<Teacake ティーケーキ>
「ティーケーキ」と聞いてまずはどんなケーキを想像しますか?
イギリスお菓子は名前から姿や味が想像しにくいものが結構あります。
「クイーン・オブ・プディング(プディングの女王)」などまったくイメージが頭に浮かばないものはさておき、厄介なのは普通想像するものとまったく違うものの場合。ティールームでメニューを見てオーダーしたら「これって私が頼んだもの??」なんてことになりかねませんから。
そんな騙されやすい(?)お菓子のひとつが「teacake (ティーケーキ)」。日本人ならまず最初に頭に浮かぶのは恐らく「紅茶味のケーキ」。でもイギリスのティールームのメニューに「teacake」の文字を見つけてオーダーしたらきっとこんなものが登場します ↓
お皿に載せられてくるのは水平にカットしてこんがりトーストされた丸く平たいレーズンパン。
紅茶が入っているわけでもなければケーキでもない。でもこれがイギリスの「ティーケーキ」。
かりっと焼いた断面にた~っぷりのバターを塗っていただくのがお約束です。このパン生地自体はほとんど甘くないので、慣れないうちはどうもおやつというより「朝ごはん?」みたいな気がしてしまうのですが、バター付きパンは1840年代のアフタヌーンティースタート当初からの大定番メニューと考えれば、ある意味もっとも正統派のお茶のお供といえるかも?
そして紛らわしい名前の代表として「ティーケーキ」を挙げたのにはまだ理由が、、、
「teacake」のもうひとつの姿がこれ↓
お茶の場をティールームから誰かのおうちに移します。そこで 「ねぇ、ティーケーキがあるけれど、食べる?」 と言われたら、それは恐らく前述のレーズンパンではなく直径5cmくらいのドーム状のお菓子。ビスケット生地の上にふわふわのマシュマロそしてチョコレートコーティングという、ちょっと日本のエンゼルパイを髣髴とさせる組み合わせ。スーパーのオウンブランドをはじめ、いくつかのメーカーから発売されていますが、イギリス人なら10人中9人くらいの人が頭に浮かべるのがタンノック社のteacake。黄色と赤のノスタルジックなパッケージが実にアイコニッック。1890年の創業以来、スコットランドのAddingston からどこか懐かしいレトロな雰囲気の甘~いお菓子を届けてくれています。
そしてそしてなんとまだあります。イギリスで 「teacake」 と呼ばれるものが。。。
ご近所さんにお茶に誘われて 「ティーケーキ焼いたんだけど一切れいかが?」
こう言われたら、それは干しぶどうなどのドライフルーツが入ったローフ型のケーキかもしれないのです。紅茶につけたドライフルーツを使うこともありますが、例え紅茶を使っていなくとも、ティーケーキと呼ばれることもあり、、う~ん、紛らわしい~。
でもどれもそれぞれに美味しい紅茶のお供ですから「ティーケーキいかが?」 と言われたら、とりあえず 「はい、いただきます☆」 と笑顔で答えることにしましょうか(笑)
2件のコメント
スミレ子さん こんにちは☆
「At Bertram’s Hotel」 ですよね。アガサクリスティーの描くお茶のシーンはいつも美味しそうで、食いしん坊のわたしはワクワクしてしまいます(笑)
Selina婦人はきっとイングリッシュマフィンを想像してお願いしたのに、出てきたのがケーキ風のいわゆるアメリカのマフィンだったので、「なによこれ」って思ってしまったのでしょう。
もしかしたらアガサクリスティー自身が実際にそんな経験をしていたのかもしれませんよね。
伝統を重んじる古式ゆかしいホテル、そしてそこを好む客の会話にふさわしい話題ですよね、さすがです☆
ミセス・マープルのドラマに、こんなシーンがありました。
お茶の席で、アメリカ帰りのご婦人がマフィンを見て「アメリカの食事はひどかったわ。朝食にマフィンを頼んだら、出て来たのは単なるレーズンケーキ(tea cake with raisin)」とグチる。
ミセス・マープルは「まあ、なんて事!(oh, terrible)」と応対。
そこへ執事が「シードケーキはいかがですか?」と勧めにくるので、ミセス・マープルは「本物のシードケーキかしら?」と問う。執事は「それはもう、昔から伝わるレシピ通りに作った本物のシードケーキでございます」と返す…。
日本人だと、マフィンでもレーズン入りティーケーキでも、この際葡萄パンでも、美味しければいいじゃん!と思う人の方が多そうな気がしますが(笑)、イギリスの方にとっては昔からのレシピ通り作った物が本物の味なんでしょうか。
文化や意識の違いを感じるシーンでした。