現在、次世代テクノロジーとして、5Gの導入に熱い期待が寄せられています。一般に出回っている広告などでは、エキサイティングなこととして扱われていますが、その安全性には、まだ大きな謎の部分があるようです。5Gに関する研究も含めて、無線周波数電磁界についての文献を集めました。手元には膨大な情報量が山積みとなっているため、主要な部分のみのご紹介となりますが、現在に至る状況や対策法などを2号分に分けてレポートする予定です。
*以下、読みづらいと思うので、差し障りのない部分は、無線周波数電磁界をEMF(正確には、RF EMFsかもしれませんが)とさせていただきます。もしピンとこないなら、携帯/タブレットやブルートゥースなど、ワイヤレス・テクノロジーの使用により派生する電磁領域に入ること、と考えてください。
良くも悪くも未知数の可能性を秘める、5G
5Gは、真新しいテクノロジーではなく、混雑し始めた既存の3Gや4Gとは異なり、さらなる高周波領域を使用するものという理解でいます。今まで使われていなかった高周波層を使用することにより、情報の混雑を解消。高速で大きなデータのオンデマンド通信や、今までにないオンライン・サービスの提供を可能にするため、通信面でのメリットは多岐にわたるようです。導入にあたっては、既存のG3/G4ベースステーション環境をそのまま残して、5G専用の高周波ベースステーションを新たに設置するようです。大量の小型ベースステーションが至るところに必要とされるため、住宅の庭先や窓のすぐ外にも設置される可能性はかなり高くなります。その近くで暮らすことや仕事をすることによって受ける影響は未確認らしく、さらなる調査が必要とされています(1,2)。設置の際に拒否権があるかはさておき、家族に妊婦や成長中のこどもがいる場合、家のすぐ外にベースステーションが設置されるべきではないようです(3,4,5,6,7)。5Gによる人体への影響は今のところ表向きには安全と言われているものの、既存の問題に上乗せとなるわけで、その他との加算/相乗的な影響は未知数(3,4,5,6)。また、今までのEMFに関する研究や調査で明らかとなっている、人体や動物への影響にとどまらず、天気予報や地球観測の妨害など(8)、新たな問題を伴う可能性もあるようです。
問題は、一体どこに?
ここで問題となるのは、安全性とその基準。例えば、WHO/IRACによるモノグラム中、無線周波数による電磁界曝露のカテゴリー分類が、5G以前の段階で、すでに確認されている危険性などとはマッチしなくなっているため、内容の更新が問われ続けているようです。大企業などとの利害関係にない科学者や医師たちは、現在に至る各種のデータをもとに、純粋に一般市民の安全を危惧して、モノグラムの問題点に触れたコメントや抗議文を送っていますが、何も進まないどころか、5G導入は着々と進んでいるのが現状といえそうです。
2017年3月には、WHOと外部科学者たちとのミーティングがアレンジされました。出席したスエーデン人研究者 (スエーデンは携帯電話の普及とともに先頭を切って、調査記録を残している国だったように記憶しています)による同年のリビューでは、WHOの体制や内部の事情に問題があることを指摘し、さらには「その他にも抗議を申し立て、専門家の見解でコメントしている科学者や団体がいるものの、全て無視されているようだ」とコメント。また、このミーティングでWHOを訪れた際、オフィス内各所を測定し、無線周波の測定値がストックホルム中央駅と比較して130倍低かったことも付け加えています。(9)
同研究者のチームは、2018年にストックホルム市街地の各地で、 無線周波(5Gは導入されていない)を測定した調査結果を発表。特に気になったのは、建物の屋上に設置されている、ベースステーション付近のアパートメントに関する記述部分です。その測定値によると、調査した複数のアパートメントは人が住んでいる場所であるにもかかわらず、長期居住向けでないこととともに、特にこども向きではないと強調(2)。これは、先進国の市街地に共通することかもしれないので、大きな問題だと思います。
今後を考える前に、現在の状況改善を
前述のとおり、5Gは小型ベースステーションが小さな間隔で大量に必要とされるため、例えば、リスクを避ける目的で自宅のブロードバンドをケーブル接続にしている人たちも、無条件に近くのベースステーションによる影響を受けることになります。以前にも触れましたが、何らかの形で個人が抱えられる許容量を超えれば、電磁波過敏症を発症することもあります。スエーデンでは、この症状が公に機能障害として認識されており、特に胎児から10代中盤までのティーン、病弱な人、高齢者、の発症リスクは高いであろうとしています(10)。EMFも含めて、環境によるストレスは増す一方なので、今後過敏症発症者が急増する可能性は大いにあると思います。
*EMFに関しての基本的なことは、005号と028号をご覧ください。
また、2017年9月には、世界35カ国から180人以上の科学者や医師たちが結束し、安全が確認されるまでは5G導入に反対する声明文を全員の署名付きで発表(余談ですが、署名リストには日本人が一人もいないことを、ふと不思議に思いました)(11)。その後、別の抗議では署名数がさらに増え、世界41カ国から244人の科学者たちが、WHOとUNに対し、人工的な電磁界と放射線による一般市民の曝露軽減に向け、早急に対応するよう要請しています(12)。各団体や科学者たちの具体的なメッセージは多少異なるものの、全てが安全性を問うもの。その多くは、電磁界曝露による発がん性を、高リスクのカテゴリーに変更する必要性を訴えています。例えばその一つでは、すでに存在する各種のデータが証拠となるため、現在のモノグラム中グループ2B「人体に対し、発がん性を示すかもしれない」に分類されている部分を、グループ2Aの「恐らく発がん性である」または単純にグループ1の「発がん性である」に更新すべきだと指摘(13)。さらには、こどもの白血病・アルツハイマー・不妊/生殖機能低下(男女とも)・胎児やこどもの発達障害・自閉症・免疫機能低下など(14)、その他各種の異常が報告されているため、EMFの問題はもはやがんにだけには限定されません。
残念ながら、これらのメッセージは各種の異なる理由により、探さない限りは、まず公の目に触れることがないと思います。抗議文の内容や科学者たちの動きから、この状況は、利益やエゴの方が大切な人たちにコントロールされているという印象を受けました。EMF自体の安全性が問われ続けているにも関わらず、高周波領域に新たなビジネスの可能性を広げ始めるとは、なんとも…。去年の春にはNOAAとNASAが、地球観測で使用している無線周波数領域を保護する目的で、アメリカのワイヤレス・ネットワークを取りまとめているFCCに、5G導入の見送り要請を試みましたが、その甲斐もなく、4月には5G高周波領域の一部が最低限の保護付きでオークションに出され、200億ドル近くの値がついて売れたようです(8)。
現在、5Gが導入され始めている世界各地(イギリスを含む)では、一般人のわたしたちをモルモットにした実験段階に入っているのかもしれません。こういったことは、まず表向きに報道されることはありませんが、すでに各地でいろんなことが起きているようです。イギリス国内でも、5G導入との関連はないと断言できない環境で働く複数の人が、同じ時期に突然死亡するなど、人命に関わる問題が浮上している疑いも報告されています。調べた限りでは、その安全性には疑わしいものがあるので、専門家たちの納得する安全性が確認されるまでは、できる範囲で防御モードに入っておくに越したことなないと思います。
ということで、次号ではEMFによる体調不良や関連の病気と、対策法などについて取り上げる予定です。
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追伸:スマート・メーター設置問題のその後
この記事を準備するにあたって、関連する過去の記事をいくつか振り返りました。以下、028号関連のアップデートです。 契約している某電気会社から「設置は、今なら無料のチャンス!」というメールが、未だに時折届くものの、2020年までの取り付けが「義務」付けられているという電話もメールも、もうありません。しつこい売り込み電話が連続した際に送った苦情メールの返信にも、はっきり「政府の要請で2020年までに設置が必要」とありましたが、すでに2019年は終了し、この件は、彼らの目論見どおりにはいかなかった、ということになりそうです。
スマート・メーターによって収集される個人情報には、かなり魅力的な金銭的付加価値が付いていたようですが、消費者側にはわたしのような立場(個人情報売買も憤慨ものですが、職業柄、人体への安全確認が必要+環境保護派でもあります)や、人権や道徳問題を問う人たち、環境保護派、そして真実を知ってこどもの安全を優先したい親たち(EMF問題では、学校相手のデモ活動などにも、当然ながら気合が入っています)もそれなりにいるわけで、なかなか思い通りには進んでいないと推測します。その後、参加できずに残念でしたが、イギリスのスマート・メーター反対派がアメリカから専門家を招いて、合法的に訴訟に持ち込み巨額の賠償金を要請する方法(そうすれば、スマート・メーターを使った情報収集の価値が落ちるため)を学ぶ会が設けられました。これはもちろん、訴訟を起こすことや賠償金が目的というわけではなく、一般市民のわたしたちが一個人として最大のインパクトを与えながら、合法的に一般市民安全確保への道を切り開くための対策。また、同じオーガナイザーのリードで、その後も何度か関連のイベントを催しているようです。当初期待された未知数の付加価値は、これらの理由により、その後価値が落ちて、特定の個人や組織からの興味を失い始めているのかもしれません。(そうであってほしいのです…。)スマート・メーターの問題は、まだまだ安心できませんが、とりあえずは問題なく、スマート・メーターなしで2020年を迎えていることをお伝えします。(笑)
ちなみに、スマート・メーターもワイヤレス・テクノロジーを駆使しているため、無線周波数による電磁界暴露を受けます。すでに自宅でご使用の場合は、他にできることを実行してからだへの負担を軽減しておくのことをお勧めします。EMFオタクのニック・ピノルト(Nicolas Peneault)が、とあるインタビューで「スマート・メーターは、アルミホイルを2重にしてカバーするとシグナルが弱くなる」と言っていたことを記憶しています。完璧にカバーすると、情報が飛ばなくなってスマート・メーターとしての機能を失うため、それはそれで問題。リンクから何か有効なことが見つかるかもしれないので、ご興味のある方は、彼のウエブサイトをチェックしてみてください。
参照:
- Simkó M and Mattsson M-O. (2019). ‘5G Wireless Communication and Health Effects—A Pragmatic Review Based on Available Studies Regarding 6 to 100 GHz’. International Journal of Environmental Research and Public Health, vol.16, no. 3406, doi:10.3390/ijerph16183406
- Carlberg M, Hedendahl L, Koppel T and Hardell L. (2019). ‘High ambient radiofrequency radiation in Stockholm city, Sweden’. Oncology Letters, no.17, pp.1777-1783, doi: 10.3892/ol.2018.9789
- Li DK, Chen H, Ferber JR, Odouli R & Quesenberry C. (2017). ‘Exposure to Magnetic Field Non- Ionizing Radiation and the Risk of Miscarriage: A Prospective Cohort Study’. Scientific Reports, vol.7, no.17541, doi:10.1038/s41598-017-16623-8
- Miller AB, Sears ME, Morgan LL, Davis DL, Hardell L, Oremus M and Soskolne CL. (2019). ‘Risks to Health and Well-Being From Radio-Frequency Radiation Emitted by Cell Phones and Other Wireless Devices’. Front. Public Health, vol.7, no.223, doi: 10.3389/fpubh.2019.00223
- Pall, M. (2018). ‘Wi-Fi is an important threat to human health’. Environmental Research, no.164, pp.405-416, https://doi.org/10.1016/j.envres.2018.01.035
- Santini SJ, Cordone V, Falone S, Mijit M, Tatone C, Amicarelli F and Di Emidio G. (2018). Role of Mitochondria in the Oxidative Stress Induced by Electromagnetic Fields: Focus on Reproductive Systems’. Oxidative Medicine and Cellular Longevity, vol.2018, https://doi.org/10.1155/2018/5076271
- Zarei S, Vahab M, Oryadi-Zanjani MM, Alighanbari N and Mortazavi SMJ. (2019). ‘Mother’s Exposure to Electromagnetic Fields before and during Pregnancy is Associated with Risk of Speech Problems in Offspring’. J Biomed Phys Eng, vol. 9, no.1, pp.61-68
- Witze, A. (2019). ‘5G data networks threaten forecasts’. Nature, vol.569.
- Hardell, L. (2017). ‘World Health Organization, radiofrequency radiation and health – a hard nut to crack (Review)’. International Journal of Oncology, vol.51, pp.405-413, doi: 10.3892/ijo.2017.4046
- Redmayne M, Johansson O. (2014). ‘ Could Myelin Damage from Radiofrequency Electromagnetic Field Exposure Help Explain the Functional Impairment Electrohypersensitivity? A Review of the Evidence’. Journal of Toxicology and Environmental Health, Part B, vol.17, pp.247-258, doi: 10.1080/107937404.2014.923356
- More than 180 scientists and doctors. (2017). ‘Scientists warm of potential serious health effects of 5G’. 5G Appreal. www.emfscientist.com (accessed on 28th December 2019)
- Bandara P, Carpenter D. (2018). ‘Planetary electromagnetic pollution: it is time to assess its impact’. Planetary Health, vol.2, www.thelancet.com/planetary-health (accessed on 28th December 2019)
- Bortkiewickz, A. (2019). ‘Editorial – Health effects of Radiofrequency Electromagnetic Fields (RF EMF)’. Industrial Health, vol.57, pp.403-405
- Belyaev, et al. (2016). ‘EUROPAEM EMF Guideline 2016 for the prevention, diagnosis and treatment of EMF-related health problems and illnesses’. Rev Environ Health, vol.31, no.3, pp.363-397, doi: 10.1515/reveh-2016-0011