<Grantham gingerbread グランサムジンジャーブレッド >
前回はイギリスの代表的なジンジャーブレッド、2タイプをご紹介しましたが、ジンジャーブレッドlove なわたくしとしましては、まだまだご紹介したりない~ということで、今日もまた他にも沢山ある地方の美味しいジンジャーブレッドのお話しと相成ります。
まずはLincolnshire はGrantham という町の名物「Grantham gingerbread(グランサムジンジャーブレッド)」から。
Grantham と言えば、かのマーガレットサッチャー女史の生まれ故郷であり、アイザックニュートンが King’s Schoolに通ったことで有名な町。もしかしたら、そのサッチャーさんも食べていたかもしれないのが本日登場の「グランサムジンジャーブレッド」です。その齢はおよそ250歳、ぎりぎりニュートンさんは食べることはできませんでしたが、相当古株のジンジャーブレッドであることは間違いありません。その歴史を遡ると~ Grantham からそう遠くないNewarkに Mr. John Eggleston が営む人気のベイカリーがありました。そして彼の長男Williamが兵役から戻りGranthamに、新たなベイカリーを構えたのが1740年。当時Granthamはロンドンからエジンバラへと通じるGreat North Roadの要所。馬車が主要な移動手段だったこの頃は、ここにあるThe George Hotelで馬を代えていたのですが、乗客たちはそこで「Grantham Whetstones」と呼ばれる平たい固焼きのビスケットを買うのが常でした。そんなある日ウイリアムがこのビスケットを作る際、材料をひとつ入れ間違ってしまいます。その日オーブンから出てきたそれは~いつもの固い平たいビスケットと違い、軽く持ち上がり、中は空洞でキャラメルのような風味のするとても美味しいものでした。このビスケットはそのあまりの美味しさに瞬く間に評判となり、旅人たちの間で「グランサムジンジャーブレッド」として知られるようになったのだとか。この間違いから生まれた~というのはお菓子の誕生物語としてはよくある話でどうもあまり定かではないようですが、ウイリアム氏が生みの親というのは間違いないよう。その後もこのジンジャーブレッドは代々 Egglestonファミリーの営むベイカリーで焼き続けられます。
低温でじっくり焼かれるそれはトリークルの入ることの多い他のジンジャーブレッドとはまったく異なり、色白なのが特徴。そのため「Grantham white gingerbread」と呼ばれることも。たっぷり入るお砂糖のせいか、どこかカルメ焼きにも似た味わいで、実際とても軽く美味しいもの。1970年ごろまではGrantham内のベイカリーではどこもうちこそがオリジナルレシピとうたい、店頭に並んでいました。しかしいつしかスーパーマーケットの台頭にともない町の小さな商店たちは姿を消し、グランサムジンジャーブレッドを焼く店もなくなっていました。町の名物のジンジャーブレッドが消えて30年以上、、、しかし、捨てる神あれば拾う神あり。今から5年ほど前、こんな美味しいジンジャーブレッドを見捨てておくのは勿体ないと Alastair Hawken さんにより、Granthamの町でついにリバイバルを遂げました。今ではおしゃれなパッケージに入ったグランサムジンジャーブレッドを店頭でみつけることができるように~。
イギリスではその土地の名前を冠したケーキやビスケットがとても多くあります。お菓子だけではなく、チーズにしても、チェダー然り、スティルトンだって、ウエンズリーデイルだって全部町の名前。なんてひねりのない名前が多いのだろうと以前は思っていました。が、考えてみれば自分たちの町の名前をつけると言うことは、それに誇りを持ち、それが地元のみなに広く愛されていると言うこと。そしてそれが有名になれば自分たちの村や町の名も同時にイギリス中に広がっていくのですから、うれしい限り。今頃になって、町の名の付いたお菓子が沢山あるイギリスって素敵だな、と思ってしまいます。お菓子だけを辿ってイギリス一週の旅、してみたいいものですね(^^)