平成後半生まれや令和生まれの方には全くもって馴染みのない「コンコルド」。しかし 昭和生まれの貴方なら、「ああ、いつか乗ってみたいなぁ」と憧れた方も 「イエーイ 乗ったことあるもんね」と言った方もいらっしゃるのではないでしょうか?
コンコルドって?
Concordeはイギリス(British Aircraft Corporation BAC)とフランス(Sud Aviation)が共同開発した超音速旅客機(supersonic transport)です。1976年から~2003年の27年間、営業運行されていました。 2003年以前からロンドンに住まわれている方はコンコルドが上空を飛んでくる時のダイナミックな「エンジン音」を覚えている方もいらっしゃるかと思います。
コンコルドの正式名称は「Concorde」と、フランス語のスペルなんですよね。(決定するまでに色々な大人の事情があったんだろうなぁと察してしまいます。)
ローマ神話の女神「Concordia」(コンコルディア)に由来しており、 英語のスペルの「concord」の両単語とも協調や調和の意味があるとのこと。 名前の提案はBritish Aircraft Corporation(BAC)の宣伝部長の息子(当時18歳)によるものだったそうです。
超音速旅客機の開発研究は1950年台から行われていましたが、1962年に 英仏両国間で共同開発の協定が結ばれ、 1969年3月2日にフランスのトゥールーズ / Toulouseでの 試作(プロトタイプ)製造番号 001/機体登録番号 F-WTSSによる 初の試験飛行が行われました。
この試作機は今もフランスのル・ブルジェ航空宇宙博物館 /
Musée de l’Air et de l’Espace du Bourgetに展示されています。
https://www.museeairespace.fr/
商業飛行の開始
1976年1月21日、成層圏をマッハ2(時速2,383キロ)以上で飛ぶ、超音速定期旅客便「コンコルド」の運航が開始されました。昭和51年のことです。
ブリティッシュ・エアウェイズのコンコルド機は BA300便 G-BOAA 機で(この機は1988年ニューヨーク-ロンドン間で2時間55分15秒を記録した機でもあります)初飛行はヒースロー発バーレーン行き、 同日エールフランスAF025便 F-BVFA 機はダカール(DKR)経由リオデジャネイロへの飛行でした。
以下、ブリティッシュ・エアウィズの記録からの抜粋となりますが:
離陸速度は220ノット(時速250マイル)
巡航速度は時速1,350マイル(音速の2倍以上)
最高時速が1,354マイル
戦闘機のほとんどは超音速飛行が可能であるが、民間旅客便でこの速さでの飛行は まさに「唯一」であった機体でありました。
1986年11月にブリティッシュ・エアウェイズのコンコルド機が世界一周飛行を行った際、 29時間59分で28,238マイルを飛行した記録が残っています。
コンコルドの特徴
機体の特徴の一つに「可動式の折れ曲がる機首」が挙げられます 。これは操縦士が離着陸時により広い視野を確保できるように開発されたものです。 (ちなみに試作機と量産機では、この折れ曲がる機首の設計が若干異なります)
他にも超音速飛行に向いた三角形を描くような「デルタ翼」(昭和な私などはこの翼を見る度に科学忍者隊ガッチャマンのマントをふと思い出すのですが)が使われたりと「超音速飛行」ならではの設計が使われていました。
エンジンの特徴
またコンコルドにはアフターバナー付きの強力なジェットエンジン『ロールス・ロイス オリンポス593 Mark610エンジン』4基が搭載されていました。
アフターバナーとは?
ジェットエンジンの「再加熱」技術を利用し、推力を増大させ、加速力を高める装置でイギリスのロールスロイスでは、「リヒート(Reheat=再燃焼装置)」と呼ばれています。
ちなみに、確か昨年であったか? コンコルドに使われていたエンジンの一つが な〜んと、e-bay で出品されてたとの記事を目にしたことがあります。
量産型14号機「G-BFKW」の第3エンジンとして使用されていたもので 出品価格は £565,000(一億円超え)でしたが、購入者がいたとか。。。 e-bayで出品というのにも驚きですが、 購入しちゃう人(会社かもだが)もいるのもまた驚きですね。
パワフルなエンジンを使った超音速での飛行では、 どうしても機体自体に大きな負荷がかかってしまいがち。 例えば超音速飛行中2時間後には空気抵抗による熱で機首の温度は摂氏127度まで上昇したそうです。温度の上昇もあって、コンコルドの窓は大人の手のひらサイズ(ハガキサイズ:試作機ではもう少し大きいが)の大きさになったんですね。
また、 超音速飛行のたびに熱による膨張のため、機体は約20センチ長くなり、 着陸までの低速飛行では元の長さに縮むなど 機体へ様々な負荷に対応する為の他にも色々な工夫が施されていました。
機内の仕様
通常7〜8時間の飛行時間のロンドンとニューヨークJFK空港を3時間30分程度の時間で結ぶことが出来、そして英国-米国間の航路で航空機が地球の自転速度を上回ったため、西へ向かうフライトでは、出発時刻よりも早い現地時刻に到着することができるというコンコルド。
短時間の飛行は非常に魅力的であったが、機内は決して広く快適とは言えなかったそうです。 私の周りで実際にこの機でヒースロー〜JFK空港便に搭乗した人たちの話を聞くと 皆が声を揃えて、「今のエコノミーくらいの広さだったけれど乗っている時間が短いのでさほど窮屈さは感じられなかったよ」との答えが返ってきます。
機内
ファーストクラスよりも上のクラスと言われ、
気になるチケット価格はというと、70年代〜90年代等、時代や日にちによっても異なるが、
1990年代の往復チケットは『ファーストクラス+20%』。現代のインフレ調整した値段で約£9400以上だった。決して気軽に予約できるフライトでなかったのであります。
(ちなみにBAでヒースローからJFK空港までファーストクラスで飛ぶ場合、お得な便で往復3300ポンド〜 繁忙期であると8000ポンドを超える可愛くないお値段になります)
「コンコルド」に乗る客人用の特別な空港ラウンジ他、機内でのサービス等、 乗機前から乗客たちには最高級のサービスが振る舞われたそうです。
機内は最大148人を収容できるように設計されてはいたそうですが、 定期便では通常100席を超えることなく、狭いながらも快適さをキープされていたとのこと。 コンコルドが抱えた問題 「超音速飛行」というスポットライトを浴びてデビューした飛行機であったが、コンコルドは商業的な視点から見ると最初から非常に多くの問題を抱えていました。 例えば:
• コンコルドに合わせた滑走路の必要性
• 騒音
• 航続距離が短いため、無給油での長距離飛行(アメリカから日本など)が不可能
• 高額な運賃、乗客の定員が少ないのため収益が上がらない
(B747:ジャンボジェット機と同量の灯油を使用しながら、乗客数はその4分の1であった)
• 莫大な製造/運行コスト
• 燃料コスト(時間あたりの燃料消費量に換算すると、ボーイング787-9型機の燃料消費量はコンコルドの4分の1である)
JALを始め世界各国の主要航空会社からオーダーは入ったものの、 オイルショックやソニックブームなどの燃料費高騰の影響を受け、「250機生産すれば採算が取れる」はずのコンコルドであったが、実際に製造されたのはたったの20機、内6機は試作機とテスト機で、実際に就航したのは14機という結果が見える巨額の損失。
こういった背景プラス、 2000年7月25日のエールフランス機(Model No.101、登録番号F-BTSC)の墜落事故が起きたことも終焉を迎えることになった始まりとも言われていますが、 27年目となる2003年に旅客機としての運行が終了となりました。
ブリティッシュ・エアウェイズのコンコルドは、2003年の最終飛行まで5万回弱のフライトを行い、250万人以上の乗客を超音速のスピードにて目的地に届けたという事です。
次回は「コンコルドを見たい体験したい〜Brooklands Museum編」です!