第101話 Devonshire splits / Cornish splits~デヴォンシャースプリッツ/コーニッシュスプリッツ~

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okashi


<Devonshire splits/Cornish splits デヴォンシャースプリッツ/ コーニッシュスプリッツ >

クロテッドクリームといえば?「スコーン」。ではスコーンといえば?「クロテッドクリーム」~それくらい切っても切れない関係のこのふたつ。~と言うか、スコーンにつける以外にクロテッドクリームっていつ食べるの?と思われている方も多いはず。
確かに日本ではスコーンと一緒以外には登場しないクロテッドクリームですが、イギリスのクロテッドクリームの産地、デボンシャーやコーンウォール地方ではりんごのケーキはじめさまざまなケーキやプディングに添えたり、アイスクリームやライスプディングを作ったり、ファッジにしたりと、ちょっとリッチな生クリーム的な感覚でいろいろなものに利用します。

クロテッドクリームはスコーンにだけでは勿体ない!

クロテッドクリームはスコーンにだけでは勿体ない!

中でもわたしが、もしかしたらスコーンと食べるより、こちらの方が美味しいのでは、くらいに思っているのが「デヴォンシャースプリッツ」。Bun(バン)やroll(ロール)と呼ばれる小型のイーストで膨らませるパンにクロテッドクリームとラズベリーかいちごジャムをサンドしたもの。
このパンは牛乳か生クリーム、バターと時にはラードが少し入ったふんわりしっとりした食感のもの。これにミルキーなクロテッドクリームとちょっと酸味のあるジャムの組み合わせはもう絶妙。スコーンよりずっと主張しないので、クロテッドクリームの優しい甘みを存分に堪能できるのです。
ほぼ同じものなのですが、それよりちょっぴりサイズが大きくなって、コーンウォールで食べられているのが「コーニッシュスプリッツ」と呼ばれます。

ふわふわなパンとミルキーなクロテッドクリームの組み合わせは絶品です☆

ふわふわなパンとミルキーなクロテッドクリームの組み合わせは絶品です☆

今でこそこのどちらの地域でもクロテッドクリームをつけるのはもっぱらスコーンと相場は決まっていますが、もともとコーンウォール地方ではクロテッドクリームのお供は、スコーンではなく、このバン(スプリッツ)のほうが主流でした。

このスプリッツという名前、パンを二つに Split(割って)してクリームをサンドするからというのもあるのでしょうが、第二次世界大戦以前、この辺りの地方では、バターやラードを使ってちょっとリッチに焼き上げた小型のバンやロールを「splits」あるいは「Chudleighs」と呼んでいたから、というのもあるそうです。このパンはオーブンから出すとすぐに、バターペーパー(バターを包んでいた紙)を表面にこすり付けて布で覆い、外側も柔らかな食感にするのが特徴なのだとか。
ちなみに、Chudleigh というのはデヴォンシャーにある小さなマーケットタウンの名で、何故この町の名で呼ばれるようになったのかは謎。実は他にもこの小型パンには「rounds」「tuffs」「farthings」「ha’penny buns」なんて色々な呼び名があるのだそうです。

名前はともかく、一度試して欲しいこのパンにクロテッドクリームとジャムの組み合わせ。パンを焼くのが大変なら、近所のパン屋さんでほんのり甘い、普通の小さなパンを買ってきてもらえばそれでもOK、パン自体は実にプレーンな白パンですから。それにしても目からウロコの美味しさ、まぁスコーンが今のようにメジャーになる前は皆こうして食べていたのですから、美味しくて当然かもしれませんが。生クリームバージョンもありますが、断然クロテッドクリームがおススメですよ。

「サンダー&ライトニング」クロテッドクリームにほろにがもいいアクセント☆

「サンダー&ライトニング」クロテッドクリームにほろにがもいいアクセント☆

なんでもデヴォンシャーにあるTavistock Abbey では11世紀に、クリームとジャムをバンに添えて提供していたという資料が見つかったとかで、常にコーンウォールとどちらがクリームティー(紅茶&スコーンにクロテッドクリームとジャムの組み合わせ)の本場かを争っているデヴォンは、我こそクリームティーの発祥の地と大喜び。お隣同士ですから仲良くすればいいのにね、というのが正直なところですが(笑)。

そうそう、デヴォンシャーあるいはコーニッシュスプリッツの別バージョンとして、ジャムの代わりに、ブラックトリークルやゴールデンシロップをかけるバージョンがあるのですが、こちらの名前は「Thunder and lightning(雷と稲妻)」というこれまた素敵なネーミング。そしてこれがまた実はとってもおススメなのです。ゴールデンシロップバージョンは少々お子様向けのテイストですが、ブラックトリークル(手に入らなければモラセスでも)だと、苦味の利いた大人の味(?)に。これまただまされたと思って是非一度お試しあれ~☆

 

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About Author

宮城県仙台市出身☆ 2008~2012年イギリスにてイギリス文化&イギリス菓子を大吸収するかたわら、日本で主催していたお菓子教室をつづけていたところ、あぶそる~とロンドンの編集長に出会う。 現在の居は巡りめぐって宇都宮。イギリス菓子教室 'Galettes and Biscuits' にてイギリス菓子の美味しさ&魅力を静かに発信中☆ 2018年2月 美味しいイギリス菓子をぎゅ~っと詰め込んだレシピ本「BRITISH HOME BAKING おうちでつくるイギリス菓子」、2018年 12月 「イギリスお菓子百科」。2020年12月「ジンジャーブレッド 英国伝統のレシピとヒストリー」、2021年9月「British Savoury Baking 古くて新しいイギリスのセイボリーベイキング」 を出版。インスタグラム@galettes_and_biscuits

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4件のコメント

  1. やすだ様
    お返事をありがとうございます!!‼︎‼︎
    胃腸弱氏のため妄想ティータイムなのです…。
    これからも大好きなこのコラムをマニアックが尽きるまで応援しております‼︎

    江國様
    電子書籍化が画策中なのですね(๑˃̵ᴗ˂̵)嬉しいです‼︎楽しみに待っております☆
    楽しみに待っております☆

  2. アバター画像

    横から失礼しま〜す♪ 編集長の江國です。マリーさま☆電子書籍化をしたいと編集部では画策中です。
    いつか必ず形にしたいと思いますので、ちょっとお待ちくださいね ^^
    今後もぜひご愛読、よろしくお願いいたします!

  3. マリーさん☆こんにちは。
    なんて嬉しいコメントでしょう~だんだんマニアックなお菓子も増えてきてしまって、付き合いきれないわ~なんて思われているんじゃないかと危ぶんでいたところだったので(笑)
    書籍化の予定は今のところまだありませんが、まだまだ書きたいお菓子が山積みなので、妄想ティータイム、これからも当分楽しんでいただけると思います(^^)よろしくお付き合いくださいませ♪

  4. 初めまして。こちらのコラムがとっても大好きで普段コメントなどはしないのですが、思わずコメントさせていただきました。妄想ティータイムを毎回楽しませてもらっています!
    質問なのですが、このコラムは書籍化などはされませんか?写真も美しく、レシピも添えてあればとってもとってもワクワクする本が出来上がりそう(素人考えですみません)でたまりません!!

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