< パブロヴァ>
パブロヴァとは低温で焼いたメレンゲの上に、泡立てた生クリームとベリーなどのフルーツを
のせたデザート。表面はさっくり中やわらか、というのがイギリス人の好みの焼き加減。イギリスではベリーの豊富な夏に特に人気のデザートです。
このメレンゲは卵白にたっぷりのお砂糖を加えてしっかり泡立て、そこに少量のビネガーとコーンスターチ、そして香り付けにバニラなどを加えて焼くのが一般的。スプーンで天板にラフに広げて大きく焼いてもよし、きれいに絞り出してもOK。小さな円形に絞り出したものは、その小鳥の巣のような形から「メレンゲネスト」と呼ばれていて、箱入りになったものがスーパーの製菓コーナーには必ずおいてあります。田舎の食料品店に行くと、直系30~40cmくらいはありそうな巨大なお皿状に焼かれたメレンゲが、ビニール袋に入れられて、天井からぶら下げられて売られているとも。
市販品に関してはしっかり中まで乾燥焼きされているので、中ふんわりの食感は得られませんが、
ホイップクリームとフルーツさえのせれば、相当華やかなデザートがあっという間にできてしまうのでとってもお役立ちです。
このパブロヴァ、あまりにポピュラーなのでもちろんイギリス発祥かと思いきや、実は生まれはニュージーランドかオーストラリア。ここがとっても微妙なところで、お互い自分が本家と譲らず、長年の論争の種となっています。
このパブロヴァという変わった響きの名前はロシアの伝説的バレリーナ Anna Pavlova(1881-1931)に由来したもの。確かに言われてみれば純白のメレンゲはまるでバレーのチュチュのようです。1920年代に催された彼女のオーストラリアとニュージーランド公演を記念して考案されたというのですが、決定的な文書が見つからないので、白黒つけがたく、、、という状況が続いていた訳です。
ところが、この長い論争に久しぶりに一石投じたのが、最も権威ある英語辞典OED(Oxford English Dictionary)の改訂版による記載。
<Pavlova>
「もともとは、、、色付けしたゼリーを何層にも重ねて固めた、パレリーナのチュチュに似せたデザート。後に、、、中が柔らかいメレンゲにホイップクリームとフルーツを詰めたデザートに。」
1927年にニュージーランドで発行されたDavis Dainty Dishというゼラチンメーカーによる料理書に載っているゼリータイプのデザートがパブロヴァの元祖であると結論付けたのでした。
とは言え、それは現在のパブロヴァとは違うもの。「パブロヴァ」という名前のお菓子が最初に登場したのはニュージーランドだという意味。肝心のメレンゲタイプのパブロヴァのオリジンについては、orig. Austral. and New Zealand. とお茶を濁しています。結局オーストラリアのEsplanade Hotel のBert Sachse氏によるレシピが元祖なのか、はたまたニュージーランドなのか、はっきりしないまま。
ですが、イギリスではそんな論争はどこ吹く風、さも「伝統的なイギリス菓子ですよ」という風情で、夏の人気デザートの座に君臨しているパブロヴァなのでした☆
2件のコメント
なおみさん☆
ライブラリーへお仲間入りさせていただきありがとうございます^^
まだ日本で食べるカリカリメレンゲしか知らなかった頃、イギリスで初めて出会った中がふんわりソフトなメレンゲ、
メレンゲってこんなに美味しいんだ!感動しました。
メレンゲやマジパン、ほんとうは美味しいのに、日本で食べるものはどうも甘いばかりで味がないから、
嫌いになってしまう人が多くてほんとうに残念だなって思います。
日本とはまた全然違う魅力のあるイギリスお菓子について、
お時間ある時にでも読んでいただけたら、嬉しいです♪
ネットでも最近買ったパブロヴァのレシピ本でも中までカリカリのものばかり。
わたしの昔々どこかで読んだ本のパブロヴァは中はムッチリソフトなもの。
中までカリカリなんてつまらない!と、ネット検索していてこちらの記事にたどり着きました。
とても面白く読ませていただきました。
いつかは行きたいイギリス。
他の記事も楽しみに読ませていただこうと思います。
安田様の本も、欲しいものリストからついにライブラリーに移動させました。
素敵なところにたどり着いて幸せです。
ありがとうございます。