<Banoffee (Banoffi ) pie バノフィーパイ>
「バノフィーパイ」 この名前を聞いてぱっとイメージが浮かぶ人は相当のイギリス菓子好き。「バノフィー?一体何のパイ?」…と思うのがきっと普通の反応のはず。でも、ひょっとすると筋金入りのなぞなぞor クイズファンならこのBanoffeeのつづりから予想できるかも?、、、答えは「バナナとトフィーのパイ」でバノフィーパイ☆ 要はこのパイを発案したお店の造語なわけですが、今や辞書に載るほど市民権を得た、つまりそれだけイギリスではメジャーなパイなのです。
ショートクラストペストリーと呼ばれる、甘いパイにも、キッシュのようなセイボリー系にも使われる最もプレーンで応用範囲の広い生地がベース。そこにトフィー、バナナ、生クリームという構造。子供から大人までみな大好きなのも納得の王道を行くコンビネーションですが、その分どこにでもありそうと言えばありそう~でも実はこのトフィー部分にちょっとした秘密があるのです。
このバノフィーパイの生まれ故郷はイーストサセックスの Jevingtonという静かな村。17世紀からそこにあるなんとも趣きある建物が生家「The Hungry Monk Restaurant」(ハングリーモンクレストラン)です。
1972年にここのメニューにあがって以来、そのあまりの美味しさに遠方から食べに来る人もあとを絶たず、瞬く間に「バノフィーパイ」の名がイギリス中に広がりました。しかもここのオーナー、心が広いことにレシピも隠さずHPやレシピ本で公開。この、まがい物でなくオリジナルの味を大切にして欲しいという考え方もバノフィーの普及に貢献していることは間違いありません。おかげで日本でも美味しいバノフィーパイを作ることができるわけですが、残念なことに、44年続いたこのハングリーモンクレストランも時代の流れか、2年ほど前に閉店。今はホリデーコテージとなっています。バノフィーパイのビッグファンなら1度滞在してみるのも楽しそうですね。
そうそう、先ほど言いかけていたトフィーの秘密ですが~
通常、生クリームやお砂糖、バターなどを火にかけ煮詰めて作るトフィーですが、ここハングリーモンクのレシピでは材料は缶のコンデンスミルクのみ。そう、あのイチゴやカキ氷にかけるあれです。ただ、今どきのチューブ入りではなく、缶というところがポイント。というのも、なんとこのコンデンスミルクを缶ごとコトコト3時間茹でるから。すると~
あら不思議、白いはずのミルクが缶の中でキャラメル色の美味しそうなトフィーに変身しているではないですか☆コンデンスミルクですから原料はお砂糖とミルクのみ。このなんともミルキーでやさしい味のトフィーがバナナとベストマッチ。そしてオリジナルでは、生クリームに隠し味程度のコーヒーを入れ、仕上げにはさらに挽いたコーヒー豆をパラリ。これが程よく全体を引き締め大人味に。一見ボリュームありそうに見えながら、案外軽く食べられてしまうのです☆
ただし、昨今では、コーヒーの代わりに、削ったチョコレートをちらし、ベースには砕いたダイジェスティブビスケットと溶かしたバターで作るお手軽バージョンが人気。コンデンスミルクもすでにバノフィー用にキャラメル化したものがスーパーには並んでおり、パッケージの裏面にはクイックバノフィーパイのレシピがのっています。ビスケットで作る土台とこのトフィー缶を使えばオーブンなしでバノフィーを作れるわけですから、なんてお手軽☆ これを書きながら、今もコンデンスミルクをゴトゴト茹でている私としては日本でも是非この茹で済みコンデンスミルクを売り出して欲しいなぁなんて、、。
ただ、ハングリーモンクで食べたオリジナルが本当に美味しかったので、ベースはショートクラストペストリー、仕上げにはチョコレートではなくコーヒーというのは譲れないところ。バノフィーパイには二つの綴りがあるのですが、個人的にはビスケットベース+チョコレートの今どきバノフィーは「Banoffee pie」、ショートクラストペストリーベース+コーヒーのオリジナルバージョンは「Banoffi pie」のイメージ。ハングリーモンクでは「Banoffi」の綴りを使っているので。
トラディッショナルなお菓子が多いイギリスで、若干40数年にして確固たる地位を築いたバノフィーパイ、今後もその座は揺るぎそうもありません。