第16話 Mince pie ~ミンスパイ~

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イギリスおかし百科


<Mince pie ミンスパイ>

クリスマスシーズンに欠かせないお菓子「ミンスパイ」。12月のイギリスを訪れたら、目を閉じて歩いてもミンスパイにぶつかるくらいに街中溢れています。

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温かいスパイスの効いたマルドワインと共に、あるいは軽く温め、ブランデーバターやクリームを添えて紅茶のお供にと、1日中いつ食べても楽しめるミンスパイですが、この時期だけでなんと、毎年約370,000,000個も消費されるのだとか。さくさくとした軽い生地に、ブランデーがほのかに香るドライフルーツたっぷりのフィリング、軽くつまむのにちょうどよい小さめサイズも手伝って「おひとつどうぞ☆」と差し出されたら思わず笑顔で手がのびてしまうのはきっとみな同じなのでしょう(^^)。

瓶詰めのミンスミートを買ってきて作ってもよし、美味しい既製品を探すのもまた楽しい ♪

瓶詰めのミンスミートを買ってきて作ってもよし、美味しい既製品を探すのもまた楽しい ♪

さてこの「ミンスパイ」、勇み足のスーパーやデパートが10月には箱入りのミンスパイを棚に並べはじめますが、年に1度のことだしと、手作り派も少なくありません。「ミンスミート」と呼ばれるフィリングの配合が各家庭の、あるいはお店の自慢の味を決めるのですが、これは数種のレーズン類に柑橘系のピール、りんごにナッツにブランデーそしてナツメグやクローブ、シナモン、ミックススパイスなどのスパイス類を漬け込んだもの。そしてもうひとつ、トラディッショナルなミンスミートには欠かせないのが「スエット」と呼ばれるケンネ脂。このスエット(ケンネ脂)とは牛の腎臓周りの脂を刻んだもので、以前はこれがペストリーやプディングを作る際の油脂としてバターよりポピュラーでした。これが実は「ミンスパイ」という名前と密接に関係しています。

でもやっぱり手作り焼きたてが一番☆

でもやっぱり手作り焼きたてが一番☆

「ミンスパイ=ひき肉のパイ」という名前が示すとおり、16世紀頃には実際に羊やウサギ、雉などさまざまな肉をひき肉にし、スパイスやドライフルーツを加えてフィリングとしていたそう。現代のように塩味のもの=食事、甘いもの=デザートという区別が無かった当時にしてみれば、決して珍しい組み合わせではなく、保存という面からみても、ドライフルーツとスパイスは欠かせないものだったのでしょう。時代は流れ18世紀に入り植民地から安価に砂糖を手に入れることができるようになると、ミンスパイにも砂糖が加わりより甘味が増し、次第にフィリングから肉類が減っていきます。ヴィクトリア時代に入ってからは、肉入りミンスパイも存在はしていたものの、同時にひき肉の代わりにスエットのみを入れる現代のスタイルのものも料理書に見られるようになります。mincepie5

姿かたちを少しずつ変えながらも何世紀もの間イギリスで愛され続けているミンスパイ。クリスマスに関連するお菓子ですからやはり言い伝えのようなものも沢山あります。例えば~クリスマスから1月6日のエピファニーまでの期間、毎日1つずつ食べると来たる12ヶ月間幸せに暮らせるとか~その年最初のミンスパイを食べるときに願いことをしながら話さずに食べると願いが叶うとか~はたまたミンスミートを作る際は必ず時計回りに混ぜないと良くない事が起こるなどなど、、。古今東西にかかわらず宗教行事、年中行事に関わる食べ物に吉凶話しはつき物。節分に「年の数だけ豆を食べると風邪をひかないのよ」と言われ、せっせと食べていたことを思い出したりして(笑)

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粉メーカーのクリスマスシーズンの古い広告 ~ミンスパイのないクリスマスなんてある?~

大人も子供も大好きなミンスパイ。サンタさん(ファーザークリスマス)も大好物らしく、イギリスの子供たちはクリスマスイヴの夜、暖炉の前にお皿にのせたパイとブランデーを、そしてトナカイ用のミルクを置いてベッドに入ります。翌朝空になったお皿とグラス、そしてプレゼントを見つけ、想像を膨らませる子どもたち。そんな幼い頃の楽しい思い出も含めて、クリスマスのミンスパイはフェスティブシーズンの高揚感をより盛り上げてくれる、大切な存在なのです。

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About Author

yasuda mariko

宮城県仙台市出身☆ 2008~2012年イギリスにてイギリス文化&イギリス菓子を大吸収するかたわら、日本で主催していたお菓子教室をつづけていたところ、あぶそる~とロンドンの編集長に出会う。 現在の居は巡りめぐって宇都宮。イギリス菓子教室 'Galettes and Biscuits' にてイギリス菓子の美味しさ&魅力を静かに発信中☆ http://galettes.exblog.jp/

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