第49話 Spotted dick ~スポテッドディック~

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okashi


<Spotted dick スポテッドディック>

50代以降のイギリス人に「懐かしのプディングは?」と質問したら、必ず名前が挙がる「スポテッドディック」。バターの代わりにスエット(牛のケンネ脂)を使うスエット系プディングの代表選手です。家庭ではもちろん、スクールディナー(学校給食)にもよく登場していたので思い出の味なのでしょう。

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スエットは牛の腎臓の周りなどについている脂、融点が高く溶けづらいので刻んだり、おろし金でおろすのも容易、小麦粉と混ぜ合わせ、水を加えてまとめると、扱いやすいペストリーが出来上がります。これをパイ生地のように使って他の食材を包んで蒸したり、あるいはこれ自体を茹でたり、蒸し焼きにしたりして、お料理にデザートにと、安価でお腹にたまる食材としてイギリスでは長い間重宝してきました。メインのお肉を充分に買う余裕のない家庭はスエットを使ったプディングをまず食べてお腹を膨らませてから少量のお肉を食べていたとか。

ずっしりお腹にたまる、これぞ王道スエットプディング☆

ずっしりお腹にたまる、これぞ王道スエットプディング☆

スポテッドディックはこのスエット生地自体がメインとなるプディング。加えるのはカランツ(干しぶどう)と少量のお砂糖のみです。スエットペストリーを平らに伸ばしたら、お砂糖とカランツをぱらぱらと広げ、端から巻いて棒状に整えるだけ。あとはプディングクロスと呼ばれる布で包んでひたすら茹でれば完成。粉が水分を吸収したずっしり重~いプディングを想像されると思いますが、まさに期待を裏切らない胃にずっしりたまる重量感です(笑)。徐々に軽い食感が好まれるようになってからは、茹でずに蒸したり、オーブンで焼く事もふえていきましたが、いずれプレーンな生地だけのプディングですから、出来立てにたっぷりのカスタードをかけていただくとよりおいしくいただけます。

スエットペストリーとカランツだけというこの上ないシンプルさ☆

スエットペストリーとカランツだけというこの上ないシンプルさ☆

19世紀前半にはもう食べられていたというスポテッドディックですが、当時の名前はその形から「Plum bolster」(Plum=干しぶどう、bolster=長枕)あるいは「Plum duff」(duff=dough 生地)などと呼ばれていました。直にSpotted Dick と呼ばれるようになるのですが、Spottedの意味は「斑点のある」(カランツ入りのため)、Dickはおそらくpuddingが→ puddinkpuddick dick と変化したものでは~と言われています。白地に黒い斑点がある様子がダルメシアンの柄のようなところから「スポテッド・ドッグ」と呼ぶ地方もあります。ちなみにこのDick という単語が隠語でもあるため、「ちょっとお下品だから名前を変えましょうよ~」という動きが以前あり、「Spotted Richard」と改名されそうになった時代もありました(DickはRichard の愛称)。一時、Tesco(イギリスの大手スーパーマーケット)でも「スポテッドリチャード」の名で売られていましたが、どうやら定着しなかったようですね(笑)。

出来立てに、たっぷり温かいカスタードを添えて召し上がれ☆

お店によって形もさまざまですが、温かいカスタードたっぷり~が定番です☆

食べ物が豊富となり、重いものより軽いもの、ラードやスエットよりバター、できればカロリーが低くて見た目が洗練されているもの~というこの時代、スエット系プディングは風前の灯となっていたのですが、昨今の伝統食を見直そうという風潮と、ベイキングブームによるクラシカルなプディングのリバイバルが相まって、以前よりはスポテッドディックも大分見かけるようになってきました。形は棒状と限らず、茹でるよりは蒸すか焼くタイプが主流ですが、それでもこういった伝統のプディングがまた若い世代に受け継がれていくのはうれしいことです。名前なんか気にせず頑張れスポテッドディック☆

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About Author

yasuda mariko

宮城県仙台市出身☆ 2008~2012年イギリスにてイギリス文化&イギリス菓子を大吸収するかたわら、日本で主催していたお菓子教室をつづけていたところ、あぶそる~とロンドンの編集長に出会う。 現在の居は巡りめぐって宇都宮。イギリス菓子教室 'Galettes and Biscuits' にてイギリス菓子の美味しさ&魅力を静かに発信中☆ http://galettes.exblog.jp/

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