鮨のポテンシャルを無限に拓くシェフ

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Sushi Masa The Fine Sushi Bar –  鮨正 ファイン・スシ・バー(閉業)

【2020年2月29日追記】
2020年3月から4月末まで、Sushi Masaは別ポップアップ主催のためクローズするそうです。残念! 5月以降の予定はまだ聞いていません。ご興味のある方は、4月以降、電話などでご確認くださいね。

【2020年10月29日追記】
安田シェフはSushi Masaを退かれ、ノッティング・ヒルに新しくできる予定のレストランに移られると聞きました。下記のレビューは美しい記録として読まれてください^^

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デスティネーションになる予感・・・。

北ロンドンの高級エリア、Chalk Farmに「The Fine Sushi Bar」のサブ名を持つ素敵な鮨バーがオープンしたと聞いて、行ってまいりました。

ここはもともとHashiという和食屋さんがあった場所で、オーナーはFinchley Centralで居酒屋ジャパンをスタートして成功させ、Willesden Greenに鮨正をオープンし、好評のうちに定着させたという手腕を持つ方。その彼が新しいスシ・シェフを迎えて再挑戦するのが、鮨正 –ファイン・スシ・バー –です。

こういう夜を心底アプリシエートできるあなたは、やはり日本人♪

すっきりとした、いいカウンターです。

お店に入るとき、看板にあった「The Fine Sushi Bar」というステートメントを目にして、なぜかドキっとしました。そこに揺るぎない自信と、「絶対的に良いものを届ける」という決意のようなものが感じられたからです。

新生Sushi Masa ベルサイズ・パーク店の寿司カウンターを、12月3日から取り仕切っておられるのが、安田シェフ。ロンドンの名だたるプレミアム日本食レストランでスシ・シェフをされていた方で、日本では料亭の世界におられたという本物を知る方。ご縁あってこちらでヘッドシェフとして当番されることになりました。

安田明徳<あきのり>さん。鮨の可能性をマックスに引き出す素晴らしい職人さんです。右はお任せコースの3種の刺身。まったりまろやかの幸せ。わさびが本物。この日は獺祭純米大吟醸を合わせてみました♪

シェフが経験で選んだ魚たち♡ 幸せそう。

この日、カウンターで私の隣に座られた紳士がおられまして、なんと彼は、ロンドン南西部郊外から、わざわざ1時間半以上かけてSushi Masaに来られていました(往復3時間以上ですね)。お仕事が近郊で終わった後、平日の夜です。それは「安田シェフが握る鮨が食べたいから」。Yen時代から、安田シェフのフォロワーなのだそうです。

ロンドン在住歴の長いこの紳士は無類の鮨好きで、 ここでは具体名は出しませんけれども、新旧・価格帯問わずロンドン市内の名のある鮨処は一通り通われてきたのだそうです。その彼が「ここだけの話」と、私に耳打ちしたんです。「僕にとっては安田さんの鮨が、ロンドンでナンバーワン」だと。

お任せコースの小鉢はハマチ。柚子胡椒がいい仕事してます♪

カウンター席の醍醐味。いつまでも眺めていたい、職人さんの仕事 ^^

お隣の紳士が飲まれていた焼酎。「日本酒も好きなんだけどねぇ・・・やっぱり平日は焼酎かな」とのこと ^^

現在のところSushi Masaでは、オープン記念でお任せ握り8ピース+巻き1本に、刺身や小鉢、お味噌汁が付くコースを38ポンドで提供しています。お任せ握り8ピース+巻き1本だけの場合は25ポンド、もっと握りを堪能したい方には、12ピース+巻きのセットもあります(もちろん握りや巻き寿司はアラカルトも用意)。

私はお任せ8ピース+巻きのコースをいただいたのですが、もう目からウロコとはこのこと。正直に「鮨ってこんなに美味しいんだな・・・(美味しくなり得るんだな)」としみじみ、心から感激した次第です。じつは私・・・鮨ってふだん、そんなに進んで食べません。というのも、生魚を大量に食べられないからなんです(握りってネタが新鮮で大きければいいってことでもないですよね〜)。お刺身もお鮨も、上質のものを少しいただければ、それで大満足。とても美味しくありがたくいただきますが、たくさんは要らないタイプなのです。

でも! と言いますか、だからこそ!と言いますか・・・ここではっきり書いちゃいますが、安田シェフの鮨なら、いくらでも食べられそう・・・という感想を持ちました。理由はいくつもあります ^^  その理由を書く前に、安田シェフの芸術を、どうぞ♪

アジと炙り鯛。アジは身が二重になってるの。こんなの初めて。こういうの、最近は鮨の世界では普通なのかな?

サバとマグロ。サバも身が分かれていることで口の中に入れたとき、シャリとの一体感が違います。

中トロとホタテ。口福。

ヒラメとイカ。両者ともに包丁の技が光ってます! ヒラメは小さな身を炙ったものが背中にちょこんとのってるの。このため食感にも変化が。イカは切れ目がたっぷり入っているので、やはり口の中ですぐにシャリと一体化します。

右はハマチ+生姜+大葉のロール。こういうの大好物☆  左は別注文の大トロ+海苔! 極上わさびをちょこんとのせて。トロ系が好きな方は必食です。海苔のパリっとした香ばしさとトロの脂の相性が抜群。これぞ芸術!

究極のネギトロ巻き。右はトッピングに使われているヒマラヤン・ピンク・ソルト ^^

写真はもしかするとランダムになっているかもしれませんが、順番としては、ヒラメ > アジ > タイ > サバ > イカ > マグロ > 中トロ > ホタテでした。このリズムも大切。当然のことながら、コースとしてしっかりと組み立てられています。

安田シェフの鮨は、上記で見ていただいたようにネタに独特の工夫があるのですが、これは鮨を、魚とすし飯の総合芸術と捉えているからなのでしょうね。口の中に入れたとき、咀嚼したときの味と食感のバランス・・・。ネタへの工夫は他の鮨シェフさんも十分に考えていらっしゃると思うのですが、特筆すべきはシャリの美味しさでした。

安田シェフは日本米にこだわっているとおっしゃっていましたね。そして自分の酢に合う米を選ぶこと。彼のシャリは、一粒一粒が、ふわりと立っています。そのシャリの美味しさをさらに引き立てるのは握り方です。ふわっと、ほろっと。米粒一つひとつの美味しさをじっくりと噛み締めながら、ネタと薬味、調味素材とのマリアージュを楽しみます ^^  噛めば噛むほどじわりじわりと旨みが広がっていって・・・思わず目を細めてしまう。安田シェフの鮨からは、究極の職人芸を感じることができます。

その安田シェフを支えるのが、元同僚でもあるというベテランの吉山シェフ。彼も素晴らしい鮨を握ってくださいます。二人のコンビがまた最高。とても息のあった仕事をされるお二人なので、カウンターに座っていてもリラックスして楽しくお鮨を食べていられます ^^  (←これってとても大切)

奥に写っておられるのが、吉山シェフ。お二人とも朗らかなお人柄で和みました ^^

テーブル席へと運ばれていった握りたち! 誇らしげですね ^^

安田シェフ特製の厚切りガリ!  最高! 箸休めとしても完璧。

卵は別注文です。非の打ちどころがないふわふわの極上品。お味噌汁も本物のお出汁が心にまで染み渡ります♡

さて、新生Sushi Masaの様子、ご堪能いただけましたか? この素晴らしい体験をさっそくSNSでシェアしたら、友人夫婦が行ってきたよ〜!とさっそく報告してくれました ^^   彼らは鮨にこだわりのあるご夫婦。その友人が「まゆさんの褒め方じゃ足りない。東京でもここまで繊細で洗練されたお鮨なんてそうそうない」と太鼓判を押してきてくれました ^^

奇を衒うような、変わり寿司がたくさん出回っている昨今です。それはそれで美味しいし、私も嫌いではないのですが、こうして真正・正統の進化系を見せつけられると、やっぱり鮨の心を本当に理解できるのは、日本人だけなのかな〜なんて、ちょっと思ってしまいました。

年末年始は25日、26日、29日、1日以外は、月曜も特別営業するみたいです(通常は日・月定休)。年の瀬、お正月をスペシャルに楽しみたい方は、ぜひ訪れてみてくださいね。

 

91 Haverstock Hill, London NW3 4RL

店名Sushi Masa - The Fine Sushi Bar -
最寄り駅Chalk Farm / Belsize Park
住所91 Haverstock Hill, London NW3 4RL
電話番号020 7722 8999
営業時間火〜土 18:00 – 22:00
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岡山県倉敷市出身。ロンドンを拠点に活動するライター、編集者。東京の文芸系出版社勤務、雑誌編集・ライターを経て、1998年渡英。英系制作会社にて数多くの日本語プロジェクトに関わった後、2009年からフリーランス、各種媒体に寄稿中。2014年にイギリス情報サイト「あぶそる~とロンドン」を立ち上げ、編集長として「美食都市ロンドン」の普及にいそしむかたわら、オルタナティブな生活、人間の可能性について模索中。著書に『歩いてまわる小さなロンドン』(大和書房) 『ロンドンでしたい100のこと』『イギリスの飾らないのに豊かな暮らし 365日』『コッツウォルズ』(自由国民社)。NHK文化センター名古屋教室「江國まゆのイギリス便り」講師。MUSIC BIRDのラジオ番組「ガウラジ」に月一でゲスト出演。チャネリングをベースとしたヒーラー「エウリーナ」としても活動中(保江邦夫氏との共著『シリウス宇宙連合アシュター司令官 vs.保江邦夫緊急指令対談』もある)。Instagram: @ekumayu

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