Roganic ローガニック(閉業)
サイモン・ローガンさんの、Roganicが帰ってきました。ローガニックは2011年から2年間限定でロンドンにあったのですが、ポップアップ・レストランのまま、多くのロンドナーたちに惜しまれつつ去っていきました・・・。素材の持ち味を生かした繊細な味わいと、 絵画のように美しいプレゼンテーションは日本人の間で特に人気が高く、私もお得なランチに何度か通いました。そのローガニックが今年になって前回と同じマリルボーンの一画に帰ってきたと聞いて、さっそく行ってきました^^
サイモンさんの出発点は、湖水地方です。現在、ミシュラン2つ星を維持しているL’Enclume ランクリムを2002年にカートメル村にオープンしたのが彼の冒険の始まり。この土地でサイモンさんは自家菜園を展開していて、現在オーナーを務める複数のレストランでは、この農場で採れた新鮮なオーガニック農産物を使うことが基本となっているため、素材の良さが際立っているんでしょうね。
ローガニックではアラカルト・メニューを用意しておらず、85ポンドのテイスティング・メニュー、65ポンドのショート・テイスティング・メニュー、35ポンドのセット・ビジネス・ランチから選ぶことになります。この日はオープン記念のようなもので35ポンドのセット・ランチにスパークリング・ワイン1杯が付くという、とてもお得なコースでいただきました^^
まず登場したのはエルダーフラワーを使った食前酒のようなもの。訪れたのがもう数ヶ月も前のことで・・・ 記憶があやふやなのですが、とてもリフレッシングなお味だったことは覚えています。突き出しには洋ナシとのコンビを味わう爽やかクリーム。そしてコースの一貫のようにキリっと独立した面持ちでサーブされた自家製パンの美味しかったこと。しっとりとした歯ざわりとほのかな甘さはあくまでナチュラルで、まるでブラン・マフィンのような佇まいだけどもちろんそこまで甘くはなく。
自家栽培野菜のプレートも花形の一つ。野菜のあらゆる食感、そして自然の甘みを楽しみながら軽いクリームソースを絡めていただきます。メインはコーニッシュ・ダック。こちらは乾燥熟成させたお肉ならではの凝縮風味を楽しみます。焼き加減も完璧。付け合わせはキャベツとクリーミーマッシュ・・・と思ったら、両方とも下にプルドポークや濃厚ミートソースが隠れていて嬉しい驚き! こういった全てのエレメントを順繰りに口に運んでいく作業は、ここローガニックではことのほか愉快で、自然に顔の筋肉が緩んでしまうのでした。
デザートも驚きがありました。メニューには「ストロベリー、バターミルク、ヨーグルト」としか書かれていないのですが、実際は外側をパリッと焼いた四角いブリオッシュ付き。最後の最後まで嬉しいサプライズがありました^^
Roganicのヴァージョン2を立ち上げる前、サイモンさんはクラリッジズ内にあるFeraで3年に渡って指揮をとっていました。オリジナルのRoganicファンもたくさんそこを訪れたけれど、Roganicファンは、決して超高級ホテル内ダイニング体験をしたい人ばかりじゃないんですよね。そこを鋭く感じ取ったサイモンさんは、「自分のお客さん」のために、Roganicを再度立ち上げることにしたそうです。
小さなレストランです。インテリアは正直言ってさほど好みではないのですが^^; でも座ってみると十分に居心地は良い。そして、お味もさることながら、サービスが一流です。一流のサービスというのは、お客さんに居心地悪い思いをさせることなく、さりげなく過不足のない気配りを行き届かせること。もちろんサーブする側の温かい人柄が伝わってくると、なお素敵です。ここで、そんな体験をすることができました。
私たちがいただいたお料理は、サイモン・ローガンさんの料理の技術や本質のほんの触りしかわからないかもしれないお試しコースです。実際、彼のその他のレストランでは、こんなお値段で彼の料理はいただけません。だからと言って、35ポンドのコースがサイモンさんの料理でないかというと、そうではなくて、やっぱりそのエッセンスは十分に感じることができると思います。そしてそして、いつか特別な機会に、テイスティング・メニューを試せるといいなと思います^^