第86話 Macaroon / Ratafia Biscuits ~マカルーン/ ラタフィアビスケット~

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okashi


<Macaroon / Ratafia biscuits マカルーンとラタフィアビスケット>

日本同様、イギリスでもカラフルなパリのマカロンが流行ってしばし。ホテルのアフタヌーンティーからスーパーのお菓子売り場まで、カラフルなマカロンは小さいながらもわたしが主役とばかりに存在を大きくアピールしています。華やかさに弱冠欠けるイギリススイーツの中、確かにファッショナブルさでは群を抜く存在なので、人気があるのもわかります。その人気は昨今のベイキングブームにも乗り、次々に売り出されるマカロン手作り用便利(に見える)グッズ。腕に覚えのあるベイキング自慢たちは、あの少々トリッキーなマカロン作りをいかに攻略するかに粉骨砕身。まだまだこのブームは終息の兆しが見えません。macaroon 1

ところで、イギリスにはこのカラフルなマカロンとは別に、卵白とアーモンド、お砂糖だけで作る素朴なマカロンが昔から存在します。特徴は外側さっくり中ねっちりの食感と、上にのせられた皮剥きアーモンド。これがマカロン?と思われるかも知れませんが、これこそ、イタリア生まれ、フランス育ちのマカロンの原型に近いもの。こちらはフランス風にMacaron(マカロン)ではなく、「macaroon (マカルーン)」と綴ります。フランス各地で姿を変えながら作り続けられてきたマカロンを見てみると、大抵はどれもイギリスのマカルーンと同じ、卵白にアーモンドとお砂糖を加えてシンプルに焼き上げたもの。おなじみのクリームサンドの色つきマカロンが登場するのは、ようやく1900年代に入ってからのこと。有名なナンシーのマカロンも、サンテミリオンのマカロンも、どれもイギリスのマカルーンと似かよっていますし、こちらがもともとのマカロンの姿なのでしょう。

フランスの地方地方のマカロンたち☆

フランスの地方地方のマカロンたち☆

1747年出版のHannah Glasse 著「The art of cookery made plain and easy」 を見てみると、To make macaroons と題し、マカルーンの作り方がのっています。まずはアーモンドの湯剥きからスタート。薄皮をむいたアーモンドを乾かして粉にし、砂糖と卵白を混ぜ、wafer paper (でんぷんから作る食べられる紙)にスプーンでのせて、オーブンで焼きましょう~となっています。これはもうほぼ現代のイギリスのマカルーンの姿。Wafter paper またはrice paper とも呼ばれるこの食べられる薄いシート状のものは、現代のシリコン加工をされたつるつるのオーブンシートが登場する前、天板にくっ付きやすいマカロンなどをのせて焼き、その紙ごと食べられるようにと使われていたもの。今もたまに使うことはあるので、専門店などにいけば見つけることができます。今でこそ簡単に作られるマカルーンですが、当時はアーモンドを粉にしたり、固い塊で売られていたお砂糖を粉にしたりと、そこからスタートするので結構大変だったことでしょう。

マカロンは意外と昔から存在するのです☆

マカロンは意外と昔から存在するのです☆

このマカルーンの兄弟分に「Ratafia Biscuits(ラタフィアビスケット)」 と呼ばれるものがあります。イタリアの「アマレッティ」(アーモンドの香りの小さな焼き菓子)に似た姿で、こちらもイギリスでは18世紀にはすでに登場していたようです。マカルーンとの違いは、小さく一口サイズに作る点と、杏仁豆腐のような強いアーモンドの香り。この香りを出すために、ビターアーモンド、あるいは杏の仁を挽いたものを原料に加えて作ります。どちらも手に入りづらいので、今ではビターアーモンドエッセンスなどで代用することも多いのですが、いまだ現役のお菓子です。このラタフィアビスケット、食後のお茶に添えられていたり、トライフルなどのクリーム系デザートの材料としても使われることが多いのですが、昔はその名も「Ratafia(ラタフィア)」と呼ばれるお酒と共にいただくものでした。このラタフィアと呼ばれる飲み物は17~18世紀に人気のあったブランデーベースのリキュールで、アーモンドや桃、さくらんぼ、あるいはアプリコットの仁で香り付けされたもので、時にはコーディアル風にノンアルコールのものもあったとか。一番初期のラタフィアビスケットは、ビスケット自体にはアーモンド香はなく、このラタフィアと共にいただくので、その名が付いていたそうです。また、Ratafia という語はビターアーモンドの香り自体を指していたこともあり、ratafia essenceはビターアーモンドエッセンスのこと、「ratafia cream」と言えば、アプリコットの仁で香り付けしたデザートのことでした。ここでひとつMrs.Beetonの「Household Management」(1861)からRatafias のレシピをご紹介すると~材料は1/2パウンドのスイートアーモンド、1/4のビターアーモンド、3/4パウンドのお砂糖、卵白4つ分、これらを混ぜ合わせて(アーモンドは粉に挽いてから)、小さく紙に落として、オーブンで焼くこと10~12分。焼き上がりのサイズは大きめのボタンくらいが望ましい~とのこと。本物のビターアーモンドの香りの効いたラタフィアビスケット、食べてみたいですね。

アーモンド香るラタフィアビスケットは今も健在☆

アーモンド香るラタフィアビスケットは今も健在☆

スコットランドのトラディッショナルなトライフルにはこのラタフィアビスケットをスポンジ代わりに、あるいはスポンジと共に使うことがあるのですが、もうひとつどうしても最後にご紹介したい、スコットランドの不思議なマカロンがあります。その名も「Scottish macaroon(スコティッシュマカルーン)」。こちら、なんと材料はじゃが芋。マッシュドポテトに粉砂糖をどんどんどんどん大量に入れていき、粘土状になったところでバー状にカット、チョコレートコーティングしてココナッツをまぶす~と言う代物です。お砂糖が溶けてまとまりフォンダン状になったところにチョコレートというダブルパンチですから1本食べきるのは至難の業ですが、スコットランドのsweet toothたちにとってはあま~い懐かしの味。Lees社のものがオリジナルとして有名で、懐かしのパッケージのまま売られています。今はこちらにはポテトは入れられていないようですが、1931年から愛され続けているこのLees社のマカロン、怖いもの見たさでもかまいません、もしどこかで見かけたら是非チャレンジを☆

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About Author

yasuda mariko

宮城県仙台市出身☆ 2008~2012年イギリスにてイギリス文化&イギリス菓子を大吸収するかたわら、日本で主催していたお菓子教室をつづけていたところ、あぶそる~とロンドンの編集長に出会う。 現在の居は巡りめぐって宇都宮。イギリス菓子教室 'Galettes and Biscuits' にてイギリス菓子の美味しさ&魅力を静かに発信中☆ http://galettes.exblog.jp/

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