045 | 虹色を食べよう

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このところの生活環境に合わせて、可能な限り日々を心地よく過ごせるよう意識のチャンネルを調節しましたか?今号では、見た目が美しいだけでなく、細胞レベルで健康をサポートする「虹色の食事(レインボー・ダイエット)」について取り上げます。特に夏には、カラフルな季節野菜や果物各種が数多く揃い、美肌から神経伝達物質や免疫システムまで、幅広く健康をサポートしてくれる優れものとなります。

レインボー・ダイエットとの出会い

初めて「Rainbow Diet(レインボー・ダイエット)」という言葉を目にしたのは、もう十年以上前のことで、まだナチュロパシーの勉強でカレッジに通っていた頃に遡ります。学校のラウンジ的な一角にいろんな広告や雑誌が置かれ、そのうちの一つ『ICON(アイコン)』という雑誌の中に、『The Rainbow Diet(レインボー・ダイエット)』という書籍紹介の広告として見つけました。ICONは、Cancer Active(キャンサー・アクティブ)という、イギリスのチャリティ団体によって発行され、ホリスティックな視点で(または、統合的なアプローチの一環として)がんを患う人たちに有効な情報を提供する雑誌。ちなみに、この『レインボー・ダイエット』の著者、クリス・ウールラムス(Chris Woollams)氏は、Cancer Activeの創立者でICONの編集長。なぜ彼がこれらを運営し、『レインボー・ダイエット』の出版に至ったかは、若くして悪性脳腫瘍で亡くなった彼の娘さんを助けようとして、リサーチを始めたことが発端となるようです。

新たなレインボー・ダイエット

食べ物の色を語る際には、その色素とチャクラ・システムと似た色別の性質をつなげて、ユニークなトリートメント・プログラムを提供しているDr.デアナ・ミニッチ(Deanna Minich)というリサーチャー兼プラクティショナーの存在が、個人的に外せません。彼女は数年前に、同じく『The Rainbow Diet(レインボー・ダイエット)』というタイトルの書籍を出版し、サイエンスの領域でもニュートリション関連の興味深いリサーチ文献を各種発表しています。その中には、色別に野菜や果物の抗酸化物質と抗酸化作用について取り上げたものがあります。その分け方を研究題材にする発想自体がとても彼女らしく、ユニークな内容となっています。各種のデータを集めたこの文献によると、 色素と色別の機能は…
赤色の食べ物:
抗炎症作用、一般的な抗酸化作用、免疫調節をサポート
(りんご、クランベリー、プラム、いちご、ラディッシュ、赤のパプリカ、トマトなど)
オレンジ色の食べ物:
脂溶性組織における抗酸化作用、ホルモン調節、排卵や生殖機能などにおける役割
(あんず、オレンジ、マンゴー、人参、オレンジのパプリカ、かぼちゃ、ウコン、など)
黄色の食べ物:
抗酸化作用、酵素活動、胃機能の調整、血糖低下、腸内細菌の健康をサポート
(なし、バナナ、レモン、パイナップル、トウモロコシ、生姜、黄のパプリカ、など
緑色の食べ物:
抗酸化作用、血管の健康、健康な血液循環やメチレーションをサポート
(ライム、オリーブ、 緑茶、アスパラガス、きゅうり、ピーマン、緑の葉野菜全般、など)
青/紫色の食べ物:
抗酸化作用、認知力、心の健康、神経細胞の健康をサポート
(ブルーベリー、いちじく、紫色のぶどう、プルーン、茄子、紫キャベツ、紫芋、など)
という分類分けになっています。(1)

元気の出そうな赤。

野菜や果物の色素

どちらの「レインボー・ダイエット」にせよ、色とりどりの野菜を中心とした「虹色の食事」が健康をサポートする、というポイント部分は同じです。緑・黄・オレンジ・赤と4色のパプリカが商品棚に陳列されると、これらの鮮やかな色が元気倍増をアピールするサインに見えるのは、気のせいではないかもしれません。これらに加えてトマトやきゅうりは、年中スーパーで手に入りますが、実は、夏の食べ物…。夏に摂取すると、最大限にパワーを発揮します。そして、その色素の部分には抗酸化物質が凝縮され、わたしたちを酸化のダメージから保護してくれます。抗酸化物質は、体内でからだの一部やエネルギー源にはならないため「非栄養素」に分類され、細胞内で常に行われている代謝に働きかけるなど、生理活性物質として機能するもの。同時に、体内時計を通して季節的な代謝の調節を助けるため(2)、旬の野菜や果物を積極的に取り入れることが、シンプルでパワフルな健康法となりそうです。

色の違いは、基本的に種類の異なる抗酸化物質によるもので、例えばトマトの赤はリコピン、人参のオレンジはβ-カロチン、ブリーベリーや紫キャベツの青/紫色はアンソシアニンなどによって構成されています(1,3)。各種の抗酸化物質から得られる効果はそれぞれ異なるため、これらを少しずつ幅広く摂取するのが有効だと思います。目指すところは、文字どおり「虹色の食事」。

半分レインボー。

植物に備わる防御システム

抗酸化物質が、主として植物に多く含有されることには、立派な目的があります。動物のように動き回ることのできない彼らには、完璧ともいえる独自の防御システムが備わり、抗酸化物質もその一部として、植物を外敵や環境から守るという重要な役割を担っています。植物は、必要となれば驚異的な機能を働かせて防御態勢に入ります。例えば、とある樹木は特定の青虫がついたことを察すると、身を守る目的で空気中に特定のケミカルを放出します。それによって、その青虫のみに卵を産み付ける特定のスズメバチを呼び寄せることができるのです。無駄がなく、とても洗練された機能だと思いませんか。植物たちは、この類のケミカルを各種持ち備え、それを使い分けることができると聞いています。また、色は視覚的なシグナルにもなり、小鳥などが食べごろの木の実を見つける際のサインとなるようです(その実を食べた鳥は飛んで移動し、種が糞の一部となって離れた場所に撒かれ、その植物の種族保存に貢献する仕組み)。また、植物によってはカラフルな花の色が、受粉の助けを求めるサインにもなるようです(4)。ちなみに、花の色も、抗酸化物質(ポリフェノール類)の各種によって構成されているため、食用花は残さずに食べるのがお勧めです。

季節野菜や果物を楽しくいただく

毎日の食事は、ホリスティックな視点で見ると、単に「栄養素の補給ができて、お腹をいっぱいにするもの」にはとどまりません。食べものの内容はもちろん、食事環境やその時の気分などを含めた全体が「食事」の時間を構成します。もし、カラフルな野菜各種を盛ったお皿が食卓に華やかさや楽しさを運ぶなら、(副交感神経を刺激して)効率よく消化吸収が行われる、と考えることもできます。そして、鮮やかな色素の各種は、植物同様に、わたしたちの体内でも防御効果を発揮し、同時に季節の情報を届けて体内時計の調整にも貢献しているのです。夏は、特に紫外線による肌へのストレス(酸化)が大きくなる時期。そんな時期に、多くの色鮮やかな野菜や果物が旬になることには、現在のサイエンスで解明されている以上に、大きな意味があるのでしょう。虹色の食事なら、内側からも肌の老化防止強化が図れます(5)。ぜひ取り入れてくださいね。

 

参照:

  1. Minich, D. (2019). ‘A Review of the Science of Colorful, Plant-Based Food and Practical Strategies for “Eating the Rainbow”’, Journal of Nutritional Metabolism. doi: 10.1155/2019/2125070
  2. Arola-Arnal A, et al. (2019). ‘Chrononutrition and Polyphenols; Roles and Diseases’. Nutrients. 11(2602). doi:10.3390/nu11112602
  3. Di Gioia F, at al. (2020). ‘Grown to Be Blue –– Antioxidant Properties and Health Effects of Colored Vegetables. Part II: Leafy, Fruit, and Other vegetables’, Antioxidants, 9(97). doi:10.3390/antiox9020097
  4. Dresp-Langley B and Reeves A. (2018). ‘Colour for Behavioural Success’, i-Perception, 9(2);1-23. doi:10.1177/204669518767171
  5. Petruk G, Guidice R, Rigano M, and Monti D. (2018). ‘Antioxidants from Plants Protect against Skin Photoaging’, Oxidative Medicine and Cellular Longevity, doi:10.1155/2018/1454936
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About Author

大阪府出身、1996年よりロンドン在住。ナチュロパス、ファンクショナル・メディスン・プラクティショナー、ニュートリショナル・セラピスト(mBANT, CNHCreg, mCHP, CFMP)。ハックニー地区にあるコンプリメンタリー・ヘルス・クリニックと並行して、オンライン・クリニックでも活動中。好きなこと:健康的でおいしいものを作って食べること、ナチュラル・ヘルス・フード・ストアでヒット商品を探すこと。好きな色:ピンク紫(夕暮れ時の空の色とか)。好きな言葉:(実現の状態を)見る前に信じること(”You’ll see it when you believe it.” by Wayne Dyer)。

2件のコメント

  1. LONDONEYEさま、コメントを残してくださり、どうもありあがとうございます!
    その後、レインボーに近い食事を楽しまれているのでしょうか。特に夏前後は、色鮮やかな旬野菜が揃いやすい時期です。イギリス国産を優先すれば比較的季節にマッチするものが揃って、さらにいいと思います。次号あたりでカバーするつもりですが、虹色の食事を助けるアイデアなどもご紹介できればと思っておりますので、よろしかったらチェックしてくださいね。

  2. 虹色の食事のおはなし、ありがとうございました!
    きれい色のお野菜を見ると、本当に元気がでてきますね。
    七色をそろえることは、なかなか難しい日常ですが、
    レインボーを心がけて、食事を準備するようにします!

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