第107話 Coventry god cake/ God’s kitchel/ Turnover~コベントリーゴッドケーキ/ゴッドキッチェル/ターンオーバー~

0

okashi


<Coventry god cake / God’s kitchel / Turnover~コベントリーゴッドケーキ/ゴッドキッチェル/ターンオーバー~>

ベイカリーやファストフードのコーナーでよく見かけるおなじみの三角パイ。四角にカットしたパフペストリー(パイ生地)を対角線でパタンとターンオーバーして(折り返して)作るので、その名もTurnover(ターンオーバー)あるいはフィリングがジャムならJam puffs (ジャムパフ)なんて呼ばれ親しまれています(たまに丸から半円形に折り返すパターンもあり)。イギリスではアップルターンオーバーが人気ですが、パイ生地の存在するところなら、フィリングは違えど世界各国いたるところに同じようなものがあるとは思いますが、今日はイギリスの元祖ターンオーバーとも呼べそうな「Coventry god cake(コベントリーゴッドケーキ)」をご紹介。

アップルターンオーバーはイギリスでよく見かける人気のおやつ☆

アップルターンオーバーはイギリスでよく見かける人気のおやつ☆

イングランド中部、Warwickshireにある大きな街Coventry。現在は戦後の近代風の町並みがメインですが、古くはローマ時代まで遡れる歴史ある街で、中心部には馬にまたがる有名なLady Godivaの像がシンボリックに据えられていいます。20世紀にはいってからは自動車産業で名を馳せたコベントリーだけに、観光のもうひとつの目玉としては、立派な交通博物館があります。そこのカフェでも買うことができるのが、キラキラお砂糖のまぶされた三角形のパイ、コベントリーゴッドケーキ。さくさくのパイ生地の中身はミンスミート(ドライフルーツにスパイスやお酒を加えて漬けたもの)。街の名を冠したパイなのだから、さぞや街の名物なのではないかと思いきや、110年営業を続けていた老舗ベイカリーPails and Son が2008年にクローズしてからはこのパイは街からすっかり姿を消していました。それから数年後、この眠っていたゴッドケーキを救い出したのが、Leigh Waiteさん。街のガイドをしていた彼女がたまたま古いレシピを譲り受けたことからはまっていったコベントリーゴッドケーキとは一体どんな物語を持っているのでしょう。

パフペストリーにミルクを塗りお砂糖をまぶして焼き上げます☆

パフペストリーにミルクを塗りお砂糖をまぶして焼き上げます☆

まずはこのケーキの形である三角形、そして表面に入れる3本のスリット、これはキリスト教の三位一体を表しているのだそう。そしてこれは毎日おやつに食べるという類のものではなく、新年あるいはイースターにGodparentsからGodchildにプレゼントするお祝いのお菓子でした(ゴッドペアレンツとは簡単に言うと、両親とは別に定められる宗教面、精神面、金銭面などでも後ろ盾となってくれる大切な人物のこと)。そのため19世紀頃のコベントリーの街中では、シーズンになるとお店だけでなく、路上でも呼び声高らかにゴッドケーキが売られていたそう。ゴッドペアレンツの懐具合でサイズも色々、小さいものは半ペニーから、大きなものになると1ポンドもしたとか。当時の1ポンドは例えばお店の店員さんの仕事なら、1週間分のお給料にも相当したというから、一体どんな立派なゴッドケーキだったのやら。今の時代で言うならイースターにハロッズの大きくてゴージャスなチョコエッグをもらえる子もいれば、はたまたキャドバリーのミニチョコエッグをもらう子もいる、みたいな感じでしょうか。

さくさくパイの中にはスパイスとお酒の効いたミンスミート☆

さくさくパイの中にはスパイスとお酒の効いたミンスミート☆

パイとミンスミートの組み合わせというと、思い出すのがエクルズケーキやコベントリーの南にあるBanburyのバンブリーケーキ。でもこれらの形は丸や楕円。同じ三角形をしているのはSufforkやEssex地方の「God’s Kitchel(ゴッドキッチェル)」というお菓子。こちらはゴッドケーキと起源が一緒と言われているだけあり、姿だけではなく、ゴッドペアレンツからゴッドチャイルドへの贈るためのお菓子というところも一緒。その歴史もやはり古く、場所がら、14世紀のチョーサーのカンタベリー物語、Summoners Tale にも登場しています。
Give us a bushell whete, malte, or rice, A God’s kichel, or a trippe of cheese,”
イギリス南東部のサフォークやエセックス、特にHarwichやAldeburgh の町がこの「キッチェル」で知られていますが、この辺りではKitchelは別名「Catch Alls」としても知られています。と言うのも、Harwich の町では毎年新町長が決まるとセレモニーの後、ギルドホールのバルコニー(窓)から広場にいる子供たちに向かって「Catch a kitchel, if you can!」というかけ声に続いて、キッチェルをばら撒くという風習があるから。新町長の顔見せと共に、神のご加護、幸運が町中にありますようにという意味があるようですが、どこか節分にも似て楽しい風習ですね。ただし、この場合投げられているのはキッチェルといっても、spiced bun(スパイスやドライフルーツ入りのパン)のこともあるよう。そして裸のままぽんぽん外に投げられていた昔と違い、衛生面も気遣う当世らしく、ちゃんとひとつひとつビニール入りな上、ギルドホール前に行けない子供たちにも平等にいきわたるよう、各学校にもキッチェルが配られるのだそうです。子供の頃の楽しい思い出は忘れないもの。特に甘いものが絡むとなったらなおのこと。「僕の育った街にはこんなお菓子が、こんな風習があるんだよ」なんて言える名物お菓子があるのはとってもうらやましい話です☆

 

 

 

 

Share.

About Author

yasuda mariko

宮城県仙台市出身☆ 2008~2012年イギリスにてイギリス文化&イギリス菓子を大吸収するかたわら、日本で主催していたお菓子教室をつづけていたところ、あぶそる~とロンドンの編集長に出会う。 現在の居は巡りめぐって宇都宮。イギリス菓子教室 'Galettes and Biscuits' にてイギリス菓子の美味しさ&魅力を静かに発信中☆ http://galettes.exblog.jp/

コメントを残す