Speedboat Bar スピードボート・バー
ロンドナーは大体、新しいものよりも古いものが大好き。だから新しいお店でも、レトロな情緒があればあるほど好まれる傾向にあります。そんな志向を知ってか知らずか、新しいのに古い、ちょっぴりキッチュなタイ料理レストラン&バーが昨年秋、中華街のほとりにオープン。爆発的な人気となっているのでご紹介しましょう♪
その人気のヒミツとは・・・
私もこの気どらない雰囲気にやられました。新しいのに、いい具合にくたびれている。これぞロンドン・クール。開店前からちらほらと人が並んでいて、ドアが開くと1時間もしないうちにほぼ満席に。何に驚いたって、ロンドンでよくある通常の「タイ料理レストラン」で予想されるようなメニューが何一つとしてなかったことです・・・! タイ風さつま揚げは? パドタイは???
調べてみるとここはバンコクの中華街ヤワラートをテーマにした庶民派レストラン&バー。だからタイ料理と中華料理がブレンドされたような不思議なメニューとなっているのですね。私はタイに行ったことがないのでこのメニューにどれだけ説得力があるかわからないのですが、ほんの20種程度のメニュー構成から、現地の香りが強く漂ってくるのであります。
もっと楽しげなのがドリンク・メニュー。カラフルなラミネート・メニューに郷愁をそそられますね^^ 現地の庶民バーでいただけそうなカクテルやジュースがいっぱい。さすがにトロピカルなものが多いです。ハニーとジンジャーを加えてシャリシャリに凍らせたジェリー・ビールも! これは夏にスパイシーなお料理と一緒に試してみたい。ソフト・ドリンクの種類も俄然多く、タイのカルチャーをロンドンにいながら肌で感じられる愉しさがあります。
通常のタイ料理店で注文するようなものが見当たらず、迷いに迷って決めたのがこちら。まずは軽食セクションからティースモーク・ダック。そして炒め物セクションから小ナスのチリ&タイ・バジル。いずれもストリート・フードの定番といった趣で「すわここはバンコクか」と錯覚する現地感にあふれており、かつ非常に美味。スパイス使いもピリ辛感も薬味の妙もあり、はっきり言って洗練されまくってます。
サラダ・セクションから選んだチキンとグリーン・マンゴーのサラダが想像していたものと全く違ってスパイシーな和え物風。ご飯が進みます^^
そして本日の締めはSpeedboat Bar名物の鉄鍋でいただくトム・ヤム・ママ! すごい迫力です。
トム・ヤム・ママはバンコクの老舗レストランのメニューからヒントを得ているというヌードル鍋。マイルドなココナッツ・カレー・スープに卵黄を混ぜ込み、タイのMamaというブランドの人気インスタント・ヌードルをハフハフしながらいただきます。ライムとハーブが決め手! 豪快にイカ、エビ、豚肉が具材としてゴロゴロ踊っております。これはなんというか・・・衝撃的なお鍋。見た目通り、クセになる美味しさ。私たちは2名でいただきましたが、男性なら一人でひと鍋ペロリといってしまうかもしれません。これで25ポンドです。お値打ち!
ちなみに鍋の下に火を灯したキャンドルがくっついてきますが、これは煮た立たせる役割ではなく、温めておくためのものなので、運ばれたらすぐ食べられます♡ 日本人はついついグツグツ言い始めるのを待ってしまいそうですが・・・^^; いや〜やはりこれをいただくためにリピートしたいと思わせるパワーがみなぎっております。
デザートは1種類のみ。タイのいたるところにあるセブンイレブンでもおなじみと言う、パイナップル・パイに、タロ芋のアイスクリームを添えたもの。これは懐かしい感じのお味で、マクドナルドの温かいアップルパイのパイナップル版みたいな感じ。やはり一人で1個、いけそうです♡
この「バンコクのチャイナタウン」コンセプトを打ち出してきたのは、今のロンドンで最も輝いているレストラン事業家のお一人、ルーク・ファレル / Luke Farrellさん。すでにフードコートArcade内にあるPlaza Khao Gaengをはじめ数々のアジア・コンセプトのお店を成功させています。
Arcadeといえばとっても勢いのあるレストラン・グループ、JKSが手がける物件ですが、ルークさんはJKS出身のシェフだったのですね。その彼が今 JKSとの提携でタイの本場の味をイギリスで再現すべく奮闘されているわけです。ルークさん自身はタイに15年間暮らし、現地のキッチンで働いてきた経験から、私が冒頭で書いたようなロンドンのタイ料理レストラン事情を塗り替えたいと思っているわけ。
彼が最も力を入れていることの一つに、タイ料理をタイ料理たらしめるハーブやその他の植物を英国内で栽培し、サステナビリティを上げていく試みがあります。ルークさんの父上は鱗翅類学者で、なんとドーセットに蝶の養殖場を運営されているそう。そこでタイから持ち帰った何百もの種子や植物を栽培しているそうなのです。これってイギリス人が何百年も続けているプラント・ハンターの現代版のようで、なんだかイギリス人気質のようなものを垣間見る気がします。
結局、ロンドンの外食産業では現地食材を輸入して使おうとすればするほどコスト高になってしまうリスクがありますが、ルークさんがやろうとしているのは、現地のものをイギリスに持ち込んで育てようとする試みです。日本の紫蘇や柚子を使った料理が広まってきたのも、どなたかによる現地化の努力の賜物かもしれません。
と言うわけで、スピードボート・バーのお料理には、タイ経由ドーセット産のガランガルやターメリック、ホーリーバジル、レモングラスなどが使われているとのこと。農場ではタイのジャングルの土壌に近づけるために特別な混合土壌を使っているとのことで、風味も限りなくタイに近いのだとか。私たちはルークさんの試みに感謝すべきですね♡
ちなみに店名の「Speedboat」は、バンコクの運河を疾走する長いスピードボートに由来。2階のバーはもっと現地っぽい雰囲気で、壁にはスピードボート・レーサーの肖像画がたくさんかかっています。
あなたもバンコクのストリートを体感したくなったら、スピードボート・バーにGO!