテラス席もオススメ!

さて、話をホテルの歴史に戻しましょう。

1940年になり、世界が第二次世界大戦に突入していく中で、ときのウィンストン・チャーチル英首相がエリート・メンバーを集めて戦争会議を開き、有名なSAS(特殊空挺部隊)の前身を編成したのがここ。戦時中、セント・アーミンズは政府の戦争本部となり、上階に設置されたMI6と協働して司令を出したとのことですよ。すごい歴史舞台ですね^^ チャーチル首相はホテルのバーでよく大好きなお酒を飲んでいたそうです 😀

さらに時代は下り、冷戦時代はロシア側に情報を渡した国賊スパイが、このホテルを暗躍の場に使ったとか使わなかったとか・・・^^;  こんな彩りのある歴史を秘めたセント・アーミンズでは、ロビーに暗号文を印刷したメモラビアや、第2次世界大戦中の実戦具の特別展示もあります。

正直・・・最新鋭のホテルを多くみていると少し野暮ったさも感じてしまうセント・アーミンズなのですが、そこになぜか郷愁も見出すことができ、冒頭で述べた「不思議」という感想を抱くことになったのであります。

ご自身の目で、ぜひ確かめてみてください。

St. Ermin’s Hotel
Caxton Street, London SW1H 0QW
アフタヌーン・ティー £38.00(シャンパン付き£43)
毎日 12:00 – 17:00
https://www.swanlondon.co.uk

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岡山県倉敷市出身。ロンドンを拠点に活動するライター、編集者。東京の文芸系出版社勤務、雑誌編集・ライターを経て、1998年渡英。英系制作会社にて数多くの日本語プロジェクトに関わった後、2009年からフリーランス、各種媒体に寄稿中。2014年にイギリス情報サイト「あぶそる~とロンドン」を立ち上げ、編集長として「美食都市ロンドン」の普及にいそしむかたわら、オルタナティブな生活、人間の可能性について模索中。著書に『歩いてまわる小さなロンドン』(大和書房) 『ロンドンでしたい100のこと』『イギリスの飾らないのに豊かな暮らし 365日』『コッツウォルズ』(自由国民社)。NHK文化センター名古屋教室「江國まゆのイギリス便り」講師。MUSIC BIRDのラジオ番組「ガウラジ」に月一でゲスト出演。チャネリングをベースとしたヒーラー「エウリーナ」としても活動中(保江邦夫氏との共著『シリウス宇宙連合アシュター司令官 vs.保江邦夫緊急指令対談』もある)。Instagram: @ekumayu

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