第84話 Ketish pudding pie ~ケンティッシュプディングパイ~

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<Kentish pudding pie ケンティッシュプディングパイ >

「イギリスおかし百科」も気づくともう84話目。登場したお菓子も悠に100は越えているかと思いますが、その中で△△プディング、△△パイというお菓子は相当数登場しているものの、その両方が付いた「△△プディングパイ」というものはなかったはず。「なになに、プディングなの?パイなの?はっきりしてよ。」と思わず言いたくなるこの名前。今でこそめったにお目にかかりませんが、ヴィクトリア時代にはわりと各地に存在していたお菓子。単に「プディングパイ」と言うこともありますが、特にイギリス南東部、Kent(ケント州)のものが今でも有名で「ケンティッシュプディングパイ」と呼ばれ古い郷土菓子として親しまれています。このプディングパイ、レント(イースター前の節食期間)の間によく食べられていたということもあり、「Kent lent pie」と呼ばれることも。またケントの中でも、海沿いの町Folkstone が発祥という説もあり「Folkstone pudding pie」という別名も持っています。

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さてこの紛らしい名前を持った「プディングパイ」、一体どんなお菓子なのかと言いますと、よく、カスタードタルトとチーズケーキの中間と表現されます。フィリングのメイン材料は牛乳と卵とお砂糖にバターそして ground rice (米粉)。米粉さえ入らなければカスタードに近いのですが、この米粉が入るがゆえに、固さがでて、チーズは使わないものの、まるでチーズケーキのような食感になるのです。チーズケーキといってもニューヨークチーズケーキのような食感ではなく、ヨークシャーカードタルトのようなチーズケーキのそれですが。カランツも入るので、見た目もヨークシャーカードタルトにそっくりですね。このフィリングをパフペストリー(パイ生地)またはショートクラストペストリーで作ったケースに入れて焼くので、外側がパイ、フィリングがプディングのようということで、「プディングパイ」なんていう名になったのだとか。

米粉+牛乳+卵=なぜかチーズケーキ風に ??

米粉+牛乳+卵=なぜかチーズケーキ風に ??

作り方はいろいろありますが、基本は、牛乳と米粉を煮てペースト状にしたものに、バターやお砂糖、卵など他の材料を混ぜていくもの。これをパイ生地に詰めてカランツをちらして焼けば出来上がりです。有名なBeeton婦人の家政書(1861)にも「Folksotne pudding pie」として載っていますが、こちらは1pint(568ml)の牛乳に対して、3oz(約84g)の米粉とバター、1/4lb(約112g)のお砂糖、卵が6個。これをパイ生地を敷いた小型のタルト型12個に流し、カランツをちらして焼くこと、となっています。が、通常この分量なら卵は1~2個で充分なはずで、ちょっと卵入りすぎじゃない~?なんて声もあるレシピではあります(笑)。そうそう、このプディングパイの大事な要素を忘れていました。牛乳はベイリーフ(月桂樹)あるいは、レモンの皮で香り付けをしておくのがポイントです。pudding pie3

実はこのケントのものの他にもうひとつ有名なプディングパイがあります、それはOxfordshire はDeddington という古いマーケットタウンの「Deddington pudding pie」というもの。この町で毎年11月に開かれていたMartinmas( St.Martin’s day)のフェア(お祭り)で売られていたため、このお祭りの別名は pudding-pie Fare 。美味しそうな響きのいい名前のフェアですが、このフェアは主に召使や従者などの雇用契約、家畜の売買などがメインだったため、1930年代には行われなくなってしまいました。同時にプディングパイも残念なことに消えてしまったのですが、残っている資料によると~こちらは他のカードタルトのようなプディングパイとは姿が異なり、フィリングはプラムプディング(ドライフルーツたっぷりのいわゆるクリスマスプディングのようなもの)で、外側がかなり固いしっかりしたペストリー生地、サイズは大小さまざまなタイプが売られていたそう。ケンティッシュプディングパイとは姿こそ違うものの外側がパイ、プラムプディングがフィリングとして入っていると言うことで、やはり「プディングパイ」と言う訳ですね。
プディングであり、パイである「プディングパイ」。この一筋縄ではいかないところが、また魅力のイギリススイーツ。知れば知るほどもっと知りたくなるイギリス菓子の世界、次はどんなお菓子が登場するのか次回もお楽しみに ♪

 

 

 

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About Author

yasuda mariko

宮城県仙台市出身☆ 2008~2012年イギリスにてイギリス文化&イギリス菓子を大吸収するかたわら、日本で主催していたお菓子教室をつづけていたところ、あぶそる~とロンドンの編集長に出会う。 現在の居は巡りめぐって宇都宮。イギリス菓子教室 'Galettes and Biscuits' にてイギリス菓子の美味しさ&魅力を静かに発信中☆ http://galettes.exblog.jp/

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